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2021年3月28日日曜日

日本共産党兵庫県議団が21年連続で組み替え提案:県民の願いにこたえる予算に


日本共産党兵庫県議団は二十一年連続となる予算組み替え提案を行い、入江次郎県議が三月十七日の予算特別委員会で提案しました。
入江議員は、知事提案新年度予算案について、「コロナの影響もあり、県庁舎等再整備基本計画が次年度に繰り越され、但馬空港の機能強化や、大規模アリーナ整備などの検討が持ち越されたのは当然で、中止も含め、白紙からの検討が必要」「一方で、総事業費五千億円ともいわれる播磨臨海地域道路、東播丹波連絡道路など基幹道路八連携軸など新たな投資事業を推進しながら、コロナ禍から県民の命を守るための医療・衛生体制については、十分な拡充がなされていない」と批判。「県提案の二〇二一年度予算案を県民の立場からチェックし、県民の願いにこたえる予算として、二十一年連続となる、予算組み替え動議を提案する」として、組み替えの内容を説明しました。
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日本共産党の組み替えは、全体の規模は、一般会計で見直しが必要な事業七十八項目、合計四百十二億円(約一・五%)を減額、生み出された一般財源、特定財源など約百十一億円を、新型コロナウイルス感染症緊急対策、職員定数、気候変動対策、子育て・高齢者への支援、教育の充実、中小企業、小規模農業支援など二十八項目の増額に充当しています。また、県債の発行額を、一般会計と二つの特別会計で、二百三十億円抑制しています。
新型コロナウイルス感染症対策 医療・高齢者施設等の職員等への頻回・定期的検査、隠れた感染源早期探知のための大規模モニタリング調査の促進など、新型コロナウイルス感染症対策への予算を新たに十億円計上。職員の配置では、感染症対応等のための保健師や災害の備えのための土木職員を増員。
地球温暖化対策 二〇五〇年の二酸化炭素排出量実質ゼロにするために、二〇三〇年度の削減目標を引き上げ、そのために、六五%の二酸化炭素を排出している産業部門での実効ある削減措置や兵庫県から新設も含めた石炭火力を禁止するための予算を新規で計上しています。
子育て支援策 川西市が、七月から中学三年生までの医療費が無償になり、県内三十六市町が子どもの医療費無償化となりました。提案では、市町との共同事業としてすべての市町で子どもの医療費が無償になるように予算を計上しています。
教育分野 小学四年生で止まっている少人数学級を小学校全学年で実施できる予算を計上。高校一年生全員に、タブレットを無償貸与できる予算も計上しました。
中小企業支援策 ひょうご男女いきいきプランが改定されましたが、県内における女性の社会進出は、遅れています。組み替え提案では、女性の正規採用や管理職への登用を促進するためにジェンダー平等促進中小企業支援事業を立ち上げ、一億円を計上しています。
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日本共産党の提案に対し、他会派は「播磨臨海道路事業等は必要」(自民党)、「自衛隊募集のための予算を削るのは、もってのほか」(維新)、「福祉、教育予算を増やすというのは、一定理解できるが、将来的な課題」(公明)と主張。採決の結果、組み替え提案は否決されました。

《予算組み替えの主な内容》
1.コロナウイルス感染症対策 10億円

2.職員配置の強化
 健康福祉事務所職員費 拡充:保健師11人増員 8800万円
 土木管理事務職員費 拡充:13人増員 1億400万円

3.気候変動対策
 温室効果ガス排出削減強化費 新設 300万円
 自然エネルギー地域ポテンシャル調査事業費 新設 600万円
 家庭における省エネ支援事業(家庭用太陽光パネル設置事業) 拡充 3000万円
 中小企業所省エネ設備導入促進補助 拡充 5000万円

4.子育て支援策
 中学3年生までの医療費無償化 拡充 約31億円(約62億円)
 国民健康保険料子どもの均等割り減免 新設 12億円
 母子家庭等医療費助成費 拡充 1億6800万円

5.医療・福祉分野への支援策
 老人医療費助成制度 復活 3億1500万円
 加齢性難聴者補聴器購入補助 新設 2億円
 重度障害者児医療費補助 拡充 8200万円
 難病その他特定疾患医療費 拡充 3500万円
 看護師学生就学資金支援金制度 新設 3000万円

6.教育分野の支援策
 小学6年生までの少人数学級制 拡充 16億4500万円
 高等学校生徒用貸与端末等整備事業費 拡充:公立私立高校1年生全員にタブレット貸与 19億3500万円
 兵庫県高等教育修学支援制度 新設 2億7000万円
 私立高校授業料軽減補助 拡充 1億4000万円

7.中小企業、小規模農家支援策
 ジェンダー平等促進支援制度 新設 2億円
 兵庫型奨学金返済支援制度 拡充 2100万円
 中小企業店舗リフォーム助成事業 2000万円
 住宅リフォーム助成制度 1億円
 小規模農家サポート事業 5000万円

8.見直す事業
 空港事業 △約10億8000万円
 基幹道路・高速道路事業 △約130億円
 産業立地促進補助 △約19億円
 病床削減ダウンサイジング、病院統廃合支援 △20億円
 マイナンバー推進事業費 △5億円
 同和行政事業 △5億8400万円
 県議会海外視察費用 △1500万円
以上

(兵庫民報2021年3月28日付)

