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2021年1月24日日曜日

どんな事態でも対応できる運動へ:阪神・淡路大震災救援・復興兵庫県民会議がメモリアル集会


阪神・淡路大震災救援・復興兵庫県民会議は一月十七日、「阪神・淡路大震災二十六年メモリアル集会」を開催。新型コロナウイルス感染拡大の緊急事態宣言が出されたもと、ウェブ開催とし、神戸市勤労会館から放映しました。
復興県民会議からの報告で畦布和隆代表委員(写真上)は、災害復興住宅での孤独死が昨年も七十一人、被災後二十五年経っても誰にも看取られず命を終える被災者がいることをあげ、復興県民会議の運動を終えるわけにはいかないと強調。コロナなどどんな事態でも対応できる運動形態をつくっておかなければならないと提起しました。
ふくしま復興共同センターの斎藤富春代表委員が福島県からリモート出演して「東日本から十年 今、福島で起こっていること」を報告しました。
借り上げ住宅協議会の段野太一運営委員が、県営住宅では希望者ほぼ全員の継続入居が実現、西宮市営住宅でも四世帯について和解が成立したことを報告し、追い出しに固執する神戸市とのたたかいに全力を挙げると述べました。
「コロナ禍における災害と人権」と題して記念講演した弁護士の津久井進さんは、①「災害」の知恵をコロナ禍に生かす②『差別』と闘う「法」の実態を知り法の垣根を越えた「知」を備える③一人ひとりを大事にする(すべてに共通)―の三つの基本的視点を提起しました。

(兵庫民報2021年1月24日付)

こくた恵二「1・17を忘れるな」連載エッセイ7


阪神・淡路大震災から二十六年を迎えます。「1・17を忘れるな」、ありきたりの言葉かもしれません。あらためて心に刻みたいと思うのです。震災当日、故寺前巌衆院議員と西宮、芦屋、神戸と現地入りし、惨状を目の当たりにしました。
家屋は壊れ、家族を失った日、避難所、仮設住宅の暮らし、思い起こしましょう。
「生きるために、命がけで闘った」日々。官邸前で「俺を殺してくれ」とまで叫んで被災者支援を訴えた人々の姿がいまも目に焼き付いています。
災害にあった国民を救い助け元の暮らしに戻すのが国の仕事です。だから私は、「国として被災者の生活再建への個人補償制度」を国会で初めて提起しました。
「この国は人間の国か」と、作家の故小田実さんや兵庫の多くの方々と「市民と国会議員で法律をつくる」運動をともにしたことは誇りです。
今年は東日本大震災から十年の節目です。被災者支援の縮小すら計画され、兵庫の各地では被災者の住宅追い出しが行われています。許せません。「もとの姿にもどそう」(復興の歌「しあわせ運べるように」より)と、掲げ続けましょう。
政治の要諦は、国民のいのちと安全、暮らしを守ることにあります。いまこそ、憲法第十三条の「幸福追求権」、憲法第二十五条の「生存権」が真に保障される新しい政治の実現へ足を踏み出そうではありませんか。
「生きるために命がけで闘った」の原点に立ち返って、「明日は必ず来る」と希望を語り、市民と野党の共闘の前進、「オール野党」による野党連合政権の実現へ全力を尽くします。
(日本共産党衆院議員・写真は2020年のメモリアル集会での挨拶)

(兵庫民報2021年1月24日付)

日本共産党兵庫県女性後援会とこむらさんら女性宣伝:政治を変えましょう


日本共産党兵庫県女性後援会は一月十六日、元町大丸前で女性宣伝を行いました。
今井まさこ神戸市議が神戸市の感染状況と「市民の声を集めて度々要請を行ってきて、少しづつ政治を変えてきたこと、引き続き頑張る」との訴えのあと、こむら潤近畿ブロック比例・小選挙区八区予定候補が訴えました。
こむら潤候補は「コロナ禍での後手後手の対策しかできない菅政権によって、人災としかいいようがない感染の広がりをつくり、緊急事態宣言を発出しなければならなくなった」と厳しく批判。日本共産党の提案である「医療機関への減収補填と特別手当」「PCRの社会的検査を行い、無症状の感染症患者を早く見つけて隔離することが必要」と強調。また「新しい政治をつくる五つの提案」を紹介し、「秋までにはある総選挙で日本共産党を躍進させていただき、政治を変えようではありませんか」と強く訴えました。
緊急事態宣言が出された中でしたが、遠くからじっと聞いてくれたり、前を通りながら手を振ってくれる青年や女性・中年の男性など、大きな反応がありました。

