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2022年10月2日日曜日

憲法県政の会が今後の運動へシンポ:齋藤県政の1年と「オール与党」体制を検証


憲法が輝く兵庫県政をつくる会(憲法県政の会)は九月十八日、昨年の兵庫県知事選挙で初当選した「齋藤県政の一年を考える」シンポジウムを開催しました。
最初に、コーディネーターを務める石川康宏代表幹事が「今日のシンポジウムは、齋藤元彦県政の一年を事実でもって検証していくこと、そして兵庫県政を支えてきた「オール与党」体制が今どうなっているかを確認し、今後の運動に生かしていきたい」と問題提起。その後、四人のパネリストが報告を行いました。

谷充弘さん:兵庫県高等学校教職員組合

今年二月の教育委員会議で、豊岡聴覚特別支援学校と出石特別支援学校との統廃合計画が発表されました。この統廃合は、聴覚障害を持つ子どもの教育を受ける権利を奪うものとして、但馬地域の住民だけでなく、聴覚障害者団体なども署名運動に取り組む中で、計画を見直す方向で解決をみました。
また、県教委は少子化を根拠に県立高校十四校を二〇二五年に六校へ統廃合する計画を七月に発表しました。これには二十の自治体が住民説明会を要求するなど不安と戸惑いが広がっています。私たちも、教育を受ける権利を奪われる子どもがでる、地域が衰退するなどの危惧から、地域住民の意見を聴く集会や署名に取り組んでいます。


武村義人さん:兵庫県保険医協会副理事長

兵庫県は、コロナ第三波の時点で高齢のコロナ患者の救急搬送を行わないことを決めましたが、介護施設では緊急入院が断られ多くの命が失われる事態を引き起こしました。また、今年八月には、「県が希望者に配布する抗原キット検査で陽性となった場合は、県が今後設置する自主療養登録センターへ登録頂き自主療養をお願いします」とする「県民の皆さんへ協力のお願い」文書を発出しました。これは感染症に罹患しても医療機関にかかるなというものです。
保健所数も二十一年間に四割以上削減し、感染症ベッド数・重傷者対応のベッド数も全国平均を大きく下回るのが兵庫県政。さらに、国の言いなりに病院統廃合を進める県政を変えていくことが必要です。

岡田裕行さん:兵庫県自治体問題研究所事務局長

この四月、県は五部から十二部に組織を再編し、新設した財務部の部長を総務省から招聘しました。財政を知事・財務部長が押さえることによって全庁をコントロールしようとする姿勢かと思われます。
知事は選挙時に「総務省出身、市町のことをよく知っている」とアピールしましたが、市町の予算編成時に補助金等を一方的にカットしようとしたことで批判を浴びました。また、県の財政基金三十億円を百億円に積み増そうとしており、さらなる住民サービスの削減が懸念されます。齋藤知事の政治姿勢は、国・総務省からみれば「優等生」。独自の政治哲学は感じられず、選挙公約の軽さが見受けられます。

きだ結さん:日本共産党兵庫議会議員

齋藤県政は井戸県政を継承し、さらに悪い方向に進めています。県「行革」の延長と言える「県政改革方針」で、障害者小規模作業所援護事業、百歳高齢者祝福事業などの県民サービスを廃止・見直しする一方、各種の臨海地域道路などは進め、上限のない大企業誘致補助金も続けています。感染症対応では、無料PCR検査の先延ばし、高齢者施設での留め置きなどで人口比死者数はワースト二位となりました。小中学校での三十人学級、女性副知事登用などの公約違反も顕著です。
兵庫県議会では、知事選で金沢和夫氏を推した自民党会派、立憲・国民などの会派「ひょうご県民連合」は議案に全て賛成し、「オール与党」が継続しています。
こうした中でも、中学の選択制三十五人学級、高齢者の補聴器購入補助モデル事業、芦屋保健所廃止の凍結など、県民の世論と運動が成果をあげています。

