地球温暖化による世界的な気候変動により、これまでに経験したことのない集中豪雨や大型台風などが頻発、災害がさらに多発しており、その備えは県行政の大きな課題となっています。
県内では、二〇一八年に、七月西日本豪雨、台風21号などが猛威を振るい、二人が死亡、重軽傷者八十三人、全壊二十五件、半壊六十二件、一部損壊二千七百二十六件、浸水が千二百六十一件と大きな被害を受けました。(表1)
一方で、多発する自然災害に対して県内の河川整備率は五九・八%(二〇二〇年三月三十一日現在)、土砂災害警戒区域の整備率は二九・四%(二〇二〇年三月三十一日現在)に留まるなど、防災・減災事業は、すすんでいません。
そのうえ、この年、台風21号による高潮で多数の家屋で浸水被害が発生した潮芦屋地域で、二〇〇七年に兵庫県が公表した高潮浸水予測図に用いた護岸高の測量結果に重大な誤りがあったことが明らかになりました。
潮芦屋地域は、高潮浸水予測図で当時の想定最大高潮位四・三五メートルを、すべての護岸で上回っており、浸水しない地域とされていました。
人工島としてつくられた潮芦屋地域は、一九九六年の竣工時、地盤沈下も見越し、南側護岸は五・四五メートル、東側護岸四・五九メートル等で建設。しかし二〇〇六年の測量結果は、竣工時を上回る南側護岸五・七五メートル、東側護岸四・九三メートルという異常な護岸高となっていました。県は、この誤りに気付かず、この数値を用いて潮芦屋地域は浸水しないとする高潮浸水予測図を作成していました。(図)
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潮芦屋地域の護岸高水位と測量誤り |
しかしこの地域の実際の護岸高は、南側で五メートル程度、東側では、低いところで四メートル程度となっており、実際には、想定最大潮位を大きく下回り、大きな浸水被害を引き起こす重大な事態を招きました。
県は、誤りを認め住民に謝罪しましたが、この地域は、阪神・淡路大震災直後に、「災害に強い」「南海トラフ、大型台風が来ても大丈夫だ」と安全神話をふりまいて、県が分譲していった地域で、その責任は重大です。
県は、正確な護岸高を定期的に把握し、引きあがっている降雨量などによる正確な浸水予測図を作成し、護岸補強などの対策を行うべきです。
河川整備、土砂災害警戒区域整備などを前倒しで行うことも求められます。
兵庫県の被災者生活支援策も不十分です。
二〇一八年の一連の災害で、全体で四千七十四世帯が家屋被害を受けていますが、そのうち支援金が支給されたのは、国支援金も含め、わずか二百三十三世帯、五・七%です(表2)。
県の支援事業は、恒久制度ではなく、このとき適用された被災者生活再建支援事業も、一部損壊までを対象にしていましたが、損壊割合一〇%以上という規定のなかで、損害が大きくても、支援を受けられない世帯が多数ありました。
近隣の京都府では、恒久制度として地域再建被災者住宅等支援制度があり、一部損壊についても一〇%の損壊割合要件はありません。
被災状況に関わらず、すべての被災者に対する支援策が必要です。
国の被災者生活支援制度は、阪神・淡路大震災以来の被災者の運動が実を結びました。しかし、最高支援額が三百万円と不十分であり、対象も拡充されたとはいえ、中規模半壊にとどまっています。
国の被災者生活再建支援法にもとづく支援の拡充を求めるとともに、阪神・淡路大震災を経験した兵庫県で、災害から命と暮らしを本気で守る県政への転換が求められます。
表1:2018年災害被害
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死亡
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重傷者
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軽傷者
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全壊
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半壊
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一部
損壊
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床上
浸水
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床下
浸水
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7月豪雨
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2
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2
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9
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16
|
18
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81
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68
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707
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台風20号
|
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11
|
1
|
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14
|
1
|
3
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台風21号
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7
|
53
|
8
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44
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2631
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156
|
315
|
台風24号
|
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|
1
|
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|
|
|
11
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合計
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2
|
9
|
74
|
25
|
62
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2726
|
225
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1036
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表2:被災者生活再建支援金事業件数(2018年災害実績)
7月豪雨、台風20号、21号
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県支援金
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国支援金
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計
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全壊
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5
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9
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14
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大規模半壊
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2
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4
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6
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半壊(半壊解体・長期避難)
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44
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4
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48
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一部損壊(損壊割合10%以上)
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165
|
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165
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合計
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216
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17
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233
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