(兵庫民報2021年1月24日付)

日本共産党淡路地区委員会と後援会:衆院選・中間選挙での躍進へ新春のつどい


日本共産党淡路地区委員会と同後援会は「二〇二一年新春のつどい」を一月十六日、洲本市総合福祉会館で、感染症対策を行った上で開催しました。
近藤あきふみ洲本市議の司会で、大山善民党地区委員長が主催者を代表して挨拶した後、来賓として雨松康之・淡路革新懇代表世話人が、人口減が進む淡路島で、市民と野党の共闘が進めば、淡路島の未来が大きく変わると述べ、党躍進に期待を寄せました。
続いて、岡田のりお淡路市議予定候補が決意を表明し、かまづか聡淡路市議、えびす智彦南あわじ市議、まもり和生洲本市議が各市を代表して挨拶。総選挙と中間選挙への支援を訴えました。
福原ゆかり衆院兵庫九区予定候補は、自公政権のもと新型コロナ感染が止まらず入院させるかどうかの「命の選択をしないでほしい」と述べるとともに、若い人が政治に不満をいだき党の政策に耳を傾けている中で、政策を訴え日本社会をよくしていくチャンスだとして、日本共産党と福原さん自身への支援を呼びかけました。
吉田よし子南あわじ市議が、こむら潤衆院近畿比例予定候補を紹介。こむらさんは、昨年を振り返り菅政権は冷たく強権政治だったが、少人数学級が進み、核兵器禁止条約が発効することになったと語りました。
また、こむらさんは、今年はコロナを乗り越える年にしたいと述べ、ジェンダー平等社会など、総選挙にむけた「新しい日本をつくる五つの提案」について紹介しました。また緊急事態宣言のもとで「自粛と補償はセットで」と語り、医療現場への十分な補塡や、消費税五%減税の実現など「命とくらし最優先で頑張る」と決意を述べました。
こむらさんは、総選挙がいつになっても全速力で頑張ると語り、近畿で比例四議席、女性議員の誕生へ参加者に支援を訴えました。
後援会員から福原、こむら両予定候補に花束が贈られた後、衆院選と中間選挙の候補者、市議会議員が正面に並び、参加者から激励を受けました。
最後に片岡ただし洲本市議が閉会の挨拶を行いました。

(兵庫民報2021年1月24日付)

淡路市議選にかまづか、岡田両氏


日本共産党淡路地区委員会は淡路市議選(定数十八)の候補者を発表しました。 

かまづか聡(42)=現=京都文教大学人間学部卒。市議三期。議会運営委員会副委員長。産業厚生常任委員。広報公聴調査特別委員。淡路島平和委員会役員。 (写真左)

岡田のりお(59)=新=近畿大学理工学部卒。中外テクノス㈱勤務、日本民主青年同盟西・中神戸地区委員長、日本共産党淡路地区委員長を経て、現在同副委員長。育波小PTA会長、育波里町内会役員を歴任。党市地域くらし対策部長。 (写真右)

(兵庫民報2021年1月24日付)

日本共産党西宮市委員会として市民要求まとめ市に要請


日本共産党西宮市委員会は一月十四日、西宮市に対し①高すぎる国民健康保険料の引き下げ②高齢者交通助成制度の継続と拡充③性急なゴミ指定袋制の導入の再検討―など三項目について要請しました。
昨年十月から党西宮市委員会の再開を準備し、その中で自治体への要望を検討してきました。国民健康保険料の引き下げや、七十歳以上の高齢者に給付されている五千円分の交通助成制度(バスや電車、タクシーも利用可)が二〇二〇年度で打ち切られる問題、指定ごみ袋導入のための条例案が三月議会に上程されることなどから、市委員会として要望を取りまとめ、提出することになったものです。
当日は市委員会から東昇委員長ら三人が市役所を訪れ、健康福祉局長、市民局長、環境局長が応対しました。東委員長が要請の趣旨説明し、そのあと約一時間の懇談を行いました。
国保については国の攻撃が増す中で、多人数世帯ほど保険料が高くなる問題の解消を訴え。高齢者交通助成では、芦屋や尼崎ではバスが半額になることに比べ、西宮はあまりにも制度が貧弱であり制度の拡充をと要望しました。また、ごみ問題では減量化は市民も同感だが、もっと減量化の徹底を図ることが先であり、指定袋制度を性急に進めないよう強く要請しました。
懇談の中で、特に国保については、多人数世帯の保険料の在り方について前向きな話もありました。なお、文書による回答を求めています。〔上田幸子〕

