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2021年2月28日日曜日

兵庫県議会で新年度予算案審議始まる:保健・医療体制の強化、事業者・大学生への支援、県民の命と暮らしを守る施策こそ


二月十七日開会の兵庫県議会で審議中の二〇二一年度予算案一般会計は総額二兆七千三百四億円(前年比三六・八%増)で過去最大となっています。中小企業制度資金貸付金の増(約七千億円)、新型コロナウイルス感染症対策などによるものです。

歳入――コロナで県税収11%減

歳入について、県税等は、新型コロナウイルス感染症の影響等により企業業績や個人消費が落ち込み、前年比九百十九億円減の七千六百四十七億円(前年比一〇・七%減)と大きな減収となっています。
地方消費税収の県税に対する構成比は、三二・八%となっており、引き続き消費税にたよる県税収入となっています(グラフ)。 


地方財政計画上の財政不足額の増にともない地方交付税等は、四千七百九十四億円(前年比二一・五%増)が措置されています。そのうえで、さらに財源不足を補うために県債を、前年度比二・五%増の千二百八十三億円を計上。地方消費税収等の減収に対する特別減収対策債を百四十六億円発行するとしています。

歳出――不十分な感染症対応

歳出では、新型コロナウイルス感染症対策として入院医療機関等への支援(三百億円)、検査機能の充実(七億円)、ワクチン接種体制等の推進(十四億円)、新型コロナウイルス感染症対応資金利子補給事業(六十八億円)、がんばるお店・お宿応援(十四億円)など、不十分ですが、コロナ関連の対応策が盛り込まれています(左の表)。
地方財政計画では、全国で感染症対応保健師を現状の千八百人から二年かけて一・五倍、九百人を増員するとしています。しかし今回の県予算で保健師の増員は、七人にとどまっています。兵庫県の今年度当初の感染症対応保健師は、五十三人。二年で一・五倍化するとすれば、来年度は少なくとも十三、四人の増員が必要です。
一方で、コロナ対応で、病床逼迫が大きな問題になっているにもかかわらず、地域医療構想の病床削減を進めるための病床ダウンサイジング支援費(三億円)などが計上されています。
国で、小学校での学校編制標準を三十五人以下学級とする合意がなされ、教職員の増員が求められますが、予算案では、教職員数を七十四人削減。少人数学級に逆行しています。
県立高等学校教育改革第三次実施計画の策定が予算案に盛り込まれています。これは、「都市部では、適正規模維持のため発展的統合を検討」などと素案で示され、今年三月に提出される「ひょうご未来の高校教育あり方検討委員会報告書」に基づき、計画が策定されるものです。
投資的経費については、緊急経済対策補正と合わせると、ほぼ前年同水準となっており、大阪湾岸道路西伸部整備支援(一・三億円)、播磨臨海地域道路計画(一・二億円)、東播丹波連絡道路計画など不要不急の事業予算が確保されています。県庁舎等再整備事業については、コロナ等の影響で今年度の計画が来年度に持ち越され、新たな予算計上はありません。
また、アジアや羽田等への就航をめざす但馬空港での機能強化や、大規模アリーナについて井戸知事は、コロナ禍の状況もあり、いずれも今後慎重に検討するとしています。

運動の反映――特別支援学校新設など

この間の運動などを反映した事業も一定盛り込まれています。
阪神南地域での特別支援学校の児童生徒の増加が見込まれることをうけ、西宮市田近野町に県立特別支援学校が新設されます。
また急増する一時保護需要に対応するために、阪神間(旧川西こども家庭センター)と県中央部での一時保護所の整備が着手されます。

ねりき恵子党県議団長のコメント

新型コロナウイルス感染症対策について十一回にわたる申し入れを行ってきました。予算案においては、検査体制の拡充、保健師の増員など一定反映されましたが、十分とは言えません。不要不急の公共事業を削減し、保健・医療体制の強化や、事業者、大学生への支援、くらしを応援する施策などを強めるべきです。
一方、特別支援学校の増設など運動が実った成果もあります。
予算議会では、県民の切実な要望をしっかり届け、提案されている予算議案などを県民の立場からチェックし、施策の改善、要求実現のために頑張ります。



(兵庫民報2021年2月28日付)

 

 県税収に占める比率

2021年度 予算額 前年比 構成比
個人県民税 1814億円 △6.0% 25.7%
法人関係税 1345億円 △6.5% 19.1%
地方消費税 2312億円 △5.2% 32.8%