日本共産党近畿オンライン演説会:県内1700カ所以上で約4200人が視聴:「ときどきこのような演説会に参加したい」「リラックスして聞けた」


日本共産党の近畿ブロックオンライン演説会が三月二十日に行われ、兵庫県内では、自宅や地域の公民館など千七百カ所以上で約四千二百人が視聴しました。
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志位委員長は近畿六府県の地方議員数が第二党を占めていると紹介し、「衆院比例近畿の議席倍増を」と訴えました。
神戸市須磨区の女性は「地方議員数第二党と聞いてうれしくなりました…がんばれば比例議員四に到達するとのこと」「たくさんの人にわかってもらうまでがんばらないといけない」と決意を寄せました。
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パネルも駆使した「新しい日本をつくる五つの提案」について、丹波市の女性は「目で見てわかるものでとてもよかったです。ジェンダーといい、環境に対する姿勢も(国際比較で)百位以下で世界の後進国だと実感しました。一日ひとり、二人とがんばって話をしなくては」と感想を寄せました。
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「初めて参加させてもらいました」という高砂市の男性も「自分の思っていたことが志位さんの演説でよくわかりました。自公の政治より確実に良いことがわかりました」、伊丹市の初参加者も「ときどきこのような演説会に参加したいなと思いました。元気がでます」とそれぞれ感想を寄せました。
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宝塚市の視聴者は「五つの提案をひろげたら政権交代が現実になると希望がもてました」と感想を寄せ、神戸市西区で四人で視聴した会場では、演説会後「とてもわかりやすくてよかった。支持者ではない人にもぜひ聞いてもらいたい内容」などと交流しました。
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初めてのオンライン演説会。「(これまでは)神戸まで出かけないと聴けなかったので、体力的にも時間的にもよかった」(丹波市の女性)、「みんなとお茶を飲みながら視聴した。リラックスして聞けてたいへん良かった」(同市の男性)という声も寄せられました。
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演説会には瀬戸内寂聴さんら三人が応援メッセージ。加古川市の男性は「やさしい言葉で共産党を支持してくださることがうれしい」、神戸市垂水区の視聴者も「寂聴さんの話が聞け、生きる勇気がわきました」と感想を寄せました。

(兵庫民報2021年3月28日付)

非核「神戸方式」決議46周年のつどい:日本政府を核兵器禁止条約に参加させるたたかいが非核「神戸方式」を守り、広げる力に


核兵器積載艦艇の入港を拒否する非核「神戸方式」の決議四十六周年記念のつどいが三月十八日、オンラインで行われました。兵庫県原水協などでつくる実行委員会が主催したもので、コロナ感染症の影響でオンラインで開催され、実行委員会が準備した会場、オンライン集団視聴会含め約二百人が参加しました。
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神戸港湾共闘会議の谷口利之議長が開会の挨拶で、コロナ禍の困難に直面しながらも、「神戸港から米軍基地を撤去させ平和な神戸港のためにたたかってきた先達の思いを受けとめ必ず成功させる」ために準備を重ねたことを述べ、強権政治をすすめる菅内閣の暴走をとめるために市民と野党の共闘をすすめるように訴えました。
神戸市原爆被害者の会の立川重則会長が来賓挨拶で、核兵器禁止条約を発効させた被爆者と市民運動の奮闘をさらに前進させるように呼びかけました。海外からの連帯メッセージが動画で紹介されました。アメリカのプロポジション・ワンのエレン・トーマスさん、米平和・軍縮・共通安全保障キャンペーンのジョセフ・ガーソン議長、フランス平和運動のロラン・ニベ全国書記、フィリピンのコラソン・ファブロスさん、韓国・「平和と統一を開く人々」(SPARK)釜山のパク・ソクブンさんが、それぞれ非核「神戸方式」が米軍事戦略に大きな制約をつくりだしている意義を強調し、「日本の平和運動だけでなく、核も基地もない平和のために何ができるかをしめすもの」とたたえ、核兵器禁止条約の前進で共同を強めることを呼びかけました。
兵庫県原水協の梶本修史事務局長が基調報告で、非核「神戸方式」の特徴として、①日本国憲法を活かした②国是の非核三原則を実効化③住民本位を強めた地方自治体の力④米軍基地撤去を実現⑤アメリカの強い干渉とのたたかい⑥国際連帯を広げ支えられる(ニュージーランドの非核法、国連の勧告)⑦非核神戸港⑧非核釜山港の日韓共同の力―をあげ、日本政府を核兵器禁止条約に参加させるたたかいが非核「神戸方式」を守り、広げる力になると訴えました。
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長崎大学核兵器廃絶研究センター副センター長の鈴木達治郎教授が、「核兵器禁止条約発効をうけて――新たな核軍縮を目指して」の演題で記念講演。鈴木氏は、「核兵器をめぐる国際情勢は、核戦争の脅威が高まる一方、核兵器禁止条約の発効など、二つの大きな流れが対抗する混沌とした情勢」と特徴づけ、核兵器禁止条約の意義を明らかにしました。同時に、禁止条約への異論「核兵器国が参加していないので実効性がない」「核兵器国と非核兵器国の対立を生む」「NPTの基盤を揺るがす」「リスクが高まる」などを具体的に反論しました。そして、菅政権の核兵器政策を批判し、国民世論が禁止条約を支持していることから「核の傘」から脱却して、朝鮮半島の非核化、北東アジア非核兵器地帯の設置を提言しました。
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「つどい」は、「日本政府は核兵器禁止条約に署名を! コロナ禍乗り越え、核の脅威も気候危機もない憲法九条と非核『神戸方式』が輝く神戸市、日本をつくりましょう」との「二〇二一年非核神戸港アピール」を採択しました。非核「神戸方式」のテーマソング「波よひろがれ」を兵庫県内の「うたごえ」が共同で歌い上げた動画が披露されました。兵庫県原水協の津川知久・筆頭代表理事が、「日本政府に核兵器禁止条約調印を迫る大運動を」と訴え、閉会の挨拶を行いました。
参加者からは、「日本政府に核兵器禁止条約を調印させる確信がもてた」「海外からのメッセージが神戸方式に熱い連帯の思いを示して感動した」などの感想が寄せられました。
〔梶本修史=兵庫県原水協〕

