2022年6月5日日曜日

観感楽学


我が家の玄関わきにジューンベリーの樹が一本だけ植わっている。小さかった樹が十数年の間に大きくなり五月から六月にかけて毎年深紅の実をつける。だからジューンベリーなのだろう。直径が十ミリに満たない小さなルビーのような美しい実が実ると朝早くから野鳥が飛んできてついばみ始める。今朝も山鳩がつがいで来た。小さくて採るのが面倒だが妻はこの実を毎朝とってジャムを作る。甘酸っぱくて絶品なのである▼我が家の冷凍庫にはイチゴやイチジク、八朔、ブドウ、ジューンベリーなどのジャムがぎっしりとガラス瓶に詰まっている。このガラス瓶はすべて蜂蜜の空き瓶▼数十年前、私はある蜂蜜屋さんと懇意になりレンゲやアカシア、ミカンなどそれぞれの味わい方を教わった。当時まだ安価だった「百花」などは缶で取り寄せていた。私たちに蜂蜜の楽しみ方や効能を語ってくれたのが小野市の養蜂業を営む夫婦だった▼北海道知床の海難事故に遭遇してしまった兵庫県のお二人は、おそらく私たちが会話を交わしたこのご夫婦ではないかと思われる。海底に沈んだ船は引き上げられたと報じられたが、悲惨な事故に遭遇し、まだ冷たい海に残された犠牲者を思うと胸が痛む。無心に赤い実をついばむ山鳩を見ながら心のなかで手を合わせた。(D)

(兵庫民報2022年6月5日付)9:00