新型コロナウイルス感染症拡大防止対策 (医療提供・検査体制等の充実)

区  分 内  容 予算額
入院医療機関等の支援 入院病床、宿泊療養施設の確保、
 自宅待機者への対応等
300億円
外来医療体制の確保 発熱等診療検査医療機関の整備、
 地域外来・検査センターの運営
1億円
検査機能の充実 PCR検査費、検査機器整備費等 7億円
相談体制の強化等 保健所体制の整備、
 ワクチン接種体制の推進
14億円
合  計 323億円

新型コロナウイルス感染症対応地方臨時交付金充当事業 (主なもの)

緊急対応型雇用創出事業 28億円
中小企業制度資金保証料補助 31億円
がんばるお店・お宿応援事業 14億円

シリーズ 憲法が輝く兵庫県政へ(20)「農業は国の生命線」兵庫県農民運動連合会事務局長 田中眞一郎

人間は生きている限り、必ず食べ続けている。来る日も来る日も食べている。
もし、食べない日が続いたならば、死んでしまう。
何を食べようか?
お金を食べることはできない。
株券も食べることはできない。
自動車も食べられない。
仮想通貨も音楽も食べることはできない。
その人間が食べることができる食糧を作っているのが農業で、海から頂くのが漁業だ。
農業が人間の営みに根付いていれば、食糧の不安はない。
しかし、我国の政府は、
お金で食べる事ができれば食糧の不安は無いと考えている。
このまま、食糧自給率が下がったとして、世界を見渡すと、食糧を生産できない国は貧しい。
コーヒー豆しか生産しない国、チョコレート原料のカカオしか生産しない国、レアメタルしか産出しない国、みな貧しい国だ。
日本は?自動車しか生産しない国に進んでいる。
ますます、貧しい国になるだろう。
一方で、先進諸国は農業を手厚く保護育成している。
アメリカは自国の農家に毎年一兆五千億円配っている。
ヨーロッパも農業が職業として成り立つように補助金を出している。
だがしかし日本では年老いた農家が年金をつぎ込んで、意地になって農業を続けている。
もう日本の農業は、自民党と公明党の政権では五年持たないと思う。
農業は努力が必ずしも結果につながらない。
台風・異常気象・獣害・地震・津波。
被害にあった田畑を前にすると、「もうだめなんじゃないか」と思ってしまう。
しかしそれでも、農民は種をまき続ける。
私ならば心が折れるような洪水被害でも、笑って田畑を耕し種をまく姿を何度も見てきた。
ダメでもダメでも、続けるのが農業だと、最近おぼろげながら分かってきた。
悪い政治がその農業をますます困難にしている。
農業は国の生命線だ。
武術などで、急所というわずかな打撃で敵を打倒できるポイントがあるが、農業は国の急所なのだ。
真面目に国を思う政治家達ならば、急所を守るはずだが、まったく守っていない。
もう、時間がない。
今年は衆議院選挙が行われる。
農業の復権に関して、最後のチャンスになるだろう。
悪い政治を行うものは落選させ、国民の生活を大切に考える人を当選させよう。
政権与党の自民党と公明党に投票しない事が「今の世の中に満足していない」意思表示で、その数が大きければ、政権交代が実現する。
国民は今の世の中・政治に満足していない。
しかし、自民党と公明党と、その支持者は満足しているのだろうか。
このような日本にしてしまって、申し訳なかった。
政策を誤ったので、元に戻します。
などの発言を、まったく聞かない。
ならば全部、思い通り大成功なのだ。
労働者の賃金が下がり続けるのも大成功。
若者の死因トップが自殺なのも大成功。
年金支給額が下がり続けて、支給開始年齢が上がるのも大成功。
経済が冷え込んでいるのに株価だけ上がって金持ちがもっと金持ちになるのも大成功。
どんなに悪い政治を行っても、国民が我慢するようになった大成功。
諸行無常、このようなインチキがいつまでも続くと思っているなら甘い。
今年、必ず終わらせて見せる。
そして国の生命線である農業を守るのだ。
農業の経済規模はGDPの一%にすぎない。
だから、農業を守る経済負担は他産業を保護育成するより安上がりなはずだ。
国の生命線を守ることを思えば、アメリカ並みに一兆円支出できる。
今年行われる衆議院選挙で、インチキ政治を終わらせて、農業を守る候補者を国会に送りたい。
そして、兵庫県においては夏に知事選挙がある。農業の振興を県の経済政策の柱にすえる県政への転換を望みたい。
農民のように、決してあきらめず政権交代の種をまき続ける事が大切だ。