(兵庫民報2021年3月28日付)

シリーズ 憲法が輝く兵庫県政へ(24)「兵庫県民の暮らしは全国何位?」憲法が輝く兵庫県政をつくる会事務局次長 田中邦夫


兵庫県は、全国十二位の財政力指数(地方公共団体の財政力を示す指数)ですが、働く人の収入は低く、社会保障、教育、文化、防災などの環境は全国でも遅れたものになっています。長年にわたり、県政が県民ではなく、大企業の方に向いていたためです。

財政力指数(県財政),12位
勤労者世帯の実収入,33位
勤労者世帯の消費支出,36位
老人福祉費(65歳以上一人あたり、県・市町合計),36位
介護老人福祉施設数(65歳以上人口あたり),40位
児童福祉費(17歳以下一人あたり、県・市町合計),32位
保育所数(0~5歳人口あたり),41位
教育費(一人あたり、県・市町合計),42位
高校数(15~17歳、人口あたり),41位
中学校数(12~14歳、同),41位
小学校数(6~11歳、同),40位
小学校児童数(教員一人あたり),少ない方から37位
中学校生徒数(同),少ない方から39位
高校生徒数(同),少ない方から34位
図書館数,43位
一般病院数,27位
救急自動車数,41位
保健師数,43位
消防吏員数,44位
 *総務省「統計でみる都道府県のすがた2021」から作成

(兵庫民報2021年3月28日付)

ジェンダーわたしの視点「『仕事優先』の価値観」日本共産党兵庫県委員会常任委員 岡 民雄


三十一歳で党専従者となり、結婚し子どもを授かって、「仕事優先の価値観」は随分と私自身と家族を悩ませるものとなりました。まだ体力が有り余っていた三十代は、「勝つための」候補者活動や「前進するための」党専従者として、任務偏重で「気持ちにゆとりのない」生活でした。家庭がとても不安定な期間を過ごしていた理由が、今なら理解できます。それでもなんとか今日に至っているのは、私自身の生い立ちと子育て経験、妻の忍耐によるものだと思います。
私の父親は看護師であった母親を心から敬っていました。ですから、家事も育児も「手伝っている」のではなく、自分事として楽しくやっていました。休みの日は私と妹を惜しみなく遊びに連れていき、子どもを楽しませるのが得意な父親でした。
我が家も子どもが三人になると、私の活動スタイルは少し変化しました。週に一度は党活動から離れて三人の子ども達と向き合う時間を増やしました。子ども達の笑顔をたくさんつくって、たくさんのビデオや写真や想い出を残しました。今でも妻からは「あんたは子どもの面倒見だけはよかった」と、けなされているのか褒められているのかよく分からない評価をされます。
妻との関係がようやく安定し始めたのは、次女が中学生になり、子どもとの接触時間が減り始めた二〇一九年からでした。そこには間違いなく、党が同年に掲げた「ジェンダー平等」が私に大きな影響をもたらしたことがあったと思います。
「ジェンダー平等」をめざす夫婦とは? このことを深く考えさせられました。
この答えのヒントは、私の両親が与えてくれていました。それは、「相手を敬うことからはじめよう」でした。
「仕事も家庭も」そこからはじめていけば、きっとうまくいくと思います。

(兵庫民報2021年3月28日付)

国は石炭火力の新設を止めて!――裁判日記(行政訴訟第11回・判決):わたしたちはあきらめない

原告・近藤秀子


主文
一、本件各訴えのうち、確認の訴えに係る部分をいずれも却下する。
二、原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
三、訴訟費用は原告らの負担とする。
三月十五日、静まり返った大阪地裁二〇二号法廷に裁判長の声が響きました。「不当な判決だ」と怒号が起こり、負けたんだと言う実感が湧いてきました。
判決の内容については早速、原告弁護団が協議、記者会見に臨み、その後報告会が開かれました。
*
地裁の判断は――
一つは二酸化炭素の排出について言えば原告適格は認められない、被害は大きいが地元住民だけが受けるわけではなく裁判で争えないというもの。
二つは本件確定通知をした経済産業大臣の判断が、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認めることができず、裁量権の範囲を逸脱しまたはこれを乱用したものとは言えないから、本件確定通知が違法であるとは言えないというもの。
*
地元住民に争う資格がないなら、一体誰が争えると言うのでしょう。
そして裁量の壁、原告適格の壁に私たちはどのように立ち向かえばいいのでしょう。
私たちを守るはずの法律が、私たちの手足を縛ってものを言わせない。
二〇五〇年に向け、菅首相は二酸化炭素排出ゼロを表明したものの、二〇三〇年削減目標は変わっていません。全くやる気のない目標など何の意味があるのでしょうか。
裁判の判決がわかっていたかのように、神戸製鋼所は四月からいよいよ三号機の試運転を始めます。
*
私たちは子どもや孫たちに澄んだ青空を残すために、この裁判の結果をチャンスに変え、広く世論に訴えます。
原告と弁護団はすでに控訴の準備に入りました。私たちは決してあきらめない! どうする日本!