(兵庫民報2021年1月24日付)

シリーズ 憲法が輝く兵庫県政へ(15)「SDGs・ジェンダー平等を」新日本婦人の会兵庫県本部事務局長 桜井文子

いま、世界で「女性がカギ」と、「ジェンダー平等」が主流となっています。
創立五十八年の新婦人「五つの目的」は、「ジェンダー平等」実現そのものです。いま、兵庫県下では、支部、班が「ジェンダーカフェ」や「ジェンダーかるた」でおしゃべり、「ジェンダー平等」実現へのとりくみを広げています。

支部や班、地域から声を上げて実現

新婦人は、「コロナ前より、良い社会にしよう!」と、支部や班、地域から、声を上げることを強めてきました。
この間、「困ったことアンケート」や「緊急学校アンケート」「働く女性たちのアンケート」にとりくみ、PCR検査・医療体制の拡充、医療・介護従事者への支援、子どもの命最優先と学習権の保障・少人数学級実現、DV問題、非正規やシングルマザーも含め、ジェンダー視点に立った対策などを兵庫県や市町に百回以上も要請をしてきました。
直近では、姫路支部が若い世代と一緒に、市と懇談して、「全子育て世代に二万円給付」や、「新生児臨時特別給付金」が実現しました。たつの支部は、市長に直接交渉して、卒業アルバム代が就学援助に追加されることに。また、(神戸)北支部は「図書館の本の返却ポストを駅に設置」することを実現、宝塚支部の請願(共同)「少人数学級求める意見書」が、全会一致で採択されるなど、自治体を動かしています。
全国の運動で昨年十二月には、政府は公立小学校全学年に三十五人以下学級を導入すると決定、四十年ぶりに大きな風穴を開けました。長年の不断の努力で署名運動にとりくみ、ついに「国連核兵器禁止条約」が発効される大きな喜びとともに、「声を上げれば変えることができる!」と、女性たちの強い確信になっています。

兵庫県のジェンダー平等度は

日本はジェンダー平等度が世界百二十一位と下落し続けています。女性たちの合言葉は、「女性の権利を国際水準に!」です。
兵庫県では『ひょうごの 男女共同参画』二〇二〇年度版によれば、県議会の女性議員は十三人=一五%(二〇年度)、民間企業等の管理職は一五%(一七年度)、所定内給与額の男女賃金格差は男性一〇〇に対し女性七六・二(一九年度)、女性の就業率は四五・二%で全国四十五位(一五年度)です。
女性県職員は、非正規が正規を上回っています。「働きたくても保育所がない」「女性の活躍する場がない」など、女性の意思決定の場が奪われたままになっています。議会傍聴に行くと、県の女性管理職の姿は一人、もしくはごく僅かです。これでは女性たちの声は県政に反映されません。
また、大きな問題の一つとして、県の「男女共同参画課」が、いつの間にか、「企画県民部女性青少年局男女家庭課」に名称が変更にされていることです。DV問題も、「児童課」が対応するといったジェンダー平等政策が歪められています。
県本部は十一月、男女家庭課と懇談をして、部署をきちんと、「男女共同参画課」にしてとりくむこと、コロナ禍、女性支援策を強めること、県の次期計画中の「男女共同参画基本法」には、SDGsを大きく据えた政策にすることなど、申し入れました。

選択的夫婦別姓をの請願に自民・維新が反対

「夫婦同姓強制は世界で日本だけ」「選択する自由がないのはおかしい」と、「選択的夫婦別姓・民法改正を」の世論と運動が高まる中、県・支部は、ねばり強く署名や議会請願にとりくみ、県下でも、自治体での採択が広がり始めています。
昨年の三月議会には、県本部、十二支部が請願提出、川西支部は、、自民も賛成して採択となりました。西宮では、共産、公明、無所属三人の女性市議の賛成で採択され、現在、四自治体(明石、川西、西宮、伊丹)で議会採択されています。
県議会でも、昨年三月には県本部の請願が常任委員会で採択されましたが、なんと本会議で自民党が「家族の在り方に関わる」と強固に反対し、一票差で逆転・不採択となりました。同年十二月には再度、請願を提出し、八十六人の全県議へお手紙を県、支部から届けました。採択で共産党、県民連合、公明党が三月議会に続き賛成。ところが三月に賛成していた維新が、「夫婦別姓が男女平等に反するというのは、こじつけである」ととんでもない方向転換。自民・維新の反対で否決されてしまいました。「国連女性差別委員会も、『同姓強制は条約違反』と、強く勧告しているのに!」と、女性たちは怒りでいっぱいです。