(兵庫民報2021年2月28日付)




21春闘決起集会:コロナ禍のなか労働組合で元気に声あげ公正な社会へ

兵庫県春闘共闘と兵庫労連は二月十六日、神戸市内で21春闘決起集会を開催、コロナ禍のため会場とオンラインで行いました。 


成山太志兵庫労連議長が開会挨拶(写真)。コロナ感染拡大で昨年来たたかいが制約されてきた。しかし九〇年代から闘ってきた「貧困と格差」を広げる新自由主義が感染拡大には立ち向かえないことが誰の目にも明らかになってきた。理論的には破綻したが、現実に打ち破るたたかいは、これからのたたかいにかかっていると述べました。
秋山正臣全労連事務局次長がオンラインで「格差なくし、八時間働けば人間らしくくらせる公正な社会へ転換せまる21国民春闘――コロナ禍 労働組合で元気に声あげ変えよう」と講演。
コロナ危機のなかで労働組合の団結で変えてきた全国の経験を紹介。国民春闘の焦点は、「諦めない」「仲間を増やす」「労働組合に団結する」「地域に出る」こと、ひとりの「仕方ない」からみんなで「変える」とりくみに国民春闘をしていこうと呼びかけました。めざすべき社会像を賃上げ、雇用、公共体制、改憲阻止の柱で語り、格差を見えるようにし、要求で対話、選挙で憲法が生きる政治に変えることを提起、会場からの質問にも答えました。
土井直樹兵庫労連事務局長が、三月十一日に全国統一行動としてパレードを行うこと、最低賃金の生計費調査と署名運動、5・3憲法集会成功への協力など具体的行動を提起。その後、医労連、国公から決意表明。
最後に、本田信幸国労兵庫地本委員長が、JR西日本はコロナ禍のもとで初の一時帰休を実施し、決まっていた一時金を減額、さらに乗客減で駅窓口削減などをすすめていると報告。いまこそ内部留保を頑張っている労働者に還元し、企業の社会的責任を果たさせる闘いをと決意を述べて閉会の挨拶としました。

(兵庫民報2021年2月28日付)

第6回「コロナ何でも相談」:電話次つぎ80件以上

二度目の緊急事態宣言が延長されるなか、二月二十日に「コロナ災害を乗り越える いのちとくらしを守る何でも電話相談」を開催しました。
昨年の四月に新型コロナウイルスの第一波が全国に広がるなかで初めて実施して以降二カ月ごとに行い、今回で六回目となります。
電話相談には、相談員として自由法曹団、兵庫労連、兵商連、社保協、生健会から十九名が参加しました。
十時から相談受付を開始すると、すぐに電話が鳴り始め、緊急小口資金の返済や、休業支援金を申請しても受け付けてもらえない、など切実な相談が寄せられました。
その後も、ワクチン接種についての相談や会社から突然事業所の閉鎖を言われて困っているなど兵庫会場では二十時までに、これまでで最高の八十件以上の相談を受け付けました。
相談者からは、政府に対して特別定額給付金や持続化給付金の二回目の実施を望む声や制度のはざまで給付が受けられないなど制度の拡充を求める声も多くありました。
新型コロナ感染拡大が長引く中で国民の生活はギリギリの状態になっている様子が現れた相談会でした。これまでにない相談件数が表すように政府は二度目の特別定額給付金や持続化支援金の支給を行うべきです。
相談者へのアンケートでも菅政権のコロナ対策について評価しないと答える相談者が多くありました。次回は四月二十四日に七回目の相談会を実施する予定です。
〔岡崎史典=兵庫労連〕

(兵庫民報2021年2月28日付)