(兵庫民報2021年3月28日付)

民主主義の日本めざして――「川崎・三菱大争議」100年:第十二回 弁護士の活動と自由法曹団の創立(2)


小牧英夫(治安維持法国賠同盟兵庫県本部顧問自由法曹団元兵庫県支部長)

(三)争議弾圧事件の弁護活動

川崎・三菱大争議に参加して逮捕・起訴された被告人らに対する裁判は、神戸地方裁判所において、三菱騒擾事件と川﨑騒擾事件に分けて進められた。前者では、大久保吉平ら十八人が、騒擾、器物毀棄、建造物侵入、傷害の罪に問われ、一九二一年十二月二十三日に判決が言い渡された。全員有罪で、懲役十月が二人、同六月が十六人(うち八人は執行猶予付き)であった。また後者では、野倉萬治ら五十五人が、騒擾及び治安警察法違反の罪に問われ、一九二二年五月十六日に判決が言い渡された。全員有罪で、懲役一年六月が三人、懲役一年二月が四人で、その他は懲役十月~六月(うち二十二人が執行猶予付き)または罰金三十円であった。判決に対し、執行猶予が付かなかった被告人らは大阪控訴院に控訴し、同控訴院は、一九二二年十二月十八日、野倉を除く全員に対し、神戸地裁の実刑判決を破棄して執行猶予付き判決を言い渡した。
これらの裁判では、前記調査団に加わった東京の弁護士らと、神戸弁護士会に所属する高山義三、浜野徹太郎、野田文一、砂田重正、医師中井一夫、高木陸雄、杉浦郁爾、沼田吾一、熊谷康次郎らが総勢十七名の大弁護団を組み、精力的な弁護活動を行った。一例を挙げると、一九二二年四月十四日に開かれた川崎騒擾事件の公判では、常峰俊一の治療に当たった大国病院の保田芳助医師の証人尋問を行い、常峰は、背後から脾臓部を深く刺されており、凶器は片刃の日本刀の類であること、常峰からは「警官の為遣られた」とは聞いていたなどの証言を得(大阪朝日新聞大正十一年四月十五日号)、抜刀巡査の殺人行為を明白にした。

(四)自由法曹団の創立

神戸人権蹂躙問題調査団の一行と神戸で話し合った鈴木文治は、労働者の権利を護る弁護士の団体結成を求めた。調査団のメンバーは、帰京後ひろく呼びかけて、人権蹂躙に対処するための弁護士団の結成にこぎつけた。一九二一年八月二十日、日比谷公園の松本楼に六、七十人の弁護士が集まり、自由法曹団が結成された。
一九二三年九月一日に発生した関東大震災の際、混乱に乗じて朝鮮人や革命的労働者多数が虐殺された(大杉栄虐殺事件、亀戸署事件など)。自由法曹団はその調査や責任追及に奮闘した。
一九二五年に治安維持法が制定され、国体の変革及び私有財産制の否定を目的とする結社等を禁じ、共産党等に対する取り締りが強化された。同法は一九二八年六月に改定され、最高刑を死刑・無期懲役としたほか、「目的遂行罪」を追加し、共産党員に対するカンパや便宜供与等を広く取り締まる法体制が作られた。
一九二八年三月十五日及び一九二九年四月十六日に強行された共産党員等の一斉検挙をはじめとして、全国で治安維持法等による弾圧が頻発し、自由法曹団員はその弁護活動や救援活動に奮闘した。
一九三一年四月二十九日には自由法曹団員の多数が解放運動犠牲者救援弁護士団を組織し、さらに、一九三三年一月二十九日には日本労農弁護士団に発展した。しかしながら、治安維持法違反事件の弁護に当たっていた多くの弁護士は、自身が治安維持法違反に問われ、一九三三年九月十四日(関西では二カ月遅れ)に一斉検挙されてその活動を封じられた。この弾圧により、日本労農弁護士団や自由法曹団は一九四五年の敗戦まで、活動停止を余儀なくされた。
一九四五年十月八日、上村進ら八人の弁護士が集まり、自由法曹団の再建を決めた。以後の自由法曹団がわが国における平和と民主主義、人権擁護を目指す様々な活動の中で貴重な役割を果たしてきたことは広く知られている。
今年、自由法曹団は創立百年を迎える。昨年十月には、コロナ禍のなか、自由法曹団発祥の地である神戸で全国総会が開催された(写真)。開会のあいさつに立った吉田健一団長は、川崎・三菱大争議における人権蹂躙調査がきっかけとなって自由法曹団が結成された経緯に触れ、「人々が受けている人権侵害に対して、その現場で確認した事実に基づいて、広く国民市民と共にたたかう、それが自由法曹団の原点であり、これからもこの原点を大切にしたい。」と述べた。
今後とも、兵庫県における自由法曹団の活動が期待される。

