2021年9月12日日曜日

みんぽう川柳〈八月〉「近づく」

選 者 島村美津子

特 選

敗戦日ゆっくり風呂に入った日
 明石市 上野景子

【評】神戸大空襲で生まれ育った家を焼かれ、いたしかたなく女性陣だけで疎開した母の故郷。
雑音ばかりの玉音放送というのを聞いた昼、しばらくして沈黙を破って誰かがぽつりと言った「日本は負けたんや」。とにかく命助かったという喜びが全身を貫きました。その夜、母や姉と井戸水を汲み入れ山で拾ってきた枯れ枝を焚いて五右衛門風呂に浸かった深い安堵感は何ものにも代えがたかった。七十六年前の少女の日を鮮明に思いだす。

入 選

近づく日亡き人想う祈りの日
 神戸市 兵頭和子

空にらむ近づくあの日きのこ雲
 神戸市 山本尚代

近づく終戦日未だ遺骨捜す人
 芦屋市 梶原嘉代子

八月十五日近づきムクゲの花ひらく
 尼崎市 富田明美

耳遠くそっと近づき会話する
 尼崎市 富田 断

唇に指あて孫とないしょ事
 明石市 小西正剛

蝉の声そっと近づく散歩道
 明石市 山澤美智子

せまりくる私の近所コロナ菌
 姫路市 冨士初美

近づくと恐い台風無防備日本
 芦屋市 松田良介

距離感におびえうかつに近づけぬ
 神戸市 塩谷凉子

コロナ禍で近づく二学期のびのびと
 神戸市 眞鍋靖子

近づいた桜見る会の真実が
 神戸市 梶山洋枝

ガースーの息の根止める秋近し
 尼崎市 大野幸雄

近づけばメダルに噛みつく市長あり
 神戸市 北河豊治

みんぽう川柳募集

▽九月の題は「準備」、締切は九月二十四日▽十月の題は「本番」、締め切りは十月二十二日(日付にご注意ください)▽一人二句まで。葉書に作品二句と氏名・年齢・住所・電話番号を明記▽毎月第四金曜日必着。締切が迫っている場合に限りメール、ファクスでもけっこうです。ファクスの場合は、葉書大の枠を書き、その中に必要事項をすべて記入してください。葉書大に切り揃えますので、枠の外には何も書かないでください。

(兵庫民報2021年9月12日付)12:00