選挙で変えたい

日本のジェンダー施策の遅れは今、コロナ禍で、あらゆる女性たちに直撃し、非正規労働者の失職や女性の自殺が急増など、国・自治体の脆弱さを浮き彫りにしています。
「ひとりの人間として、尊重される」社会実現に、これまでの理不尽な法や制度を、変えていかなければならないと考えます。女性の社会的参加が保障され、あらゆる場で政策決定や決定権を持つことで、県政も大きく変わると思います。今年はいよいよ知事選挙です。選挙で、女性・県民のいのち最優先の県政、ジェンダー平等の県政に変えたいと思います。

(兵庫民報2021年1月24日付)



ジェンダーわたしの視点「未来社会を準備する時代に生きて」日本共産党兵庫二区国政対策委員長 宮野つるお


ジェンダーについて自分のこれまでの人生を振り返ってみると、生まれ育った鹿児島県の甑島(『Dr.コトー診療所』のモデル)では、風呂に入るのは男が先などと教えられました。教えるのはほぼ母親でした。
女性はか弱いものと教えられてきましたが、高校の女子バレーで試合中に肩を脱臼したセッターが手当をしてもらい、その手を添えてほぼ片手でトスをあげているのをみて、初めて出会った強い女性に驚きました。
大学時代の県立女子短大生との合同セミナーで、「男らしさ女らしさとは」などのテーマで討論したことがありました。討論の到達は、男らしさ女らしさという前に人間らしさを追求することで、男は男らしく、女は女らしくなっていくのではないだろうか、ということで納得。話し合うことの素晴らしさを学びました。
ドラマ『三年B組金八先生』では、性別違和について知りました。民医連では、分け隔てなく一人ひとりの人権を守ることの大切さを学びました。
日本共産党としては、ジェンダー平等を求めるさまざまな取り組みに参加してまず聞くこと、そして学ぶこと、そして願いを一緒に実現していくことと、戦前・戦後、一貫して女性解放のためにたたかってきたわが党の先駆的歴史に誇りを持ちつつ、またジェンダー平等をかかげて奮闘してきた多くの女性団体の先駆的取り組みに敬意をもちつつ、学び、自己変革する努力が必要だということです。
エンゲルスは真の両性の平等について、金銭ないしその他の社会的な権力手段で女性の肌身提供を買いとる状況に一度もあったことのない男性たちと、真の愛以外の何らかの顧慮から男性に身をまかせたり、あるいは経済的結果をおそれて恋人に身をまかせるのをこばんだりする状況に一度も出会ったことのない女性たちの一世代が成長してきたときに決定されるであろうと『家族・私有財産・国家の起源』で書いています。
未来社会を準備する時代を生きていることに誇りを持って、世界の進んだ点にも目を向けて日々励んでいきたいと思います。

(兵庫民報2021年1月24日付)

民主主義の日本めざして――「川崎・三菱大争議」100年:第三回 第一次世界大戦と大正デモクラシー:労働者、民衆が歴史の舞台に・自由と平等を求めて


吉川圭太(神戸大学大学院人文学研究科)