資 料

『自由法曹団物語』(自由法曹団編 労働旬報社)
『日本労働運動史論』(大前朔郎・池田信共著 日本評論社)
『神戸弁護士会史』(神戸弁護士会)

(兵庫民報2021年3月28日付)

加印革新懇と加古川生活と健康を守る会がフードバンク&相談会開く


加印革新懇と加古川生活と健康守る会は三月二十一日、加古川駅前東側にテントを張り、「フードバンク&相談会」を初めて開きました。
革新懇は一月の世話人会で取り組むことを決め、生活と健康守る会に呼びかけ、チラシを『しんぶん赤旗』へ折り込み。駅頭でのチラシ配りとハンドマイクでの案内も二回行いました。折り込んだ翌日から「お米を届けたいけど」と問い合わせがあり、米三十キログラム、インスタント食品や日用品、水、生理用品、現金など次つぎと、新婦人事務所、加印教組、共産党の市委員会、民商に届けられました。当日も車で食品を提供しに来た人がありました。
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十時の開催前にハンドマイクで案内すると、「それどこ」とアパートの二階の窓から顔を出して、二人の若い外国人が訪ねてきました。「もらっていいの」と、とても喜んでインスタント麺や缶詰、ティッシュペーパーなどを持ち帰りました。自転車でやってきた男性も食品と石鹸、ティッシュペーパーを持ち帰りました。
相談にと来た人は、欲しいものを「あとの人も居るから」と控えめに持ち帰りました。
若い男性が「ちょうど仕事もなくなり食べるものもなくなった。とても助かります。今から広島に行きます」と食物とティッシュや靴下を持って帰りました。スタッフは「体に気をつけて、元気でね」と見送りました。
小野から自転車で来た人は、「夫婦二人暮らしだが仕事が減って困っている、助かります」と話し込みました。
また、お米をカトリック教会に集まるベトナムの人々にも届けました。
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途中激しい雨が降り出したりもしましたが、なんとか乗り切りました。スタッフの昼食も準備しました。「次はいつ?」と尋ねる人もあり、今後の開催については相談して決める予定です。
〔櫻本美都恵=加印革新懇〕

(兵庫民報2021年3月28日付)

日中友好協会加古川支部「中国歴史講座」新シリーズ:古代日本人の世界観


日中友好協会加古川支部は「中国歴史講座」第二十八回から新シリーズ「古代日本人の世界観」を始めました。その第一回「弥生人の見た中国」は來村多加史阪南大学教授を講師に二月末に東播磨生活創造センターで開催し、三十七人が参加しました。
來村教授は、日本人の中国観は、時代ごとに様変わりしていると述べ、文献学と考古学の成果をもとに順次、日本人が抱いていた中国観を探っていこうと講義の趣旨を説明しました。
弥生時代開始は従来BC四〇〇年ごろとされていたが、放射性炭素年代測定法の確立によりBC一〇〇〇年頃とされていることや、『漢書』「地理誌」『後漢書』「東夷伝」からなど、弥生時代の日本事情を説明。
さらに弥生時代の戦国時代といわれる「倭国大乱」にも触れ、次回の卑弥呼時代につなぎました。
〔前田清=日中友好協会加古川支部〕

(兵庫民報2021年3月28日付)

こくた恵二「3・11と故及川陸前高田市議の思い出」連載エッセイ8


もう十年になるのか、まだ十年しかたっていないのか。
三陸を襲った東日本大震災・津波。あの日、私は国会にいた。巨大な地震の被害報道をテレビで見て、直ちに、旧知の岩手県陸前高田市議会議員・及川一郎さんに電話した。「大丈夫ですか」と。彼は「おら、大丈夫だべ」と応えた。これが最後の電話になるとは。
彼は、住民を助けるために避難誘導を行い、津波の犠牲になった。このことについて、「しんぶん赤旗」紙上(三月九日付)で、政子夫人は、心の思いを語っている。
私は、小学校二年生から四年生までの間、銀行に勤める父の転勤で、陸前高田市に住んだ。十二年前、演説会で故郷を訪れたとき、市会議員の彼は、景勝高田松原を案内し、「ここさ来ねば高田に来たことならんべ」と語った。
担任のS先生と同級生に密かに声をかけ、思わぬ同級会も開いてくれた。体育の授業で「海パンをはいていたのは、こくたと先生だけだった」など、海水パンツとふんどしが話題になり大笑いした。
どこまでも、いつでも、裏方を厭わない、情の熱い人柄の及川氏だった。その時参加した先生と同級生の幾人かも犠牲になった。
私は忘れない。住民に奉仕する日本共産党の誇るべき議員、及川一郎氏を。未だに、私の携帯には彼の電話番号が残っている。消すことができない。政子夫人やご家族とともに、一郎さんのご冥福を祈り、被災者の生活と生業の再建に取り組む決意だ。
(日本共産党衆院議員)

(兵庫民報2021年3月28日付)