石川代表幹事のまとめ

会場参加者との質疑の後、最後に、コーディネーターの石川康宏代表幹事から「今後も県政を考える企画を継続していく。運動の知恵を政治を変えていくことに生かしていくことが「会」に求められている。そのために、こんな社会をつくりたいという兵庫県のビジョンを示していくことも必要。動画配信による発信もしていく」とまとめがありました。
*
シンポジウムの各報告は、井戸県政を継承している齋藤県政の一年を明らかにしました。
また、県議会「オール与党」の継続は、二〇二一年知事選挙が金沢・齋藤の両候補が「継承」と「刷新」で争ったようなものではなく、二人の間には、井戸県政に対する評価でも今後に向けた政策でも大きな違いがなかったことを如実に示したものといえます。「維新」会派が知事選時の八人から、その後、他の選挙への立候補などにより四人に減っていることも報告されました。齋藤候補を推薦した政党の県議団として、そもそも知事を支えていく政治姿勢であったのかが問われるといえます。
参加者からは「齋藤県政の実態が良く理解できた」などの感想の他、「市町は県との関係が大きいので定期的に学ぶ機会を」「ジェンダー平等を前に進める企画を望みます」などの要望も寄せられました。
〔田中邦夫=同会事務局次長〕

(兵庫民報2022年10月2日付)14:00

川西市議選10月9日告示・16日投票:ひとりひとりが大切にされる川西市へ3人の日本共産党議員団を

左から吉岡、(宮本、)北野、黒田のみなさん

十月九日告示・十六日投票の川西市議会議員選挙が目前に迫ってきました。いずれも現職の黒田みち、北野のり子、吉岡けんじの各氏がそれぞれ六期目、四期目、二期目の議席獲得へ挑戦します。
今回より定数が二滅、二十四名になり、立候補説明会には三十五前後の陣営が参加。多数激戦になることは間違いありません。しかもこれまでと違って、「政党」を名乗る候補者が多く、「全国政党」がしのぎを削る「市議選」になっています。すでに政党名を流す「宣伝カー」が市内中心部を定期的に回っている状況です。
日本共産党川西市委員会は、九月十八日に宮本たけし衆院議員を迎え「演説会」を開催、それぞれの候補者から中学校給食開始、子ども医療費中学卒業までの無償化、留守家庭児童育成クラブ増設、水道料金減免延長など、市民要求に基づく政策を実現してきたこと。一方、現市長のもとで北部医療・公立診療所建設の後退問題、各地から医療機関への交通アクセスの要望が強くなったこと、新設市立医療センターに専用駐車場が無い問題、公立保育所・幼稚園の統合が推進され中心部へ集中―などの問題の一方で、大型ごみの無料化、水道料金値下げ、保健所復活など課題があり、引き続き「ひとりひとりが大切にされる川西市」実現へ三人の議員団が力を合わせていく決意を固めました。
宮本たけし衆院議員は、三人の訴えを受け、病院問題、子育ての課題、高齢者支援、労働者後援会から訴えられた最低賃金千五百円など、それぞれが「国政問題」でもあり、今まさに国民的大問題の安倍国葬、統一協会、物価高騰など国政の場からも改善要求をし、国民が安心して暮らせる社会へみなさんと一緒に頑張っていきたいと訴えました。
参加者は、各候補者の訴えに拍手でこたえ、なんとしても三人の議員団確保のため、さらに広がりをつくっていこうと誓いあいました。
〔住田由之輔〕

(兵庫民報2022年10月2日付)13:30

神戸市会日本共産党代表質疑:大学誘致ありきの王子公園・動物園再整備は撤回を/コロナ・物価高から市民の暮らしや営業を守る支援を/統一協会に毅然とした態度を――味口としゆき議員が追及


