憲法が輝く兵庫県政をつくる会(憲法県政の会)は九月十八日、昨年の兵庫県知事選挙で初当選した「齋藤県政の一年を考える」シンポジウムを開催しました。
最初に、コーディネーターを務める石川康宏代表幹事が「今日のシンポジウムは、齋藤元彦県政の一年を事実でもって検証していくこと、そして兵庫県政を支えてきた「オール与党」体制が今どうなっているかを確認し、今後の運動に生かしていきたい」と問題提起。その後、四人のパネリストが報告を行いました。
谷充弘さん:兵庫県高等学校教職員組合
今年二月の教育委員会議で、豊岡聴覚特別支援学校と出石特別支援学校との統廃合計画が発表されました。この統廃合は、聴覚障害を持つ子どもの教育を受ける権利を奪うものとして、但馬地域の住民だけでなく、聴覚障害者団体なども署名運動に取り組む中で、計画を見直す方向で解決をみました。また、県教委は少子化を根拠に県立高校十四校を二〇二五年に六校へ統廃合する計画を七月に発表しました。これには二十の自治体が住民説明会を要求するなど不安と戸惑いが広がっています。私たちも、教育を受ける権利を奪われる子どもがでる、地域が衰退するなどの危惧から、地域住民の意見を聴く集会や署名に取り組んでいます。
武村義人さん:兵庫県保険医協会副理事長
兵庫県は、コロナ第三波の時点で高齢のコロナ患者の救急搬送を行わないことを決めましたが、介護施設では緊急入院が断られ多くの命が失われる事態を引き起こしました。また、今年八月には、「県が希望者に配布する抗原キット検査で陽性となった場合は、県が今後設置する自主療養登録センターへ登録頂き自主療養をお願いします」とする「県民の皆さんへ協力のお願い」文書を発出しました。これは感染症に罹患しても医療機関にかかるなというものです。保健所数も二十一年間に四割以上削減し、感染症ベッド数・重傷者対応のベッド数も全国平均を大きく下回るのが兵庫県政。さらに、国の言いなりに病院統廃合を進める県政を変えていくことが必要です。
岡田裕行さん:兵庫県自治体問題研究所事務局長
この四月、県は五部から十二部に組織を再編し、新設した財務部の部長を総務省から招聘しました。財政を知事・財務部長が押さえることによって全庁をコントロールしようとする姿勢かと思われます。知事は選挙時に「総務省出身、市町のことをよく知っている」とアピールしましたが、市町の予算編成時に補助金等を一方的にカットしようとしたことで批判を浴びました。また、県の財政基金三十億円を百億円に積み増そうとしており、さらなる住民サービスの削減が懸念されます。齋藤知事の政治姿勢は、国・総務省からみれば「優等生」。独自の政治哲学は感じられず、選挙公約の軽さが見受けられます。
きだ結さん:日本共産党兵庫議会議員
齋藤県政は井戸県政を継承し、さらに悪い方向に進めています。県「行革」の延長と言える「県政改革方針」で、障害者小規模作業所援護事業、百歳高齢者祝福事業などの県民サービスを廃止・見直しする一方、各種の臨海地域道路などは進め、上限のない大企業誘致補助金も続けています。感染症対応では、無料PCR検査の先延ばし、高齢者施設での留め置きなどで人口比死者数はワースト二位となりました。小中学校での三十人学級、女性副知事登用などの公約違反も顕著です。兵庫県議会では、知事選で金沢和夫氏を推した自民党会派、立憲・国民などの会派「ひょうご県民連合」は議案に全て賛成し、「オール与党」が継続しています。
こうした中でも、中学の選択制三十五人学級、高齢者の補聴器購入補助モデル事業、芦屋保健所廃止の凍結など、県民の世論と運動が成果をあげています。
石川代表幹事のまとめ
会場参加者との質疑の後、最後に、コーディネーターの石川康宏代表幹事から「今後も県政を考える企画を継続していく。運動の知恵を政治を変えていくことに生かしていくことが「会」に求められている。そのために、こんな社会をつくりたいという兵庫県のビジョンを示していくことも必要。動画配信による発信もしていく」とまとめがありました。*
シンポジウムの各報告は、井戸県政を継承している齋藤県政の一年を明らかにしました。
また、県議会「オール与党」の継続は、二〇二一年知事選挙が金沢・齋藤の両候補が「継承」と「刷新」で争ったようなものではなく、二人の間には、井戸県政に対する評価でも今後に向けた政策でも大きな違いがなかったことを如実に示したものといえます。「維新」会派が知事選時の八人から、その後、他の選挙への立候補などにより四人に減っていることも報告されました。齋藤候補を推薦した政党の県議団として、そもそも知事を支えていく政治姿勢であったのかが問われるといえます。
参加者からは「齋藤県政の実態が良く理解できた」などの感想の他、「市町は県との関係が大きいので定期的に学ぶ機会を」「ジェンダー平等を前に進める企画を望みます」などの要望も寄せられました。
〔田中邦夫=同会事務局次長〕
(兵庫民報2022年10月2日付)14:00