ジェンダー平等社会をめざして、あかたちかこさん(思春期アドバイザー・京都精華大学非常勤講師)と、こむら潤さん(日本共産党兵庫県委員会ジェンダー平等委員会責任者)がオンラインで語り合いました。
性別問わず、みんなでやって、みんなが、ほっとできるもの
こむら 明けましておめでとうございます。あかた おめでとうございます。
こむら 昨年秋、伊丹での学習会「ジェンダーを学ぶ」の講演で「誰もしんどくない社会がジェンダー平等社会だ」と語られたのが、なるほどね~と胸に落ちました。
男性の参加は少なかったんですが、講師として手応えはどうでしたか?
あかた ジェンダー平等に関しては、「みんなでやるもんや」ということが伝わったらOK。
「男女平等」とか「女性差別」と言っていたころは、「女が頑張るもん」やったけど、ジェンダー平等になったら、「やっと男も救われる時代が来た」と男の人が理解して、ほっとした顔をして帰らはったら成功!
こむら 女性の権利を掲げたこれまでの運動との違いも話していただいて、ジェンダー問題は広い問題だと感じました。
あかた これまでは、メディアでのフェミニズムの扱いがすごく悪くて、「フェミニズム=怒っているおばさん」という感じになってるけど、ジェンダー平等は、「みんながほっとできる」「みんなが楽しくなる」ものだと、みんなに知って欲しいな。
こむら 気負わず、怖がらずということですね。
あかた そうそう。
こむら 「みんなで話すことが大事」とおっしゃっていましたね。
あかた ジェンダー観は、性別、年代、育った地域、所属しているコミュニティなどによって、みんな違うから、めっちゃ面白い。みんなで語り合うことをちゃんとやることで、組織に磨きをかけることにもなる、民主制を担保することにもなるから、ジェンダー平等は「おいしい」んです。
こむら みんなでわいわいジェンダーについて語り合うことと、民主的にものごとを進めることがリンクするんですね。
共産党はジェンダー平等をやるのに向いてます
あかた リンクするから、私は共産党に期待してます。共産党はジェンダー平等をやるのに向いてます。こむら 共産党の「いまこそジェンダー平等社会を」というポスター(二〇一九年五月発表)を見たとき衝撃を受けたとおっしゃっていたんですけど……
あかた 「へ? ジェンダー?」って。学術書にしか出てこなかった専門用語が街角に張られているという驚きでした。先駆的だし、組織が試されるようなスローガン。「やっぱ、(共産党は)進んでるよな」というのと「すごい、自己改革の党や」って感じ。
自己改革なしにジェンダー平等は絶対無理やから。「勇気あるな」という言い方もできるし、「よう、そんなこと言うたな」という感じでしたね。
さらに、「これ、どうやって広めていくつもりなん?」とも。
こむら みんながこれを見て分かってくれるかな?と。
あかた そう言ってたら、自分が広める人になっていた。共産党がジェンダー平等だと言い出した。共産党の人はおおぜいいるから、ジェンダー平等について勉強したいと思ってくれてる人がいっぱいいる。これは、ジェンダーという考え方を広めるチャンスや――と思って、共産党関係のところでジェンダーの話をしてくださいと言われたら「やります!」と応えています。
こむら ありがとうございます。日本共産党は二〇二〇年一月の党大会で綱領を一部改定して、「現在、日本社会が必要とする民主的改革の主要な内容」の一つに「ジェンダー平等社会をつくる」「性的指向と性自認を理由とする差別をなくす」を明記しました。
過去の見解を正し、謝った――かっこいい
こむら その討論の結語で志位和夫委員長が、同性愛についての過去の党の見解が間違っていたとはっきりと述べたとき、私も代議員として参加していたんですが、うるっとしてしまいました。
ジェンダー平等が党の綱領にやっと置かれたことは、女性分野で活動してきた女性の代議員にしてみたらうれしかったし、党が自分自身の誤りを認め、改めていくことをみんなの前で宣言したことは、かっこいいなと思いました。
あかた 私も友達の党員からそれを聞いてびっくりしました。
そもそも「そんなひどいことを言ってたん? 大丈夫?」というのと、大失敗やったことが後からわかったら、それを謝れる党だということに。そんなかっこいいことできるのん? 共産党自体が新しい時代になったんやなと。私もそこを読んで泣きました。