神戸市会本会議が九月二十二日に開催され、日本共産党神戸市会議員団の味口としゆき議員が代表質疑に立ち、コロナ・物価高対策、大学誘致ありきの王子公園再整備の撤回、統一協会と政治の癒着の根絶、都心・駅前再開発による学校の過密問題、正規教職員の増と担任未配置の速やかな解消について質疑しました。
久元喜造市長は「食料品と光熱水費、これが幅広い国民・市民の生活に影響を与えているということは事実」と認めながら、「国の政策を待つ」とし、一律の給付や減免は「適切ではない」と、市民の暮らし応援に背を向けています。
味口議員は、長期化するコロナの影響、さらに物価高に伴うなかで、市民の暮らし、自営業者の営業を守るため、国民健康保険料や介護保険料の引き下げなど、神戸市として独自の支援策を求めました。あわせて、コロナ・物価高で生活が破綻し、自己破産した市民に対してまで、強引な取り立てが行われていると指摘。神戸市は「市税滞納整理方針」にもとづき係長級の会議で「早期の差し押さえを中心とした滞納整理」の遂行や、納付相談についても「こちらから交渉を求める必要がない」などと意思統一していることを暴露し、困っている市民に寄り添うどころか、組織的に滞納者を追い込んでいると批判しました。
今西副市長は「なんとしても徴収して収入を増やすのが市政運営では大事」だが「納付の時に個別の事情で相談して納付するのが税の基本的な考えである」と答弁しました。

大学誘致ありきで市民の施設縮小やめよ
王子公園・動物園の再整備方針案は、市民の反対意見によって手直しが行われましたが、新大学の誘致とそれに伴う既存施設の縮小方針は、かわっていません。
味口市議は、神戸市が二〇一九年一月までは王子動物園の郊外への移転を検討していたが、移転を断念したと久元市長が会見でのべていたことを紹介。動物園に替わって大きな大学を誘致することを前提にスタートした再整備案のもと、動物園の移転が困難になった今も大学誘致に固執しているために、市民の文化スポーツ施設が縮小廃止されようとしていると指摘。市長トップダウンの大学誘致ありきの再整備計画は撤回し、市民と利用者本位の王子公園・動物園の再整備に改めるよう求めました。
久元市長は「大学誘致をあきらめないというのは、一貫した方針だ」「大学誘致はメリットはあってもデメリットは見出しがたい」と拒否しました。
味口議員は、これだけ市民がプールや競技場、スポーツ施設の縮小に反対しているのに「デメリットがない」などよく言えたものだと批判。かさねて大学誘致の撤回を求めました。

統一協会関連団体に市長が感謝状まで
自民党の河南ただかず、岡田ゆうじ、松本しゅうじ議員らの斡旋で統一協会関連団体のイベントに市幹部職員が参加し、寄付、助成もしていました。市長も記者会見で参加を依頼した市議の名前を伏せていました。関連団体から寄付を受け取った際に、市長名で感謝状(写真)を渡していることも質疑であきらかになりました。関連団体は感謝状の返還要請に応じていません。神戸市消費者センターへの霊感商法・開運商法への被害件数総数は、統一協会がコンプライアンス宣言を行ったあとも、二〇一二~二二年で七十六件千九百六万円になります。
味口議員は、行政の代表や議員による集会への参加や「感謝状」などを通じて、統一協会が意図的に宣伝し、広告塔として使い、いまの新たな被害者を生み出していると指摘しました。
また、統一協会によって、行政が歪められている事例として、同性婚パートナーシップ制度導入への妨害があると指摘。政令指定都市で導入していないのは神戸市をふくめ三市にとどまり、神戸市は最も遅れた自治体になっています。
味口議員は、統一協会に毅然とした対応を取り、パートナーシップ制度導入に踏み切るよう迫りました。
久元市長は、あえて「旧統一協会の問題とは違う」と付言し、制度導入は「さまざまな議会のご論議もえて、しっかり検討したい」との弁にとどまりました。
〔前田明〕