第一次世界大戦(一九一四~一八年)は、慢性不況で行き詰まっていた日本経済に好景気をもたらした。輸出ブームによって造船・鉄鋼などの重工業が活況を呈し、農村から都市への人口流入を加速、重工業大経営を中心に工場労働者が急増する。この労働者の量的な増大が近代的労働運動の基盤を準備した。川崎造船の労働者数は一九一三年の一万人余りから一九一九年には二万人、三菱神戸造船も五千人から一万人へ二倍となった。当時の労働市場は労働者の企業間移動が激しく、また神戸の場合、実業補習学校を通して各工場の労働者が交流し、神戸製鋼所・川崎造船・三菱神戸造船などに友愛会(労働者の親睦修養団体として一九一二年創立)の支部が確立され、神戸は関西労働運動の拠点となっていく。
大戦景気のなか労働者の賃金は上昇したが、物価・米価の高騰がそれを上まわり、人々の生活は逼迫した。貿易や造船で利益を得た富裕層(成金)と反面で生活難に苦しむ人々との格差が拡大し、賃上げを求める労働争議が急増、一九一八年には米騒動が全国に広がる。
一方、一九一〇年代から二〇年代にかけては、大正デモクラシーと呼ばれる政治や社会・文化の各方面にわたる民主主義的傾向が広がった。天皇制のもとで民衆本位の政治を実現することを説いた吉野作造の「民本主義」が代表的だが、米騒動後、そうした主張は人々の政治的自覚の高まりを背景として社会的に広がる。既存の政治体制や旧秩序に対して、それまで抑圧・差別されてきた労働者・農民をはじめとする多様な人々が、市民的・政治的自由と社会的平等を求めて運動に立ち上がった。学生・知識人の多くもロシア革命や米騒動のなかに「民衆」の力を感じ取り、「解放」「社会改造」を掲げて社会運動へ参画した。
労働者も資本家や社会に対して「人格を承認せよ」と訴え、待遇改善や職長(職場監督)の公選など「工場立憲」を求めて運動を起こした。関西の一労働者は「我等の労働運動は決して単純なる金銭問題」のみならず、中心要求は「人間解放であり、人間平等の容認」であり、「奴隷的屈辱的地位を逃れんとする」のだと訴えた(『労働者新聞』十二号、一九一九年六月十五日)。
労働者の差別的境遇の現実とそれに対する強い憤りが当時の運動の根底にあり、デモクラシー思想や社会主義思想と結びついていった。この「人間解放」や「人格承認」の声は、地主支配下にある農村の青年にも波及し、農民運動の前進にきっかけを与えたほか、一九二〇年代にかけて女性や被差別部落の人々の自立と解放の運動を促していくこととなる。

写真:一九二一年七月川崎・三菱争議応援にかけつけ、神戸駅前で労働者を激励する、吉野作造(左から二人目)と友愛会の鈴木文治(中央)ら(『労働争議示威行動 写真絵葉書』川崎三菱大争議五十周年記念実行委員会、一九七一年復刻から)

(兵庫民報2021年1月24日付)

第64回兵庫県母親大会:コロナ禍のなか連帯し


緊急事態宣言が近畿でも出されるというような緊迫した中、昨年五月から延期していた第六十四回兵庫県母親大会を一月十一日、西宮市のアミティホールで開催しました。
座席の半数には×印を張り、入場は一方通行、入り口の赤外線カメラで体温を確認、消毒スプレーで手指の消毒、全員マスク着用という一年前には想像もしなかった感染対策をしながらの大会でした。
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午前中は四つの見学分科会のみを実施。「宮水をめぐる西宮の生い立ち」「アンネから平和のバトン」「見て、触れて、感じる手塚治虫の世界」「『火垂るの墓』記念碑を訪ねて」という平和につながるテーマで、西宮・宝塚の身近なスポットを訪ねました。
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午後からは全体会。数々の賞を取っている西宮サクランボ合唱団、女声コーラスこぶしの皆さんの合唱で幕を開けました。引き続く運動交流では「コロナ時代を子どもと生きる」「高塚地域での日本初の『まちづくり権』裁判」「済生会病院の存続・充実を求める運動」が報告され、「様子がよくわかった」「運動の広がりにびっくり」など共感の声が広がりました。
記念講演は、東京新聞社会部記者の望月衣塑子さん(写真上)。「記者の目から見た政治とマスメディア」をテーマに、報道されていることだけでなく、自らの取材活動を通して政治の中心とその裏側で見聞きしたことを、真実以外に忖度しない強い態度で、二時間近くにわたり語りました。絶えず手でパワーポイントを指しながら、時には政治家の声色も交えて、政府のコロナ対策から「年越し大人食堂」・技能実習生の実態、「桜を見る会」、森友学園問題と話題は途切れません。日本学術会議の任命拒否が憲法違反だとの多くの声も紹介しました。 
参加者からは「コロナでつらい日々、パワーをもらった」「メディアや政党への激励・抗議を気軽にしてみようと思った」「私たちは微力だけれど無力ではないと言っておられたことが、胸に落ちました」など感動と感謝の感想が寄せられました。
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全体会で大会アピールと特別決議「日本政府に原水爆禁止条約を批准させましょう」を採択した後、恒例の「母親行進」に代え、JR西宮駅頭で横断幕やプラカードを掲げて三十分間のスタンディングを行いました。
〔中村治子=兵庫県母親大会連絡会〕

