2021年11月21日日曜日

ジェンダーわたしの視点「少しでも多くの人が考え、理解する機会を」神戸大学名誉教授 朴木佳緒留:日本共産党兵庫県委員会ジェンダー平等委員会(責任者・こむら潤)の企画「ジェンダー私の視点」が連載一年。神戸大学名誉教授の朴木さんにご寄稿いただきました。


二〇一五年に神戸大学を定年退職し、六年が経ちました。研究者となったのは四十数年前でしたが、当時、中学、高校の家庭科は女子必修でした。教育基本法は男女の教育機会均等を規定しているにもかかわらず、公教育の場で堂々と男女で異なる教育が行われていたことに合点がいかず、家庭科の成立史研究を志したのが研究生活の始まりです。
当時、日本を代表すると言われていた法学者が家庭科女子必修について、憲法違反ではないという説を述べていたためか、家庭科女子必修反対/男女共学家庭科の主張は「異端」扱いでした。その事情が変化したのは一九八五年の女性差別撤廃条約批准、さらに一九九五年の世界女性会議の公式文書に「ジェンダー」の語が掲載された頃からです。
ところが、二〇〇〇年代の初めには酷いバックラッシュが起こり、自民党に「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」(座長、安倍晋三氏)が設置され、「ジェンダーフリー」の語は「禁句」にされてしまいました。詳細を書く余裕はありませんが、男女の役割や生き方、さらには立ち居振る舞いに至るまで、何ゆえに規制しようとするのか、今も「不可思議な状況」が続いています(それこそがジェンダー問題なのですが)。
実際には、政治や労働、教育などの公の場だけではなく、日常生活のあれこれがジェンダーに規定されて成り立っているため、「世間の大勢」と異なることはバッシングされます。その結果、声を潜めてきた又は違和感があっても「スルー」してきたという人は少なからずいると思われます。
今日では、嫌なことについて「嫌」と言う人も増え、以前よりはずっと良くなったと思います。しかし、今なお、不安定雇用等による経済的、精神的な困難を抱えている人、見えにくい(性)暴力の被害を受けている人、無神経な言動に心を煩わされている人は多くいます。ジェンダーが原因や背景になっていることが多いですが、残念ながら、被害・加害の当事者も「ジェンダーがらみ」であると理解していない場合も多いです。
少しでも多くの人がジェンダー問題を考えたり、理解できる機会が必要と思います。日本共産党が重要政策の一つに「ジェンダー平等」を掲げたことは幸いでした。率直に言って、私には「ようやく、ここまで来た」という思いはありますが、「今まで考えたこともなかった」という方からの質問も増え、少人数の会での語り合いの大切さを噛みしめています。

(兵庫民報2021年11月21日付)13:00
 
写真:尼崎の日本共産党と民青同盟が共同でひらいた「JCPサロン」でジェンダーについて若者たちと語り合う朴木さん(左から2人目)=2019年11月23日