(兵庫民報2022年10月2日付)13:00

新たな署名運動スタート:神戸の中学校給食を実現する会事務局長 尻池直美


神戸の中学校給食を実現する会は、二〇一一年に結成、神戸市九区のそれぞれの会が発足し、神戸の中学生にも小学校のような温かい給食を食べさせたい、と署名活動や議会陳述、教育委員会との懇談、学習会などに取り組んできました。この粘り強い運動が実り、二〇二一年九月に「全員喫食の温かい中学校給食の早期実施」を神戸市が表明したことは嬉しい、画期的なでき事でした。
しかし、実施方式は私たちが望むような自校あるいは親子方式ではありませんでした。市が計画している「大量調理施設でのセンター方式」の実施は早くても二〇二五年まで見送られようとしています。
私たちは子どもたちにとって最善の自校調理方式を要求する運動を続けたいと考えています。
そこで、新たな署名に取り組むことになりました。請願事項は新たに「3、学校給食を無償にしてください」を追加、「1、地元食材や有機農産物を使用する、安全・安心な自校調理にしてください」「2、調理室ができるまで、小学校から給食を配送してください(親子方式)」の三項目です。
*
この新たな署名に取り組むため、九月二十四日に「豊かで安全な学校給食を目指す大阪連絡会」会長で関西大学名誉教授の樫原正澄さんを招いて学習会を開催し、「学校給食とは」「食育とは」「目指すべき方向・課題」を学びました。
樫原さんは「学校給食とは子どもの成長に資する公共食であり、個別に用意するものでなく大人が責任を持つべきもの」だが、「食育」の定義は「食育基本法」にも書かれていないと指摘しました。だから神戸市が「給食の献立プリントを配っていることが食育」とか、センター調理方式でも、栄養士が配置されてなくても、食育ができる、とかびっくりするようなことを言うのだろうかと思いました。大阪では維新政治のトップダウンでランチボックスから教室で配膳される給食に移行したものの様々な問題があるとのこと。一方、京都府の伊根小学校の事例は素晴らしく、神戸でも地域と一体で給食に取り組めたらと感じました。食は人権、食べることは生きること。学校給食の重要性をますます実感しました。
当面の課題は①美味しい給食を提供する(美味しい学校給食とは何か、議論が必要)②教職員の人員体制への財政支援③食材費支援④地域住民の協力⑤地産地消を進める。給食運動の必要性を確信する学びとなり、署名推進の力になる大変有意義な学習会となりました。

(兵庫民報2022年10月2日付)12:30

公立高校統廃合見直しを:「公立高校を考える西宮の会」結成

県教委が七月十四日に発表した西宮甲山高校と西宮北高校の「発展的統合」という名の統廃合に対して、西宮での運動母体を作るため、九月二十四日、西宮市大学交流センターで「高校統廃合計画を考える」準備会が行われ、「公立高校を考える西宮の会」が結成されました。
準備会では最初に、高教組西阪神支部の福住宏之さんが県教委の高校統廃合計画とその問題点を説明、その後、参加者から様々な質問や意見が出されました。ある中学生の保護者は「不安だ。少子化でなら学校が減って当たり前だと考える市民に広げたい」と述べ、また大阪からの参加者は「大阪では五つの小学校が一校に統合されるなど大変なことになっている。少人数学級などを進めるべきで統廃合を断じて許してはならない。ぜひ全県的な運動に発展させてほしい」とエールを送りました。
九名から出た意見を踏まえ、当面、次のような取り組みが提起されました。▽兵庫県議会に対しての「県立高校の統合計画を見直し、少人数学級によって教育の充実を求める請願書」署名▽二校には西宮市内すべての中学校の出身者がいるにもかかわらず、「県立高校は県の問題だ」として市民に対し無責任な態度をとっている西宮市や市教委との懇談▽そもそもほとんどの西宮市民が二校の統合を知らないのが現状であり、県教委に西宮市民への説明をさせること――などです。
今年十二月中には、新高校名とその場所など「発展的統合」の具体的な方向性が決められようとしており、運動の急拡大が望まれます。
〔上田隆=公立高校を考える西宮の会事務局〕