なまの舞台をごいっしょに:神戸演劇鑑賞会4月例会:劇団ピュアーマリー『殺しのリハーサル』


ここはブロードウェイのとある劇場。劇作家アレックス・デニスンが一年振りに、誰もいない客席に姿を現す。
一年前の同じ日、女優であり、恋人のモニカが主演の舞台の初日、アレックスとの婚約発表を目前に謎の死を遂げた。自殺として処理された彼女の死に、深い疑念を抱いた彼は、行方をくらました。
そして一年を経た日、再び同じ劇場に姿を現した。彼はこの日、あの舞台の関係者の男優、女優、演出家、舞台監督、プロデューサー等、昔の仕事仲間を劇場に召集していた。
新作の発表と称して集められた仲間たちは、呼び出されたことを訝りながらも再会を喜んだ。アレックスは、モニカの死を殺人事件と断定していた。しかも犯人はこの中にいる。その真相が、今、暴かれようとしている。さて、犯人は……。
原作は、刑事コロンボを書いた同じ作者で、舞台は、謎解きのみのおもしろさだけでない。登場人物の深い造形。どんでん返しの鮮やかさ。そして、仲間たちをみつめるアレックスの温かい視線とモニカを深く愛していた彼の愛情。
劇中劇の構造が観客をぐいぐい舞台に引っ張っていくでしょう。
〔小谷博子〕

劇団ピュアーマリー『殺しのリハーサル』

脚本:レビンソン&リンク 脚色:D.D.ブルック 翻訳:保坂磨理子 演出:鈴木孝宏 出演:秋野太作、山本みどり、こだま愛ほか/①4月16日(金)18時30分②4月17日(土)13時30分/神戸文化ホール中ホール/会員制(入会時に入会金千円と月会費2カ月前納)、月会費3,500円(大学生2,000円、中高生500円)/Tel. 078‐222‐8651、Fax078‐222‐8653

(兵庫民報2021年3月28日付)

瀬戸恵子「ひなたぽっころりん」〈679〉


(兵庫民報2021年3月28日付)

観感楽学


「国民のみなさんから疑念を招くような会食に応じることはない」との国会答弁を二十五回もくり返した武田総務相。NTT社長と「会食した事実」があとでバレても言い逃れができるように形容詞をつけておく。例の「ご飯論法」の応用型だ▼案の定、会食自体が否定しきれなくなると「大臣規範に抵触するものではなかった」とのたまう。「国民の疑念」や「規範抵触」の有無の判断を彼自身がするのだからわたしの開いた口はなかなかふさがらない▼さらにこの答弁書を作成した方に、今度は舌まで巻いてしまう。というのも総務相答弁をテレビで聴いたときにこれは許せんと思いメモしたが、疑念を「疑惑」と書いていた。あとで新聞などを見てそれに気づいた。そして疑念の方が疑惑や誤解という言葉より印象を柔らかくし大臣を守るのに好都合な表現だということにも▼ところで若者が中心になって取り組まれているフードバンク。すでに四十五都道府県にひろがり四万人が参加している。あったかい交流の場となり政治を語り合う場ともなっていると当事者から聞いた。「GoToトラベルより大学に通える政治であってほしい」。うそと誤魔化しと沈黙、そして統制と強権で進める菅政治。それを崩し、わたしの口と舌を元に戻してくれる共同がそこにある。(T)

(兵庫民報2021年3月28日付)

2021年3月21日日曜日

兵庫県議会予算特別委員会で入江次郎議員が質疑――②各部局審査:新型感染症対策ふまえ地域医療の議論を

兵庫県議会では二〇二一年度予算案について、予算特別委員会で審議が行われています。日本共産党の入江次郎議員が予算特別委員として、連日、質疑にたっています。
 

健康福祉部局

九日、健康福祉部局では、入江委員は、地域医療構想について質疑を行いました。厚生労働省が、「二〇二二年度中を目途に地域医療構想の実現に向けた地域の議論を進めることが重要」と提起していることに対し、入江議員は、「地域医療構想の推進は、新型コロナ感染症医療を踏まえない五疾病五事業や在宅医療連携体制を推進するための第七次計画に基づいているが、コロナで状況が変わったいま、現行の計画ではなく、新型感染症対策が盛り込まれる二〇二四年度からの新しい第八次医療計画のもとで、地域医療についてあらためて議論すべきではないか」とただしました。
しかし、答弁で県当局は「地域医療構想は、限られた医療資源を有効に活用するために、関係者の合意のもとすすめられるもので、新型コロナウイルス感染症に対しても、それぞれの圏域において、ふさわしく議論がなされるもの」とし、従来の姿勢からかわらない答弁を繰り返しました。
また新型コロナウイルスによる患者数減から、大幅な赤字になるとし、「広域的な再編・ネットワークも視野に入れ、集約化による拠点づくりについて神戸市と協議しながら今後の対応を検討する」と発表した済生会兵庫県病院と三田市民病院の統合再編に向けた計画について、入江議員は「感染症パンデミック対策が全く地域の医療需要予測に反映されていないもとでのダウンサイジング・病院統廃合計画は、白紙に戻すことを県として済生会兵庫病院、神戸市に求めるべきだ」とただしました。
当局は、「円滑に検討されるよう支えていく」とするのみで、再編統廃合も視野に入れた検討を容認する姿勢を示しました。