ジェンダーわたしの視点「決めつけられた「らしさ」で苦しまないために」日本共産党兵庫九区国政対策委員長 福原ゆかり


わたしがジェンダーへの違和感をはじめて持ったのは、小学校低学年の頃です。大晦日に父方の祖父母宅で夕食を食べる習慣がありました。準備は祖母、母が行いましたが、片づけはなぜか母だけ。祖父母も父も暖かい部屋でテレビを見て、母は暖房もない薄暗い土間で片付けをしていました。「なんでお母さんだけがいつも片付けるの?」と直接母に聞いたことがあります。母はあきらめた口調で「こういうもんなんだ」と苦笑。わたしは納得がいかず、その年から妹と一緒に母と片付けをするようになりました。
わたし自身もジェンダーの問題にぶつかりました。一番は育休期間でした。「仕事を休んで家にいるから、掃除、料理など家事はちゃんとしなければ」「夫は働いて家にお金を入れてくれているから、負担をかけてはいけない」などの、家事=女性の仕事という典型的な思考に苦しみ、「自分はできない母親だ」と自分自身を追いつめていました。
最近では、候補者になったときにジェンダーを感じました。わたしは子どもの頃から「かっこいい」にあこがれていたので、男の子の洋服を着て育ってきました。人生初のつどいでは紺のジャケットを着ていきましたが、不評に不評(笑)「地味」「リクルートスーツ」「女性は明るい色を」など、アドバイスなのでしょうが、わたしは悔しくて悔しくて。男性候補は黒でも紺でもグレーでも何も言われないのに。求められる「女性らしさ」が本当に苦痛で仕方がなかったです。
社会的・文化的につくられた性別からの解放は、多くの人が望んでいるのではないでしょうか。決めつけられた「らしさ」で苦しんでいる人がたくさんいます。ジェンダー平等社会は、個人の尊厳が尊重される社会です。利潤第一主義の自公政権では実現できません。今年の総選挙で日本共産党を含めた野党連合政権を必ず樹立し、ジェンダー平等社会を実現したいと強く思います。

(兵庫民報2021年2月28日付)

民主主義の日本めざして――「川崎・三菱大争議」100年:第八回 神戸で日本最初の「婦人政談演説会」――こどもの権利と女性の自立のために女性参政権を、セクハラ根絶を――と広がる運動背景に

田中隆夫(治安維持法国賠同盟兵庫県副会長)

大争議には、治安警察法の下で政治的に無権利であった女性たちも参加していた。
一九二一年七月十日の争議団の三万を超す大デモの後、デモを禁止された十三日直後からは、運動会、水泳大会などの名目で示威行動は続けられた。十六日には、争議団は登山遠足会と称して、朝七時から摩耶山へ七千名、再度山へ三千名の示威行動を行った。暑さと参加者の多さで落伍者も多く、救護班が組織された。友愛診療所の馬島僴医師、賀川ハル、長谷川初音ら覚醒婦人協会、看護婦会の人々である。

新婦人協会、覚醒婦人協会など発足

一方、一九一九年夏、名古屋婦人講習会と幼い女工労働実態調査での平塚らいてう、賀川豊彦、市川房枝の出会いに続き、一九一九年十一月、四千名女性参加の婦人会関西連合大会で平塚により「こどもの権利と女性の自立のために女性参政権を!」と呼びかけた新婦人協会設立発表から運動は開始された。
新婦人協会は、権力の妨害を突破し、女五百十二名、男二百三十四名が参加、女性参政権獲得運動を進めた。
神戸では、大争議の直前一九二一年春、豊彦の妻ハルらキリスト者が、①婦人の能力を自由に発達させるため男女機会均等を②男女同価値観の上で、男女差を認め協力する③家庭の社会的意義を明らかにする④婦人・母・こどもの権利擁護、利益の増進を計る――を綱領とした覚醒婦人協会を発足させた。
*
そして、大争議の翌年一九二二年、治安警察法改正を勝ち取り、女性の政談演説会への参加・発起が可能となった。

下山手キリスト教青年会館に1500名、女性が4分の1を超え、熱気あふれる

1922年(大正11年)5月11日付「神戸又新日報」

五月十日夜、新婦人協会神戸支部主催で、一九〇〇年以来日本で初めて女性が参加できる政談演説会が、神戸下山手キリスト教青年会館を会場に開かれた。
参加者は千五百席を越え、女性が四分の一を超える参加で熱気にあふれた。平塚らいてうの祝電に続き五名の女性が演壇に立った。
「二十年来、親・夫・こどもに屈従、良妻賢母の美名で社会的権利を奪われたが、治安警察法改正で、自由の世界に解放された今、一部特権階級による憲政の美徳の名の下の専制政治を甘んじず、男女平等の参政権を要求し、女も同じ国民としての生活をせねばならない」「海外へ女性が売り飛ばされる、男の貞操へ罰則がなく、夫の性病で新妻が苦しむ法律の是正を」など今で言うセクハラ根絶などを訴えた。