(兵庫民報2022年10月2日付)12:00


公立高校統廃合見直しを:西播:請願署名を開始、12月県議会へ


「公立高校の統廃合」を考えるつどいが九月二十四日、姫路市網干市民センターで開かれ、地域住民四十人が参加しました。つどいでは、兵庫県教委が発表している県立高校統廃合計画について、高校通学区拡大反対連絡協議会の谷充弘事務局長が報告。計画の問題点を指摘すると共に「保護者や地域の人への説明会も開くことなく強引に進めようとしている」と批判。「県立高校の統合計画を見直し、少人数学級による教育の充実を求める」請願署名を広げようと呼びかけました。
谷氏は、県教委が今回の統廃合計画を「発展的統合の実施」などとしながら、その理由については「学級数が少なくなったら部活もできない、などとしか言っていない」、また十二月にはどの学校を残すかを発表すると結論ありきで進めていると指摘。「一学年を六~八学級として、生徒数を確保し、切磋琢磨する中で教育効果を上げる」などとする県教委の主張について、「それを裏付ける研究成果はない。欧米など諸外国では少人数学級が主流だ」として、県教委の考えを厳しく批判しました。
同時に、高校が地域で果たしている役割にも触れ「県の担当者も、高校がなくなれば地域が衰退することは分かるが予算がない」などと言っていることも紹介。以前、高校の学級定員を四十人にしたときには県が独自予算を組んだことも紹介し、「必要なら独自予算で対応すべきだ」としました。県内市町長からも説明会開催を求める声が出ていることを報告しました。
入江次郎県議、苦瓜かずしげ姫路市議は、この間対象とされた高校や周辺中学校などを訪問し、校長から実情を訊いてきたことなどを報告しました。
中学、高校生の子を持つお母さんなどからは「新たに競争させることになるのでは。統廃合ありきはおかしい。今の中学生、高校生はコロナの被害を直接受けている。「学校が決めたこと」などと従わざるを得ないようにされている。統合実施のチラシだけ配られても理解できないけれど、そうかということになってしまうのでは」「高校の数が減ると、通学費も増える」などの声が出されました。
請願署名は十二月県議会に提出する予定で十一月二十日までに多くの人に広げてほしいとの訴えがありました。また、対象とされている夢前高校の生徒からメッセージが寄せられ、紹介されました。
〔苦瓜かずしげ=姫路市議〕

(兵庫民報2022年10月2日付)11:30

兵庫の地学散歩……大地を科学する第十六回:日本列島の生い立ちを語るチャート:觜本 格(かがく教育研究所)

写真1 チャートの地層(神戸市西区、明石川河床)

チャートの謎

毎年、淡路島の西海岸や垂水区の塩屋の海岸で石を拾う。小学生から高校生を対象にした「日本列島三億年の歴史を語る岩石実物図鑑をつくる」授業やワークショップの教材集めである。海岸や川原には多くの種類の岩石があるが、この場所では流紋岩類とチャートが多い。チャートは赤、茶、黄、灰、黒、橙、白、緑などさまざまな色があるが、とても硬くつやのある石である(写真1、2)。ごくありふれた石であるチャートの謎の解明が、日本列島の生い立ちについて考え方の根本的な転換につながった。

写真2 いろいろな色のチャート

チャートは成因がよくわからない謎の堆積岩だった。私が学生時代の一九六〇年代の教科書や書物では「化学岩」「化学沈殿岩」と書かれていた。まれに「有機岩」「生物岩」もあると言われていた。化学的沈殿説と生物起源説であり、前者が支配的だった。
当時はチャートからは化石がほとんど見つからなかった。同じ地層から見つかる石灰岩はサンゴやフズリナ(紡錘虫)の化石が多数見つかるのとは対照的だった。ところが、チャートをフッ酸という強い酸で処理するとエッチングされた岩石の表面から細かい粒が浮き出てくる。その粒は顕微鏡で観察すると放散虫という海にすむプランクトンの一種であり、チャートは放散虫の遺骸の集合体ということが分かった。

