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調査結果を発表する岡田恭治副委員長(右)と永峰書記長(左) =6月20日、県庁記者クラブ |
○兵庫教組で実態調査
文部科学省は二〇二一年度「教師不足」調査に乗り出し、始業日時点で二千五百五十八人の「教師不足」があると発表しました。この調査で兵庫県では小学校二十二人、中学校五十七人が不足していることも発表されました。現場からは、始業日以降も年度途中で休職に入り、代替が見つからない状態や、四月一日から、そもそも未配置になっている「定員未充足」といった状態が数カ月続いているなど、深刻な実態も報告されていました。
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兵庫教職員組合は、この「教員の未配置」の実態をリアルにつかみ、県教育委員会に対して「教師不足」の実態を示し、抜本的な改善策を迫っていきたいと考え、独自に「教員未配置実態調査」を今年五月から六月にかけて行いました。兵庫県下四十市町(政令市である神戸市は除く)教育委員会に直接、調査依頼をし、六月十日には全四十市町教育委員会から回答を得ました。その結果は下の表の通りです。
小学校 | 中学校 特別支援学校含む |
合計 | |
常 勤 | 60人 | 42人 | 102人 |
非常勤 | 24人 | 42人 | 66人 |
合 計 | 84人 | 84人 | 168人 |
ある程度の数は予想していましたが、新学期が始まってからわずか一カ月でこの数。未配置のあるすべての学校が対応を余儀なくされ、「みんなでカバー」することになっています。また、未配置のうち、常勤で一番多かったのが、「定員未充足」で四十七人、次いで「病気休暇代替が見つからない」が四十人でした。「定員未充足」というのは論外ですが、「病気休暇代替が見つからない」というのは、今の学校現場の長時間過密労働の蔓延の結果だとみるべきです。
私たちは、今回の調査結果を、保護者、地域の方、教育委員会関係者、そして教職員など、教育に関わるより多くの人と共有すること、この課題の解決のためにそれぞれの立場で知恵を出し合い、一刻も早くこの状況を変えていくことが重要と考え、六月二十日に県庁記者クラブで記者発表を行いました。新聞社五社、テレビ局二局が参加し、二十日の夕方のニュースでは二局とも取り上げるなど、この問題の関心の高さがうかがえます。
放送後には、現場教職員から、「教育現場がかかえる重大な問題をよく指摘してくれた」「専科や兵庫型学習システムの担当者は、未配置になっている学級の調整定員ではない」「これからもとにかく現場の生の声を届けてください」などたくさんの声が届きました。また、管理職からも「ギリギリの状態で学校を回しているがもう限界だ。これ以上職員に無理は言えない」というメッセージも寄せられました。
○教員不足はなぜ起こるのか
未配置がなぜ起こるのか。理由は、大きく二点あると思います。*
一点目は、そもそも学校の中に、臨時教職員が多い実態があるということです。
ここ数年、各都道府県では大量退職に伴い、多くの新任教員が採用されました。それに伴い、産育休取得者が増えています。
今回の調査でも明らかになった、病気休職者が多いこともあります。これは今の教員の働き方と密接な関係にあり、それだけ学校現場が大変になっているということの裏返しです。
また、義務標準法により児童生徒数の変化で学級数が決まるために、学級定員がギリギリの時は翌年度のことを考え正規を入れず、定員内臨時教職員で対応している実態もあります。
さらに、児童生徒数の減少を見込み、本来、正規の枠のところを臨時教職員の枠にしたり、国の加配分を、非常勤に分配し配置したりしている。これらの結果、臨時教職員の占める割合が高くなっているのです。
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二点目は、これらの背景に異常な学校の長時間過密労働の実態があり、学校現場が魅力ある職場になっていないということです。
教員の未配置が生じる最大の原因は、平均勤務時間が一日約十二時間という異常な長時間労働にあります。精神疾患の休職者が毎年五千人を超えるなど、病休や中途退職に追い込まれる教員が後を絶ちません。その結果、若い人は教職を敬遠する傾向にあります。各地の採用試験の応募倍率をみても教職志望離れは明らかです。
また、年配の経験者も「授業だけの非常勤なら」とか、「この年で常勤はかんべんしてほしい」など、再任用を含めて「常勤は希望しない傾向」があります。
「#教師のバトン」でも話題になりましたが、学校のブラック化が解消されない限り、この問題の根本的な解決にはならないと思っています。
「出勤七時、退勤二十一時、基本的に休憩なし、小学校勤務、初任者でまだ四日目でこの状況です。もう限界です。助けてください」
「つらい、我が子とあって話ができるのは一日に十分ぐらい。朝は我が子が寝てるときに朝ごはんの用意だけして学校に出勤し、夜は我が子が寝る直前に帰る日々。こんなに愛しい我が子がいるのに何やってんだろう、私。この働き方では続けられない」
どちらのツイートも、限られた職場の限られた人の特異な働き方ではなく、全国いたるところ、どこの学校でも普通に起きている状況です。
兵庫県でも、今年度四月、三日間だけ勤務してその働き方に絶望し、四月七日に退職した新任がいました。また、二つ目のツイートと同じような状況・理由で先輩教師が退職したことを涙ながらに報告する組合員もいました。
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「教職員の未配置」問題の解消は待ったなしの状況です。学級担任が病気休職に入り、その代替が未配置のために、代わりに入った教員も病気休職。やっと配置できた臨時教職員も続かず退職するといったドミノ倒し的な未配置の例はまれではありません。その学校で働く教職員がみんなでカバーすることで、何とか未配置の状態をしのいでいるので、その分はすべて過重労働になっているのです。これでは、ますます、病気休職者や退職者は増える一方です。
○行政の果たす役割と組合運動
文部科学省には全教を通して、引き続き、①「定数改善計画」を早期に策定し、更なる定数改善を行うこと、②義務教育費国庫負担の割合を二分の一に戻すなど、教育予算の大幅な増額を行うこと、③教職員の勤務実態とかけ離れ、残業代を支給せず「定額働かせ放題」の根拠になっている「給特法」を見直し、待遇改善を進めること―を求めていきます。また、市町教育委員会、県教育委員会にはこの調査結果を重く受け止め、未配置の解消につながるあらゆる方策を検討することを要望していきます。とりわけ、県教委には、秋の確定交渉の場も使い、次の二点を強く求めたいと思います。
①教職員の多忙化解消で学校現場が魅力ある職場になるように、あらゆる施策を講じること。
②臨時教職員がより働きやすい職場になるようにさらなる待遇改善を行うこと。
学校に行っても受けられない授業がある、担任の先生が決まらないなどあり得ないことが起きています。本来、配置されなければならない教員がいないままでも学校が進んでいくという異常な事態の解消のために、そして、兵庫で学ぶ子どもたちとそこで働く教職員のために、今後も教職員組合として頑張りたいと思います。
(兵庫民報2022年7月10日付)11:30