(兵庫民報2021年1月24日付)

「福島原発事故から10年~福島からの報告~」学習会:芦屋からも声を上げて行こう


原発をなくそう芦屋連絡会事務局長 池上義三 

一月十六日、コロナ対策に配慮しながら、いわき市在住の伊東達也さん(原発問題住民運動センター代表、いわき市民訴訟団長)から学ぶ場を原発をなくそう芦屋連絡会の主催で作った。多くの事を学んだが、特に心に残っていることを報告したい。 

阪神・淡路大震災と福島原発事故

大震災後、国は、地震対策を強め、福島沖でも大地震が起こり、大きな津波発生の可能性があることを専門会議でまとめていた。昨年九月三十日、仙台高裁の裁判官は、これを引用し、政府、東電は事故の予見性を知り得ており、対策を講じていれば、事故を回避できたと国を断罪する判決を下した。阪神・淡路大震災が福島とつながっていることを始めて認識した。

東電は地域住民を巧みに取り込み

講師は、事故前からチェルノブイリ、スリーマイル島原発事故現場を視察し、原発反対の運動を粘り強く取り組んできた。何故、多数派にならなかったのか。東電が農閑期に原発作業員として地元の人を雇う、公民館行事や伝統行事へ賛助金を出す、小さな酒屋、店舗から品物を買う等によって地域住民を巻き込む、これに加えて、中学校教育で安全神話の「学習」を行い、優秀作文は校区の全戸へ配布する。反対する人は共同体の変わり者とする同調圧力で東電は地域住民を取り込んだ。

汚染水問題・市民訴訟に幅広い参加

汚染水問題では、漁業、林業等幅広い団体・個人が声を上げている。
いわき市民訴訟には、当時ゼロ歳児だった未成年者二百五十余も原告となっている。

国民世論は3・11前には戻らない

会場から「何故、政府・財界は原発にしがみつくのか」の質問が出された。講師は、核兵器の原料となるプルトニウムが原発から作り出されるメリットを上げ、核兵器廃絶の闘いの重要性を指摘された。加えて、今直ぐできることは、新電力に切り替え、東電、関電の経営の足元を崩すこと。様々な逆流があるが、国民の原発に対する意識は六、七割が反対・懐疑的であり、粘り強く取り組むこと、また脱原発の政権を作ることも強調された。

原発事故は故郷が無くなること

福島では、未だに六~七万人帰郷していない。避難指示が解除された区域の居住率は三〇%であり、高齢者が多い。政府は、故郷を元に戻すのではなく、国際研究産業都市(廃炉産業、ロボット等)の街へ変えようとしている。日本海にある関電の原発が事故を起こせば、この芦屋も福島と同じ運命を改めて認識した。なお、講師は事故原発の対応について、デブリ(溶けた原発燃料)の取り出しは、困難で、チェルノブイリ原発と同じく、事故原発をすっぽり覆う、「棺桶型」になると話された。
さいごに、いとうまい芦屋市長から学習会へ激励メッセージを頂いたことに感謝したい。

(兵庫民報2021年1月24日付)

寒さの中、電力は大丈夫?

1月8日はまさに厳冬、ふるえあがりました。関西電力エリアでは、午前8時台から急増し午前10時には2596万kWの使用電力のピークとなりました。でもこの時、供給力は2681万kWに増強でき切り抜けました。電力供給に対する総需要の割合を示す電力の使用率は99%でした。その後、電力会社のCMは「綱渡り」だと節電をよびかけ、政府も呼応し「原発再稼働」も強調しています。
関電エリアの冬ピークは、福島事故前の2010年は気温3度で2600万kW台が普通でした。それが省エネ・節電で2015年には同気温で2200万kWまで落ち込みました。気温8~10度になると2000万kWを割り込む位に需要は低下していたのです。
今回の逼迫は大型火力発電所のLNG(液化天然ガス)調達不足、各電力の発電所トラブル続きで出力が維持できていない―など経営側の要因も指摘されています。
寒波と天候悪化で太陽光発電がゼロに近い点もあります。しかし、全国に責任を持つ"電力広域的運営推進機関"がもっと電力間の融通量を増大させるとか、大容量の揚水発電所(オフピーク時の水をくみ上げる)を駆使するなら、停電なしの供給は維持可能です。なお1月17日から大飯原発4号機(118万kW)が発電を再開しますが、関電はこの間に水力・火力発電所のメンテに全力あげるべきです。
〔速水二郎=電力兵庫の会〕