こむら ほんとに、ぼわっと涙が。
あかた 人って矛盾したものだから、理論が当てはまらないからといって排除しない、その人たちもいっしょに連れて先へ進む努力をこれからも真摯にやってほしい。昔の非合法の時代からずっと今まで人に寄り添ってきた政党ということは誇りにすべきやし、そこはずらすべきじゃないよね。
めっちゃかっこいい。いけてるよ、共産党。
こむら ありがとうございます。
自分ごととして語ることが大事ですね
こむら 兵庫民報読者のみなさんがジェンダー平等をどう語っていくのか、ポイントや話の糸口についてアドバイスをいただけないでしょうか。あかた みんな「ジェンダー」という言葉はあまり好きじゃないと思うんですよ。よく分からない言葉やし、新しい言葉やし、片仮名やし……
ジェンダー平等って結局、何を目指すのかというと、「あんたと私が大事にされる世界」で、とくに「性別でよけいな損を受けない世界」を目指すということ――「ジェンダー」の説明を聞いてくれるようなタイミングやったらいいけど、そうじゃないときは、ずばっとそういう言い方もありなんとちゃうかな。
こむら ひとごとではなく「自分ごと」として語ることが大事ですね。
あかた 女性が差別されていると言うた瞬間に男性が差別してると思う人がいますけど、女性が差別されてるっていうことは性別で差別されているってことやから、男性も差別されているってことであって、男性が差別してるとは誰も言ってないんですよ。多数派が差別しているという訳でもない。
誰かが性別で差別されてたら、差別されてないように見える性別の人にも差別はすぐ降りかかってきます。
「反省」はしなくていいです――子どもたちには良い形で伝わる
あかた しかも、子どもの頃から「女の子でしょ」とか「女の子なんやから」と言われなかったとしても、なんとなくそのシステムの中にみんな組み込まれて育っているから、「ジェンダーで私たちは差別や分断をされている!」と言っても、分かってもらえない。そんな面倒くささがあるよね。こむら 私も子育ての中でなるべく男女にこだわらず区別をつけないように育てたいなと思っていたんですが、色であったり、靴や服のデザインだったり、固定概念でみていたかなと思います。
一方で、若い人たちのジェンダー的感覚は鋭い。中学生の私の娘も制服や校則に納得がいかないという思いを持っています。たとえば、女子は肩に髪の毛がかかったら結ぶとか、男子は肩にかかってはいけないとか、何で男子と女子で違わなあかんのかなとか。制服も女子はスカートですが、冬は寒くてズボンをはきたい場合もある。ひょっとしたら男子にもスカートをはきたい人がいるかもしれないとか。
あかた 夏は涼しいですね。
こむら キルトはスカート状やけどスコットランドの男性伝統衣装なんやで、なんて話を家族でしているんですけど、「何でなん?」といまの子どもたちは私たちの子どもの頃より強く感じているなと思います。
あかた 若い人のまともさと敏感さをちゃんと発揮できるようにするのが大人の仕事やなと思います。「何でそんな細かいこと言うてんの」とか言って、そのまともさをつぶすのは大失敗やと思う。
でも、この対談をいま読んでくれてはる人も含めて「反省」はもうしなくて良いと思っています。
私は思春期アドバイザーとしてちょっと難しめの子どもを見ることが多いけど、親の持っていた理念は必ず子どもに良い形で伝わっていく。親が何を目指していたかは、いまの若い子たち、学生さんとか中学生とか見ている。社会は良い方に確実に変わっていってる部分はある。だから大丈夫、反省はせんでもいいと思う。みんな頑張ったし、それがよかったと思う。
こむら そう言っていただけると救われますね。たくさんの親が。
あかた 「あれもだめ。これもだめ。こうしなきゃ。ああしなきゃ」みたいな感じじゃなくて、「自分が楽になる方に子どもといっしょに進んでいく」のがいい。とくに、ジェンダーに関してはそれで良くなっていくと思うんですよ。
国の仕組みは変えないといけないところがいっぱい
あかた もちろん、国の仕組みとは別の話です。国の仕組みは変えないとあかんところがほんまにいっぱいある。政治イシュー(論点・争点)のジェンダーと家庭イシューのジェンダーは乖離がある感じがしてます。家庭はそんなにきちきちやらんでいいんちゃうかな。政治をがんばろう。こむら 政治イシューでこれはいの一番にというのは何ですか?