共同の力で集会繰り返し女性の要求を組織

ハルも、後に芦屋浜のキリスト教会を設立する長谷川初音も、新婦人協会に入り、演説会弁士となり、豊彦も賛助会員で多額の寄付をするなど協力・共同の関係で活動を進めた。
関東婦人同盟(労働農民党系列の無産女性政治団体)活動家となる山内みなが、五月十日演説会は「兵庫県の……進歩的婦人団体――キリスト教婦人矯風会、女子キリスト教青年会……、婦人覚醒会……など共催の形式でした。神戸は、最初から賀川豊彦先生が春子夫人とともに、(新婦人協会)支部長の石原良さんに協力的であって、……この演説会も賀川夫妻の協力だと直感しました」と記している。
覚醒婦人協会は、新婦人協会の力の及ばない女性労働者の中に飛び込み、女性を組織する闘いを行った。この二つの団体の共同の力が、お互いの集会を繰り返して、女性の要求を組織し、神戸が日本初の女性演説会開催の場となった理由でもある。覚醒協会は、神戸の二百六十名を含め関西で四百十名となり、全国では八百名との記載もある。
大阪での労働組合活動の経験のある加古川出身の小見山富恵が、豊彦の秘書となり、覚醒婦人協会機関誌の編集を担当、会の方針にある女性労働組合運動の促進を担った。大争議の翌年には、小見山と労働総同盟が共に組合を組織し、日暮通の東神ゴム工場の女工が二割減の給与カットに反対し、要求実現の闘いを起こしている。

(兵庫民報2021年2月28日付)

神戸製鋼さん石炭火力発電所つくらないで――裁判日記(民事訴訟第10回)「石炭火力発電所建設の余地はどこにもない」


二月十六日、神戸地裁で開かれた神戸製鋼の石炭火力発電所三号機、四号機の建設・稼働差止めを求めた民事訴訟の第十回期日は「受忍限度論」「共同不法行為論」などの専門用語が飛び交いました。
要約すると「人口密集地に大規模発電所建設は①多数の住民を、長期間にわたり継続的に有害大気汚染物質に暴露させる。②国内外政策に反して長期に大量の二酸化炭素を排出させる行為は極めて悪質な加害行為である。この結果現実に被害が迫っている。さらに子どもたちの未来も侵害する」と神戸製鋼を厳しく批判しました。
また地球温暖化は、「行為と結果の関係が遠くに見えるが、排出とそれによる被害の発生は公害と同じであり、各企業が共同不法行為を構成している」として被害から救済するためにも裁判所が役割を果すようにと迫りました。被告の神鋼、関電からはいつもと同じで何ら反論もなく、次回の期日は四月二十七日(火)午前十時三十分より神戸地裁で開かれます。

これでは市民を守れない

報告集会では一月二日神戸製鋼の一号機がNOx濃度を超過するトラブルを発生させたが、神戸市が適切な対応をしていなかったことが紹介されました。
「神戸市は一号機のトラブル発生から再稼働まで、協定に基づく立入検査、指示、事案の公表など所要の措置を講ぜず、漫然と神戸製鋼の対応を認めたと推察される。これではどのような立派?な協定書であっても監視、指導運用の実態は、極めて不適切なものである」と指摘するとともに、建設が進む三、四号機の増設に際し、日本一厳しい「協定」を締結したというのが神戸市、神戸製鋼の「売り」であるが、監視・運用システムが、こうした実態であれば「協定」は「絵に描いた餅」であり、市民の安心、安全を担保するモノにならず、市民の「不安」をより高めるものです。
〔原告 廣岡 豊(写真右端)〕

(兵庫民報2021年2月28日付)