放散虫革命

「革命」とは政治や経済のしくみが根本的に変わることだ。「IT革命」のように全く新しい手法によって新しい世界が開かれることも意味する。
古い時代の地層のチャートや泥岩から見つかる放散虫の化石の研究によって、これらの地層ができた時代やでき方、日本列島がどのようにできたのかという考え方が根本的に変わったので「放散虫革命」と呼ばれている。
日本列島の各地に分布する「秩父古生層」などの古い地層は日本列島の骨格をつくる地層で、石灰岩に入っている化石から古生代に堆積したと考えられてきた。これらの地層はぐにゃぐにゃに曲がったり(褶曲)、断層でずたずたに切れたり、さまざまな岩石が複雑に組み合わさったりして、「モメている」地層だ。そこで考えられたのが「地向斜造山運動」だった。「地向斜」では堆積物をためながら深くまで沈降が進み、やがて隆起に転じて山脈が作られるとされた。アルプスもヒマラヤも日本列島でも地向斜造山運動が起こったと信じられてきた。放散虫化石の研究や古地磁気の研究などにより、地向斜造山運動は完全に否定され、新しいプレートテクトニクスによる日本列島像が決定的になった「革命」だった。

図 付加体のでき方(概念図)

プレートの移動で旅をしてきたチャート・石灰岩

放散虫化石によって地層ができた時代が分かってくると、とても不思議なことが明らかになった。「古生層」の泥岩は中生代のジュラ紀を示し、チャートは古生代のペルム紀や石炭紀を示すものが多い。全く違う時代の堆積物が混在したり繰り返したりしている。チャートには陸から運ばれた砂が全く含まれていないことから、深海底で堆積したことが確実である。泥岩や砂岩に重なっているチャートは整然と堆積したものではなく、レキとして混入したとしか考えられない。
古生代のペルム紀や石炭紀(約三億年前)に太平洋の深海底に堆積した放散虫の遺骸はチャートの地層となり、浅い海の海底にできたサンゴ礁は石灰岩となって海洋プレートの移動で大陸の周辺のプレートの沈み込む海溝まで移動してきた。プレートは一年に五~十㌢㍍移動するので一億年で数千k㍍になる。中生代ジュラ紀(約二億年前)にプレートは地球の内部に沈み込むがチャートと石灰岩の地層ははぎ取られ、堆積していた泥や砂の地層とともに大陸に付け加わった。このように大陸に付け加わった地質を「付加体」と呼んでいる(図)。日本列島の骨格は、いろいろな時代の付加体と花こう岩や流紋岩類が寄木細工のように組み合わされてできている。

丹波層群

写真3 丹波層群からなる雄岡山(右)と雌岡山(左)

神戸市西区に雄岡山(二百四十一㍍)と雌岡山(二百四十九㍍)がある。大阪層群が広がる真っ平らな丘陵にポツンと二つの山が突き出している。この山はジュラ紀の付加体である丹波層群からできている(写真3)。この山の近くに住吉神社があり、その前の明石川の河床で丹波層群の地層を観察することができる(写真4)。砂岩層に大きなチャートのブロックが取り込まれている。
写真4 丹波層群のチャート層と砂岩層(神戸市西区)

東灘区の住吉川の中流で見られる丹波層群は、花こう岩と接していて熱変成を受け、ホルンヘルスという変成岩になっている。兵庫県東部から京都府にかけての丹波地方には広く丹波層群が分布している。
〔元神戸市立中学校教員・元神戸親和女子大学教授〕