産業労働部

十日、入江議員は、産業労働部審査では、労働委員会の労働者委員の構成などについて質疑しました。
入江議員が、労働委員会の労働者委員と使用者委員についての現在の男女構成と過去の男女構成について確認したのに対し、県当局は、「性別が示されるようになった平成五年から、すべて男性である」と答弁。
入江議員は、連合兵庫も「男女平等で多様性を認め合う社会を」と掲げていることに言及。ジェンダー平等の観点から、労働委員会の使用者側委員、労働者側委員に女性を選任するよう、委員会にはたらきかけるべきだと主張しました。
当局は、「男女共同参画推進計画が改定されるなかで、企業も組合も、ジェンダー平等の視点をとりいれ、ふさわしい対応になるだろう」との答弁にとどまりました。
入江議員は、さらに多様性の尊重というなかで、労働者委員が連合系組合からの選任が独占していることにふれ、「多様性というならば、連合系以外の組合からの選任も検討すべきだ」と主張。当局は「総合的な判断がなされている」と答弁するのみでした。

農政環境部


十一日、入江議員は、農政環境部審査で、地元住民の生活への影響が懸念され大きな不安がひろがっている上郡町・赤穂市での産業廃棄物最終処分場建設計画について質疑を行いました。
入江議員は、まず事業者が、事前協議書において提出している処分場からの放流水の千種川への影響についてただしました。
入江議員は、事業者が、処分場からの放流水について、千種川の河川流量に対し、希釈倍率千六百倍となり影響はないとしているが、記録のある一九八八年以降の河川流量が低い時では希釈倍率が二十八倍にしかならないと暴露。影響はないとする事業者に対し、「事業者は、千種川での検証はもう必要ないとしているが、千種側も含めた再検証が必要ではないか」とただすと、当局は「おっしゃる通り。事業者において再度検証を行わせ、必要となれば、千種川での再度の測定などを行わせる」と答弁しました。
また入江議員は、林地開発許可を行う場合、地元地域を流れる安室川の漁業者や水利権者に影響があると認められれば同意が必要ではないかとただすと、「一般論として、漁業者、水利権所の同意が必要」と当局は答弁。そのことも事業者に徹底することを求めました。
入江議員は、「地元では大きな不安がひろがっている。地元の不安が取り除かれない限り、事業をすすめさせるべきではない」と述べ、答弁を求めました。県環境部長は、「法令にもとづいて、厳正に審査・対処していく」と述べました。

(兵庫民報2021年3月21日付)



3・13重税反対全国統一行動――県内でも各地で:消費税引き下げに力合わせよう


消費税一〇%増税とコロナ禍により、国民の命と健康、暮らしと経営が大打撃を受ける中、五十二回目となる「3・13重税反対全国統一行動」が、感染症拡大に留意しながら、三月十二日を中心に県下各地で取り組まれました。
中央区集会では「共同の輪をさらに広げ、消費税の引き下げに力を合わせよう」との集会決議を採択し、自民党兵庫県連前をとおり神戸税務署までデモ行進。垂水区集会では、国民救援会、憲法ネットワーク、社会保障推進協議会、新日本婦人の会、年金者組合、日本共産党、民商の各地域組織の代表が発言し、共同の取り組みの広がりが浮き彫りになりました。明石集会では集会後、宣伝カー、ハンドマイクでアピールし、参加者は「憲法十三条、個人は大切」「GoToキャンペーン、そこに科学はあるんですか」などプラカードを手に行進しました。
夕方には、「抜本的な感染症検査体制の確立を、消費税五%への引き下げを、誰一人取り残さない感染症支援策を」などをスローガンに、八年目となる「三宮~元町夕方パレード」が取り組まれました。出発集会で、磯谷吉夫「3・13」兵庫県実行委員長・兵商連会長が「コロナ禍で中小業者も国民も厳しい経営、暮らしを余儀なくされている中、菅政権は『政治とカネ』問題の幕引きを図ろうとしている。抜本的な感染症検査体制と支援策の拡充を求め、今年三つある選挙で必ず審判を下そう」と挨拶。参加者は雨の中、三宮から元町までデモ行進し買い物中の市民にアピールしました。
「3・13県実行委員会」は兵庫県知事に対し、コロナ禍で世界五十六カ国に広がる消費税・付加価値税の引き下げを表明するよう要請しましたが、知事からの回答は「消費税率五%への引き下げは困難」というものでした。そこには、知事として、消費税再増税による県民生活、地域経済への打撃を考慮すべき姿勢はありません。
「3・13兵庫県実行委員会」は、統一行動を機に、命と健康、雇用と地域経済、平和と民主主義を守る諸運動をさらに前進させることを呼びかけるとともに、今こそ、政治を私物化する政権を退陣させ、市民と野党の共闘の前進で国民本位の政治を実現しようと訴えています。
〔田中邦夫=兵商連〕

(兵庫民報2021年3月21日付)

コロナ禍だからこそ賃上げを:国民春闘パレード、JMITU通信産業本部兵庫支部スト

春闘パレード

国民春闘兵庫県共闘委員会/兵庫労連は、「コロナ禍だからこそ賃上げを」「安心して働ける社会を」と三月十一日夕、三宮で春闘パレード。

通信産業本部のスト集会

同日朝にはJMITU通信産業本部兵庫支部が始業時から一時間のストを決行。日本共産党のこむら潤さんも激励しました。

激励するこむらさん

 
(兵庫民報2021年3月21日付)