TEAM ANCHOR(中央区青年革新懇):コロナ禍のなか取り組み1周年


TEAM ANCHOR(中央区青年革新懇)は2月14日にZoomミーティングで総会と学習会を開き27人が参加しました。学習会では上脇博之神戸学院大学教授が「ゼロから分かる、政治とカネ」と題して講演しました。
TEAM ANCHORは2020年2月1日に結成総会を開き、今総会で1周年。結成総会後から新型コロナウイルスの感染拡大のため集会などができないなか取り組んだ須磨浦公園のハイキング企画やプチ映画会などが報告されました。
学習会で上脇先生は「河井克行・案里両氏による買収事件」「桜を見る会」など政治とカネをめぐる問題を解説しました。また「桜を見る会」に後援会員を恣意的に招いたのは自民党の党員数も得票数も減った状態で選挙に勝つためには後援会をひいきして招待しなければならないからだと述べました。そして裏金や税金の私的流用を正すためは野党の得票率を上げ、政権交代が必要だと呼びかけ、次の選挙が重要だと訴えました。
〔大前雅裕=TEAM ANCHOR〕

(兵庫民報2021年2月28日付)

清水ただし「消費税減税こそが効果的支援」国会レポート8


株価がバブル期に迫る高値となっていますが、足元の実体経済はまったくそれに伴っていません。「わしゃ、大根のカブしか知らんがな」という庶民の嘆きが聞こえてきそうです。
コロナ禍のもとで、富の集中が進み、格差が拡大しています。資産千億円以上の富裕層は、総資産を約十四兆円から約二十二兆円へと増やしています。他方、企業の倒産・廃業は大幅に増加し、就業者数は七十一万人の減少、完全失業者数はこの一年間で五十万人近くも増えました。
そもそも一昨年秋に実施された消費税率の一〇%への引上げが間違いだったのです。景気は冷え込み、個人消費が低迷。重い負担に苦しむ中で、コロナ不況がやってきた。国民はまさに二重の苦しみにあえいでいるのです。
消費税は、食料品、生活必需品や光熱費など暮らしに不可欠な支出にも課税され、コロナ禍で苦境にあえぐ国民にも容赦がありません。血も涙もない「悪税」と言えるでしょう。
だからこそ、消費税減税は、新型コロナの影響を、一番深刻なカタチで受けている、所得の少ない人と、中小零細企業への「効果的支援」になるはずです。一部の人にしか恩恵がないGOTO事業などよりも、消費税率を安倍政権が引き上げる前の五%にまで戻す、緊急減税こそ景気回復の決め手です。
二月九日の衆院本会議質問では、立憲民主党の議員も、「景気が回復するまでの期間、消費税は廃止するつもりはないか」と菅総理に訴えました。
総選挙では、消費税の引き下げが野党の共通政策となるよう、努力を続けていきます。ご一緒に力をあわせましょう。
(日本共産党衆院議員)

(兵庫民報2021年2月28日付)

非核の政府を求める兵庫の会学習会:監視社会論から現代中国社会を考える


非核の政府を求める兵庫の会は二月十三日、「コロナ禍の中の現代中国社会―監視社会論からの視点」と題した市民学習会を開催しました。
講師は神戸大学大学院経済学研究科の梶谷懷教授。
*
IT技術を駆使した「国家による個人の監視と隔離」でウイルスを抑えたと言われる「幸福な監視国家・中国」。IT技術による生活の利便性の向上は新疆ウイグル自治区におけるようなむき出しの「監視による暴力」とも共存しており、テクノロジーによる「監視社会」が自明化した現代において、私利私欲の追求を基盤に成立する「市民社会」と、「公益」「公共性」の実現をどのように両立させるのかという難問に直面していると、梶谷教授は指摘しました。
また、コロナ禍で世界中が監視社会へと進みそうないま、わたしたちにとってのかけがえのない「経験」を見つめ直し、それを守り抜いていくことが必要なのではないかと述べ、自然主義的功利主義を乗り越えるための思想としてのプラグマティズムへの注目が語られました。
講演は、会場とオンラインとのハイブリッド形式で開催。中国の内実を知りたいと、質問が相次ぎました。

(兵庫民報2021年2月28日付)