(兵庫民報2021年1月24日付)


ノーモアヒバクシャ近畿訴訟・傍聴記:一人の被爆者の、慢性肝炎では放射線起因性を認めるが糖尿病については認めない?:大阪高裁がTさんの訴え退ける

副島圀義

一月十四日、大阪高裁は、Tさんの訴えを退け一審の不当判決を維持。慢性肝炎については放射線起因性をいちおう認めるが要医療性を否認、糖尿病については放射線起因性自体を否認しました。
「全身に浴びた放射線が、身体機能に様々な影響をもたらして、いろいろな病気をひき起こした…。」
そんなことは、ヒロシマ・ナガサキについて多少とも知っていれば、当たり前のことではないでしょうか?「あれこれの病気をバラバラに議論するなよ」と言いたくなりました。
そもそも、放射線被ばくと病気の因果関係、発病のメカニズムがどこまで医学的に解明されたのでしょうか?
(福島原発事故と小児甲状腺がんのように、客観的データが=広島・長崎より=たくさんある場合でも、研究者によって意見が分かれるくらいです)

「被爆者援護法」前文はこううたっています。
「国の責任において、原子爆弾の投下の結果として生じた放射能に起因する健康被害が他の戦争被害とは異なる特殊の被害であることにかんがみ、高齢化の進行している被爆者に対する保健、医療及び福祉にわたる総合的な援護対策を講じ、あわせて、国として原子爆弾による死没者の尊い犠牲を銘記するため、この法律を制定する」。

「他の戦争被害とは異なる」といって空襲被害者などへの援護をしないできたことも大問題ですが、国は「国の責任において総合的な援護対策を講じる」姿勢を失っています。
医療や福祉を削るだけ削ってきたのと同じ姿勢で被爆者の訴えに難くせをつけます。
いつ病状が悪化しても的確に対応するための当然の医療行為なのに「経過観察は医療に当たらない」といいます。
そのような国の態度、それに忖度した最高裁、それらに追随した判決だと思いました。

ノーモアヒバクシャ近畿訴訟のほとんどすべてを傍聴され、「こんな積極的な原告さんはおられない」と弁護士さんが舌をまくようなTさん。この日の報告集会でも、「これでたたかいが終わるわけではない」と決意を述べておられました。
時あたかも「ヒバクシャへの援護義務」も明記した核兵器禁止条約発効の一週間前でした。

(兵庫民報2021年1月24日付)



亀井洋示「お門違い」


(兵庫民報2021年1月24日付)

観感楽学


米軍輸送機オスプレイが兵庫県の上空を飛びまわっているらしい。大阪空港への緊急着陸事件(二〇一九年四月)では、兵庫県上空を飛んで来たと考えられた。氷ノ山(新温泉町)で目撃され、三田市(一九年三月)、加古川市(二〇年二月)などでも機影が写真に撮られ、本紙に掲載された▼「滋賀民報」も大津市など上空を何度も飛行する様子をウェブサイト「レーダーボックス」をもとに報道した(二〇年十月)。その航跡をたどると兵庫県上空も飛行していたと思われる▼オスプレイだけでなく米軍用機の飛行も激増しているらしい。昨年末の一カ月余だけで兵庫県境の若桜町八件、八頭町十件、全県で四十一件の目撃情報が寄せられている。鳥取県は実態を把握するため、県内全市町村に報告を求めたとNHKが報道した(二〇年十二月二十三日)▼隣県での飛行が兵庫県を避けているとは考えにくい。兵庫県はオスプレイの飛行情報等を防衛省近畿中部防衛局からの情報提供でホームページに掲載している。それは横田と岩国を離着陸したとだけで肝心の飛行路は「米軍の運用上の問題」として不問にされている▼米軍機低空飛行訓練ルートを持つ兵庫県が、米軍機の飛行実態を自ら調査しないで県民の安全を守ることができるのか厳しく問われている。(K)


(兵庫民報2021年1月24日付)