2021年10月10日日曜日

オペラシアターこんにゃく座:オペラ『イヌの仇討あるいは吉良の決断』:神戸演劇鑑賞会10月例会


原作は井上ひさしの戯曲「イヌの仇討」。この戯曲を基に、林光による唯一の井上ひさしオペラの舞台です。
オペラといえば、アリアのように、ゆったりとした音楽が舞台を埋めると想像しがちですが、この舞台にはそんな音楽シーンはない。十二人の歌役者と歌詞をもたない二人の登場人物(バイオリンとピアノ)のためのオペラです。
「イヌの仇討」はあの「忠臣蔵」を大石内蔵助たちの赤穂浪士側から描くのではなく、吉良側の物語として描いた作品です。そして、なぜ?吉良上野介は、赤穂浪士に狙われ、討たれなければならないのか。大石内蔵介は、なぜ?〝死〟を覚悟してまで執拗に吉良上野介を討つのか。なぜ?、なぜ?、の疑問が舞台全体を覆い、ラストにその答えが引き出されるまで緊張感が続く和製オペラを楽しみましょう。
幕があくと、そこは既に味噌蔵。炭部屋の壁を打ち抜き味噌蔵と繋いだもの。入り口はひとつ。明かり取りの高窓がひとつ。人の出入はできない小さな部屋。そこに吉良上野介と、彼の近習・清水一学、大須賀治部右衛門等と女中頭お三、おしの、お吟たちが息を潜めている。屋敷は既に赤穂浪士たちに取り囲まれている。上野介を探し、探している。しかし、上野介の存在は浪士たちになかなか見つけられない。
狭い部屋の中に閉じこめられた時間のなかで、上野介は、「なぜだ、なぜ、赤穂の家来どもに討たれねばならぬのだ。なぜだ。わしには討たれる理由などなにひとつない」。上野介は恐怖におののいていた。そして……
この物語は「異説・忠臣蔵」ではあるが史実の書き換えではない。あまりにも美談として語り継がれている「忠臣蔵」の真相は、と考えさせられる舞台で、面白くて、納得のゆく結末です。
〔小谷博子=神戸演劇観賞会〕
 

オペラシアターこんにゃく座『イヌの仇討あるいは吉良の決断』

原作=井上ひさし 台本・作曲=林光 演出=上村聡史 出演=大石哲史、山本伸子、岡原真弓 ほか/①10月22日(金)18時30分、②10月23日(土)13時30分/神戸文化ホール中ホール/会員制(入会時に入会金1,000円と月会費2カ月前納)、月会費3,500円(大学生2,000円、中高生500円)/Tel. 078-222-8651、Fax 078-222-8653 
http://kobeenkan.my.coocan.jp/

(兵庫民報2021年10月10日付)13:00