選択的夫婦別姓
あかた まず、選択的夫婦別姓でしょ。戸籍制度がある国、めちゃくちゃ少なくなりました。戸籍制度がなくてもやっていけます。
こむら 夫婦別姓については「夫婦同姓は絆だから」と言って反対する人もいますね。
あかた 名字がばらばらになったくらいで切れるような絆なんやったら、「最初からなかったんやで。残念やったな」って思っちゃう。時間をかけて、いっしょにいて、会話してつくっていくのが絆やと思う。
こむら バリ舞踊をやっているのでインドネシアに何回も行ってますけど、夫婦はもちろん、親子ですらみんな名前は違うんですけど、絆が薄いなんてことはぜんぜんないし、不都合もないんです。
あかた 選択的夫婦別姓ってみんなばらばらにしようぜって言ってるわけじゃない。同姓にしたい人はどうぞいっしょにしてくださいって言うてるのに。
こむら 戦前の「家制度」の「戸主」を引き継いだ「世帯主」規定の廃止も必要ですね。
あかた コロナの特別定額給付金で受け取り人を「世帯主」にしたせいで、受け取れへんかった人がほんまはめっちゃいるとか。現実に合わせていく、そこに困ってる人がいるんやったらそこに寄り添っていくというのが政治の役目やと思う。
男の人も子育てを楽しめる社会
あかた 男の人も子育てを楽しめる社会をつくって欲しい。会社の終業時間は早くして欲しい。育休を取った人の補充をすること。「またあいつ育休かよ」と言われへんような環境づくりは国の仕事やと思う。保育所をたくさんつくるとか、保育士さんの給料を上げるとか、やってほしいことは子ども関係だけでもいっぱいある。こむら 保育の国基準はあまりにもひどい。保育士さんも自身が母親であったりするんだけど、自分の子どもを預けつつ、仕事として他の子どもさんを見ているやりきれなさを保育士さんから聞いてきました。男性も育休をほとんど取れていない。
あかた 「育休をとるなんて、おまえはもう出世しない気なんだな」とかひどいことを言われたりします。
子どもが小さい時ってほんまに一瞬やし、その時期にお父さんが社会によって子どもと分断されるっていうのはやっぱり違うと思うんですよ。もちろん、やりたくない人はやらんでいいんかもしれへんけど、せっかく子どもをつくったんやから関わればと思うけどね。
こむら 子育てに参加したいと思う人も多いと思うんですけど、なかなか仕事で、手が空けられないというのは辛いんちゃうかなと思いますよね。
あかた 望む人がちゃんと子育てに参加でき、しんどい人はちゃんと手伝ってもらえるシステムづくり、それこそが少子化対策やと思うから。とんちんかんなお見合いパーティーなんかしてないで、子どもを育てる人をちゃんとバックアップするのを国はやるべきやと私は思うんですがね。
自分の言葉で話したら聞いてる人はぐっときます
こむら ジェンダー問題について学んでいくときのポイントは?あかた ジェンダーのことは良い本がいっぱい出ています。
こむら 私もさっき一冊買ってきました。(と本を見せる)
あかた 分厚い! いきなりハードなのから行きますね。
もうちょっと薄いのから行けば?……ベル・フックス『フェミニズムはみんなのもの』(掘田碧訳、エトセトラブックス、二〇二〇年復刊)。これは黒人の女の人が書いているんですよ。なにしろ薄い。「フェミニズム」と書いてあるんですけど、実はジェンダー平等の本なんです。同じぐらいのページ数で、加藤秀一『ジェンダー入門』(朝日新聞社、二〇〇六年)とか。
こむら それぐらいの厚みがいいですね。
あかた あんまり厚いと、重くて持って歩くのもしんどいし、途中でやる気を失ってしまう。
自分のしんどさを語る自分の言葉を
あかた 勉強も大事なんやけど、勉強したことを自分の中に落として、自分の言葉でこんどは語れるようになっていくというのがすごく大事やと思う。ジェンダーって自分のしんどさと、あなたのしんどさをテーブルの上に並べて、どうしたらお互いが楽になれるのかということをみんなで考えていく学問というか、やり方やと思うから、自分のしんどさを語る自分の言葉というのがめちゃくちゃ重要やと思うんです。これを機に自分の感覚と自分の言葉を捜す旅に出るのをお勧めしたい。
ジェンダーのことだけじゃなくて、共産党の良さを誰かに語る時なんかも、自分の言葉で語れたら、聞いてる人はぜったいぐっとくる。
自分の感覚を探り、それを自分の言葉でそれを表現できるようになるってことにチャレンジして欲しいな。
まともな世の中つくるため、今年の選挙、勝ちにいきましょう
こむら いよいよ年が明けましたね。あかた 新しい年の目標は「選挙」。いまのおかしな状況をちょっとでもまともにして、ちょっとでも私らがしんどくない世の中をつくりたい。そのために、こむらさんの顔を国会で見たい。
こむら 野党連合政権はもう目前。野党共闘の要はやはり共産党やと思うし、いま頑張らなければいつ頑張るのかって時にきていると思います。
あかた この間、私らが勝ち取ってきたものはすごく大きい。安倍さんを辞めさせた。病気で辞めたというけど、私らが辞めさせたんやし。検察庁法案も止めさせた。現状が悪すぎて負けてる感もあるんやけど、よくみたら私らが声をあげたこと、本気で願ったことは最近、かなってきているんです。そこを忘れたらあかん。
こむら いま、みんなで力を合わせることがほんとに大事。ジェンダーの問題のように、すべてにおいてこれからは語り合うこと大事だと思う。大阪市廃止の住民投票でも対話に焦点をあててたたかい、廃止反対多数を勝ち取れたのではないかなと思うんです。
一人ひとりにスポットライトを当て、真剣に政策を語っていくことが、党を応援してくれる人を増やし、つないで、力にしていくことになるのかなと思います。
いま共産党への壁がなくなっているということは、語れる条件ができているということ。いま語らずしてどうするのか。
あかた 自分の話をうまく聞いてもらう一番のこつは、まず、相手の話をちゃんと聞くことです。
まず、困っている人の話をちゃんと聞く。その上で「それやったら、こういうことやと思うし、私らはこう考えている」ということを丁寧に伝えることが一番の近道やと思います。
私らがものごとを決める人になったら、私らに反対してた人のこともちゃんと考えて政治をする。私らを応援してなかった人も幸せにするんやから、勝ちましょうよ。頑張るよ。
こむら 勝ちにいく選挙にします。
あかた 良い年にしたい!。
(兵庫民報2021年1月3日付)