『風の電話』――「喪失」から「再生」の道をたどる旅:神戸映画サークル協議会3月例会


「もし、天国にいる大切な人に自分の思いを伝える事ができたら……」。岩手県大槌町に実在する「風の電話」に触発された作品です。もちろん電話線はありません。佐々木格さんが東日本大震災直後の二〇一一年四月に完成させたものです。以後、さまざまな人々が訪れています。
監督・脚本は『M/OTHER』などで知られる諏訪敦彦。オーディションで選ばれたモトーラ世里奈を主演に、西島秀俊、西田敏行、三浦友和らが脇を固めています。第七十回ベルリン国際映画祭国際審査員特別賞受賞作品でもあります。
東日本大震災で家族を亡くし広島県に住む叔母宅に身を寄せていた高校生のハルは、喪失した家族への思いを抱えていたある日、ヒッチハイクで八年ぶりに故郷である大槌町に向かうことを決意します。事故や災害から立ち直ろうとする人々との出会い、別れ、そして共に旅をするなどの中で「風の電話」にたどりつきます。
フィクションを通して再生の道を歩みはじめるハルたちの姿を描くことだけでなく、ひとりの演者としての立場と生身の人としての過去の経験などが作品に反映するように、あえてメモ的な台本をもとに出演者たちの内から湧き出る自然な気持ちを大切にして作られた作品です。
〔岡風呂賢=神戸映サ〕


『風の電話』(2020年/日本/139分)

3月19日(金)①11時②14時③19時、20日(土)①11時②14時③18時/神戸アートビレッジセンター KAVCホール/一般(事前予約)1,300円*参加日時を3月18日までにご予約ください/☎078‐371‐8550、Email kcc1950@kobe-eisa.com、URL http://kobe-eisa.com/ ★コロナ感染状況により神戸アートビレッジセンターが休館、例会が中止になる事もあります、映画サークルの事務所への電話またはホームページでご確認ください。 

(兵庫民報2021年2月28日付)

兵庫山河の会〈二月〉



残り柿鈴なりのまま冬来る収穫なきまま落ち果てるのか
 岸本 守

コロナ禍の中でも嬉しいこのニュース地球は動く平和への道
(核兵器禁止条約発効) 
 西澤 愼

七度の干支のめぐりの年賀状構想をねる宿雨ききつつ
 石井敏子

待つことに苛立ちし日は遠く去りのんびり生きる術を覚えぬ
 古谷さだよ

雪つもりラジオ体操遠のくが心とからだ焦らずあわてず
 加藤やゑ子

複製のゴッホの名画に掛け替えて明るき部屋で新年祝う
 鵜尾和代

怒り方母に似てきし我なると義父に似てきし夫が言うなり
 山下洋美

友が来てぽつりぽつりと語り合うコロナの向こうに沃野はあるか
 大中 肇

坂上の白雲めざし駆け上がれ青春の夢わするるなかれ
 山下 勇

コロナ禍で卒寿の義母が転倒すケアマネからの早口電話
 新井 幸

ホトケノザ春こじ開けて畦道のあちらこちらに小さな紅が
 塩谷凉子

(兵庫民報2021年2月28日付)



瀬戸恵子「ひなたぽっころりん」〈677〉

 


観感楽学「ホーモンとホートー」


訪問とは人をおとずれること、たずねること、と国語辞典にある。わざわざ辞書を引くまでもないのだが、与党議員が緊急事態宣言の深夜、銀座のクラブなどに出入りしていたニュースの新聞表現に引っかかったのだ。他は調べていないが毎日と日経は「深夜に銀座のクラブを訪問した問題」と説明したのである(背景色は筆者)▼あれっと思い漢和辞典や他の資料も訪問した。この言葉は紀元前八~五世紀を記述する中国の歴史書『春秋佐氏伝』にすでに出てくる。春秋時代の代表的な政治家である子産が隣国の王を見舞ったとき、君子がとるべき仕事を怠っているからと病因を解明した▼「君子には四つの時がある。朝は政治のことを聴き、昼は色んなことを人にたずね(訪問)、夕べには行うべき命令をととのえ、夜は身を休めること」やはり訪問は昼間なのだ。古代中国に行くまでもない。夏目漱石は『吾輩は猫である』でこう言っている。「(吾輩が)隣家の三毛を訪問するときの通路となっている」これは猫の行動なのでユーモアがよく効いている▼自公議員の行動はホーモンでなくホートーである。せめて、営業状態について事情聴取のために行ったという彼らの愚にもつかない言い訳を引用して「訪問」と括弧付きでやれば当方もニヤリとできるのに。(T) 

(兵庫民報2021年2月28日付)


編註:『春秋左氏伝』からの引用は昭公元年「晉侯有疾……」の段落にあります。原文は次のとおり。
君子有四時,朝以聽政,晝以訪問,夕以脩令,夜以安身,

吾輩は猫である』は青空文庫でも読めます。引用箇所は、「一」の5段落目にあります。