(兵庫民報2022年10月2日付)11:00

九条の会.ひがしなだ:ジェンダー平等は平和を求める――朴木佳緒留さんが講演


九条の会.ひがしなだは九月二十三日、十六周年記念講演会を神戸市東灘区文化センターで開催。朴木佳緒留さん(神戸大学名誉教授)が「ジェンダー平等は平和を求める」と題して講演しました。
*
朴木さんは、まずは現状を確認しましょうと、①世界の中の日本のジェンダー・ギャップ指数が百四十六カ国中百十六位であること、②根強い性別役割分業があること③暴力……セクハラが「可視化」されつつあるが減少しないこと④家族とセクシュアリティとして「多様化(LGBTQ)」と言いつつ、制度化された異性愛に関する検討はタブー、「標準家族」(夫婦と子ども二人)は全世帯の五%以下なのに「モデル化」されているとのべました。
そして、平和がなければジェンダー平等はないとして、女性差別撤廃条約前文で、「外国による占領及び支配並みに内政干渉の根絶が男女の権利の完全な享有に不可欠であることを強調し」と謳われていることを紹介しました。
さらに、ジェンダー問題と「パワー」について話を進め、男性パワーと女性パワーは非対象であること、パワーの違いはつくられたもの(社会システムの問題)、「男女の違い」は「平均値の違い」であることなどを説明し、二〇〇〇年頃からジェンダー・バックラッシュとして「ジェンダーフリー」やフェミニズムを攻撃する論が登場するようになったとのべました。
*
朴木さんは、こうした非常に広範囲な問題を自身の体験や身近な問題を紹介しながらわかり易く語り、参加者からは「一般の報道だけでは分からない事、もしくは少しずらした報告がなされていることなどを知ることができた」「ジェンダー不平等はパワーの違いだと、そしてパワーの違いは社会システムの中で付与されて作られてきたことを教えていただいた」「この問題は奥深いもので、もっとこのような会を開催してほしい」といった声が寄せられました。
〔西谷利文=同会事務局長〕

(兵庫民報2022年10月2日付)10:30

「うたごえらしさ」感じた電通のうたごえ祭典:阪神センター合唱団 福島智俊

全国合同演奏

三年振りに開催された「電通のうたごえ祭典」に参加しました。会場探しに苦労して、やっと神戸市西区での会場が確保できたとのこと。「挨拶」にも各合唱団、サークルのコメントにも熱い思いが感じられました。座席は、ほぼ満席に近く組織も良く頑張ったなと感じました。

全国13団体で合唱発表会

第一部「合唱発表会」には、全国から十三団体が参加。コロナ禍で「練習不足」とのコメントが聞かれたが、演奏は素晴らしく、少人数による演奏が多かったものの、「声のひびきが美しい」「リズムにしっかりとのっている」「声のハーモニー」と合わせて「心のハーモニー(調和)」も深められていました。そのことで「言葉が明瞭である」、よって「歌い手の情感」が伝わってきました。人間性を否定されるような、厳しい職場のなかで〝うたごえ〟を通して闘い、生きてきた人生の生き様を感じました。また、指揮者のいない演奏が半数くらいでしたが、伴奏者と歌い手の息がよく合い、マスク着用の演奏でしたが、声も思いも届いたと思いました。

JAL争議支援

第一部最後のJAL争議の闘いを支援する企画は「兵庫のうたごえ祭典」でも、ぜひやって欲しいですね!

素晴らしいゲスト演奏

第二部ミニコンサートのゲスト「マリンバ」の演奏は聞きやすい選曲で聞き入っていました。マリンバファンが増える素晴らしい演奏で成功だったと思います。
ゲスト出演「国鉄大阪合唱団・号笛」の演奏、久しぶりに生演奏を聞くことができた。何だろう? すぐに演奏に引き込まれてしまう。とにかく「声の統一感がすごい」「若くてのびやかな声」にひきつけられた。

