兵庫労連は二〇二〇年から取り組んできた「最低生計費調査」の結果を七月二十日に発表しました。
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最低賃金は、中央最低賃金審議会で全国をA、B、C、Dの四つの段階に分け目安が示されます。
その目安をもとに都道府県の審議会で①労働者の生計費、②労働者の賃金の状況、③企業の賃金支払い能力を総合的に勘案して最低賃金の金額が決定されます。
兵庫県のいまの最低賃金は九百二十八円で、この金額未満で働かせることは違法となります。しかし、最低賃金で週四十時間働いても、月額十六万円、年収で百九十三万円にしかなりません。いわゆるワーキングプアの状態です。
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今回、兵庫労連が調査した最低生計費は、「若者がふつうの暮らし」をするには最低でもいくらの時給額が必要かを統計的に調査したものです。その結果、男性で時間額千六百二十六円、月額二十四万三千九百三十二円、女性で時間額千五百八十二円、月額二十三万七千三百十一円が必要だと算出されました。
これまでに同様の調査が全国二十六都道府県で実施されていますが、都市でも地方でも、どの地域でも千五百円程度の時間額が必要だとの結果が出されています。いまの最低賃金では、普通の暮らしができないことが結果から得られました。
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七月二十九日には、この調査結果をもとに最低賃金の大幅な引き上げを求めて、兵庫地方最低賃金審議会で意見陳述を行います。
また、兵庫労連は審議会と専門部会の全面公開と、審議委員の公平な任命と、女性の任命を求めて労働局との交渉を行っています。
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七月二十日は土井直樹兵庫労連事務局長らが兵庫県庁で記者会見。調査について監修を行った静岡県立大学短期大学部の中澤秀一准教授が同席し、集計方法や得られた結果について説明しました。
記者からは、最低賃金と今回の最低生計費調査との関係や、モデルケースとした二十五歳の若者の統計について質問が出されました。
記者会見の様子の録画は兵庫労連Webチャンネルで視聴できます。
〔岡崎史典=兵庫労連事務局次長〕
記者会見の様子の録画は兵庫労連Webチャンネルで視聴できます。
〔岡崎史典=兵庫労連事務局次長〕
兵庫最低生計費試算調査の結果について
――兵庫で若者がふつうに一人暮らしをするには時給1600円が必要
2022年7月20日 兵庫県労働組合総連合
○現在の兵庫県の最低賃金は928円である。この金額では、フルタイムで働いたとしても月額16万円程度である。年収200万円にも届かず、ワーキングプア状態である。
○兵庫県労働組合総連合(兵庫労連)では、兵庫で労働者がふつうに暮らすために必要な費用を科学的データにもとづいて明らかにするために、初めて最低生計費試算調査に取り組んだ。
○具体的には、主に兵庫労連に加盟する各単産の労働者を対象に、生活のパターンを調べる「生活実態調査」及び持ち物をどれくらい所有しているのかを調べる「手持ち財調査」を実施し、それらの結果をもとにふつうの暮らしに必要な費用を一つひとつ丁寧に積み上げる「マーケット・バスケット方式」により算定した。
〇調査には、約750名が回答をしている(回収率約10%)。今回は、その中から兵庫に住んでいる、もしくは兵庫で働いている一人暮らしの若者112名分(女性=41、男性=71)のデータの分析結果を報告するものである。
○兵庫県で若者がふつうに一人暮らしをするためには、男性=月額243,932円、女性=月額237,311円(ともに税・社会保険料込み)が必要である。これは年額に換算すると約300万円となる。ちなみに、2月に大阪府でも同様の調査結果が公表されているが、男性=月額244,951円、女性=月額242,110円であった(ともに税・社会保険料込み)。
○この生計費で想定した「ふつうの暮らし」の内容は、以下のようなものである。
- 神戸市須磨区板宿の25m2の1Kワンルームマンション・アパートに住み、家賃は管理料込みで46,000円(2階、エアコン付き)。通勤には公共交通機関を使い、月の交通費は約10,000円。
- 冷蔵庫、炊飯器、洗濯機、掃除機などは、量販店で最低価格帯のものでそろえた。
- 1か月の食費は、男性=約44,000円、女性=約36,000円。朝晩は家でしっかりと食べ、昼食について男性はコンビニなどでお弁当を購入し(1食あたり500円)、女性には週に2日は弁当持参の日もある。そのほか、月に2回、同僚や友人と飲み会・会食に行っている(1回当たりの費用=3,000円で、女性はこれにランチが1回追加される)。
- 休日は家で休養していることが多い。1泊以上の旅行は帰省を含めて年に3回で、その費用は年間9万円。月に4回は、恋人や友人たちと郊外のショッピングモールに行って、映画・ショッピングを楽しんでいる(1回2,000円で月に8,000円)。
〇昨今の物価高騰の状況にあって、すべての労働者・国民の生活を守るためには、最低賃金は労働者の生計費の水準まで引き上げられなければならない。賃金の底上げこそが日本経済が再生するためのきっかけになる。今年の最低賃金審議会でのまっとうな議論に期待したい。
(兵庫民報2022年7月31日付)11:30
以上
(兵庫民報2022年7月31日付)11:30