2021年5月30日日曜日

神戸映画サークル協議会6月例会『幸福なラザロ』:美しい瞳の持ち主は時空を超える


『幸福なラザロ』は、パルムドールを受賞した日本の『万引き家族』と共に、第七十一回のカンヌ映画祭で話題をさらい脚本賞を受賞した。
本作は監督アリーチェ・ロルヴァケルが衝撃を受けた一九九〇年代に実際に起こった不思議な詐欺事件に着想を得て作られている。一九八〇年代初頭にイタリアで廃止された「小作人制度」を領主が小作人に知らせずに搾取し続けていたのだ。
キリスト教の聖人であるラザロの名前を持つ主人公を物語の中心におき、彼が持つ不思議な癒しの空気感が画面を覆っていくと共に、ストーリーにのめりこんでゆく魅力的な映画だ。
閉ざされた村の存在が世間に知れてから年月が経ち、かつての村人たちは都会の片隅で肩を寄せ合って暮らしていた。
ラザロが、止まった時から放たれ、再び村人たちの前に突然現れる。
ラザロは、彼らを懐かしみ、信じる。そして、彼らを助ける。
前半の美しくも厳しい田園風景と後半の殺風景な都会の映像の対比。
ラザロとはいったい何者なのだろうか?
一つ一つのシーンに、意味があると想像するが答えは早々には出ない。
しかし、人を寄せつけないような難解な作品では決してない。
観ている間は、ただラザロから目が離せない。
〔宮下暢子=神戸映画サークル協議会〕

『幸福なラザロ』(2018年イタリア/127分)

6月18日(金)①11時②14時③19時、19日(土)①11時②14時③18時/神戸アートビレッジセンターKAVCホール/一般1,300円 *要事前予約:参加日時を6月17日までにご予約ください。☎078-371-8550、Email kcc1950@kobe-eisa.com/URL http://kobe-eisa.com/


(兵庫民報2021年5月30日付)