全国合同演奏

電通のうたごえ全国合同演奏は、全国から集まる困難を乗り越え連帯感を発揮した声に、まだまだこれからと、希望を感じました。

障がい者の感想

文化は人の深部にある心を呼び覚まさせます。障がい者福祉センター(大阪)から参加した障がい者たちの感想を紹介します。
「信念、情熱、意志を持つ生き方、発信、友達=仲間の存在はすばらしいな」「前向きな詩とお母さんの介護で頑張っている父のこと、病気で迷惑をかけてきた自分のことなんかで涙がでて……感謝しようと思いました」「病気になったこと、親のせいにしてきたけれど、年もとってきている親なので元気でいてほしい。そのためにも自分が穏やかになりたい」「声に人生の重み深みがあり、どこにもないコンサートでした。ビックリした」など感動的な数々の感想が寄せられました。
私も「電通のうたごえ祭典」に参加できて、久しぶりに「うたごえらしさ」を感じることができました。

(兵庫民報2022年10月2日付)10:00

★注:「電通」はNTT関連の職場のことです。電電公社民営化以前から使われてきた呼称です。同名の広告代理店とは関係がありません。

神戸映画サークル協議会特別企画:『人生フルーツ』――風と雑木林と建築家夫婦の物語:10月10日、御影公会堂


風が吹けば、枯葉が落ちる。枯葉が落ちれば、土が肥える。
土が肥えれば、果実が実る。こつこつ、ゆっくり。人生、フルーツ。
愛知県春日井市の高蔵寺ニュータウンの一隅。雑木林に囲まれた一軒の平屋。それは建築家の津端修一さんが、師であるアントニン・レーモンドの自邸に倣って建てた家。四季折々、キッチンガーデンを彩る七十種の野菜と五十種の果実が、妻・英子さんの手で美味しいごちそうに変わります。ふたりの暮らしには人が生きる豊かさと、歳を重ねて実る美しさにあふれています。
女優・樹木希林さんのナレーションが作品世界に溶け込んで心地よく響きます。ふたりの来し方と暮らしから、本当の豊かさへの深い思索の旅へとゆっくり誘われ……繰り返し観たくなる作品です。
神戸映サの上映会は主に三宮以西で行っていますが、今回初めて東灘区の御影公会堂を会場として開催します。国の登録有形文化財に登録された由緒ある建築物で、ゆったりと浸ってください。
〔木村百合=神戸映画サークル協議会〕

特別企画:『人生フルーツ』

プロデューサー:阿武野勝彦、監督:伏原健之、2016年/日本/91分/10月10日(月・祝)①11時②14時、会場:御影公会堂/料金:1,000円
9月例会:『ニューヨーク 親切なロシア料理店』
内容紹介は次号に掲載/10月22日(土)①11時30分②14時30分③18時、会場:兵庫県民会館9階けんみんホール/一般1,300円
問い合わせはTel 078-371-8550、http://kobe-eisa.com/

(兵庫民報2022年10月2日付)9:30

観感楽学


私の定期入れの中は、歯医者・眼科・整形外科・内科クリニック等々何種類もの診察券であふれている▼八月ごろから妻が「お父さん、九月中に全部受診してできるだけたくさん薬を出してもらわなあかんで……」と口うるさく言う。初めのうちは適当に聞き流していたが、毎日のように医院に通い医療費を払い薬局で薬代を支払いながら、十月からこれがすべて二倍になるんだと思うと、あらためてえらいこっちゃと妻の言うとおり従うことにした▼それにしてもひどい話である。政府は、年金暮らしの後期高齢者のなけなしの持ち金を株などに投資して新たな収入源に、などとひどいことを企んでいる。しかし、そんなことができる高齢者は私の周りには見当たらない▼ところで安倍元首相の「国葬」や統一協会をめぐる問題を通じて、安倍政治の負の遺産、憲法をないがしろにすること、国会での質疑を形骸化することなどが改めて浮き彫りになり、岸田内閣の支持率は劇的に低下している▼十月からの後期高齢者保険料が二倍になるという負担の押し付けは新たな国民の怒りを広げると思う。物価高騰に対する政府の無策を市民と野党の共闘で追及すれば岸田内閣のとどめになるのでは。(D)

(兵庫民報2022年10月2日付)9:00