ジェンダーわたしの視点「一緒に考えることが大事」党丹波地区委員会ジェンダー・ハラスメント対策委員会責任者 荻野雅世


東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の森会長(当時)の発言によって、日本社会における女性差別が世界中に発信された。百五十一カ国中、ジェンダー・ギャップ指数百二十一位であることが証明されたようなできごとでした。こんな風に世界から見られていると知らなかった私も含め、周囲の女性たちの間で話題になっています。驚きと、何でこの時代に?と腹立たしく思っています。
私は、戦後の憲法にもとづいた民主教育(一九五〇〈昭和二十五〉年生まれ)を受け、男女平等について学びました。それまでは男の人は偉くて、女の人は男の人に逆らってはいけない、間違ったことでも文句を言ってはいけないと言うのが当たり前のことと考えられていた時代だったので、家の中ではまだまだ男である父には逆らえない空気がありました。そんな中でも学校や、友達の中では男女が平等というのは当然だと過ごしてきました。それは、社会に出て働き始めても同じだったように思います。結婚して家事が生活の中に大きくかかわると、どう分担するか考えることが多くなりました。それは男である夫にとっても同じだったと思いますが、夫には言葉で伝えないと、「家事は女の仕事」というそれまでの習慣から切り替えがたく、葛藤があったように思えます。
仕事を辞めて、仕事が中心の生活から地域の自治会にかかわることになり、男女共同参画推進員をすることになりました。自分の住む自治会でどのような活動がされてきたのかということについてあまりにも無関心だったのか、活動が見えてこなかったのが現実でした。研修会への参加要請があり、参加して話を聞くと、様々な意思決定の場で女性の意見が反映されることが必要だという内容でした。こんなことを今、学ばなくてはいけないのかというのが率直な感想でした。でも、これが今の現実なのだとも知らされました。また、災害時の避難所での対応にも女性の視点が必要で、女性自身が声をあげていく中で安心して過ごせるようになったことも聞きました。
ジェンダー平等を考えるとき、誰もが思ったことを出し合えるよう、何でも話せるにはどうすればよいのか工夫して、様々な意見の中からどう解決するかを一緒に考えることが大事だと実感しています。でも今、みんな忙しそうで、ゆっくり話す時間もないと感じています。家の中での親との会話、子どもとの会話、もちろん、パートナーとの会話も。そのためにも、働く時間を短くしてほしい。

(兵庫民報2021年3月21日付)

国際女性デー兵庫県集会:会場とオンラインで96人が参加:正井禮子さん、中村衣里さんが語る

3・8国際女性デー兵庫県集会が実行委員会主催で開催されました。コロナ禍の中、昨年は中止、今年は会場(神戸市勤労会館)とオンラインで行われ、合計で九十六人が参加しました。
新婦人県本部の荻野潤子常任委員の司会で、都留佳代子実行委員長が挨拶、アントニオ・グテーレス国連事務総長と、こむら潤日本共産党兵庫県委員会国政委員長からメッセージが届いていることが紹介されたあと、NPO法人女性と子どものセンターウィメンズネット・こうべ代表の正井禮子さんが「災害時の性被害」をテーマに特別報告。
正井さんは、阪神・淡路大震災と東日本大震災の避難所や仮設住宅などでの性被害の実態調査と相談内容、改善のための運動、さらに自身へのバッシングの体験を報告し、ジェンダー平等の視点が日常的に必要だと訴えました。
記念講演は「おどろきのジェンダー平等の実態~ジェンダー平等ってなあに?から世界の到達点まで~」と題して、中村衣里弁護士(西宮Women's法律事務所共同代表)が行いました。
中村さんは、「森喜朗発言」は日本社会のジェンダー問題の縮図だと述べ、日本のジェンダーの実態を告発しました。固定的な役割分担意識の強さ、指導的地位(意思決定)への女性参画の低さ――とりわけ政治分野で世界百四十四位、経済分野で百十五位、総合で百二十一位であること、司法の分野ではとりわけ弁護士会の女性比率が低いことなどの実態を示しました。
ジェンダー平等を進めるためには、社会全体の運動で法制度を改正することとともに、教育・家庭の場での取り組みも必要だと指摘。「私たちが、次の世代のロールモデルに」と呼びかけました。
最後に集会は「ジェンダー平等社会実現、核兵器禁止条約への参加、沖縄基地の撤去、環境問題の解決など、平和で持続可能な社会の実現に貢献できる日本をつくるために、世界の女性と連帯することを決意する」とのアピールを拍手で採択しました。

(兵庫民報2021年3月21日付)


シリーズ 憲法が輝く兵庫県政へ(23)「福祉医療を切り捨てた井戸県政」兵庫県保険医協会事務局主査 小西さくら


高齢者やこども、ひとり親や障害者などの社会的、経済的に弱い立場にある県民の医療費負担を軽減する福祉医療制度は、県民の健康保持・増進のために各自治体が独自に助成を行うものです。
しかし井戸県政は、行財政改革のためとして福祉医療費を削減し続けました。福祉医療に対する県費助成総額は、貝原前知事の最後の年、二〇〇一年度予算が約百八十三億円であったのに対し、井戸県政の二〇二〇年度予算は約九十七億円とほぼ半減しています。

老人医療費助成を廃止

特に、六十五歳から六十九歳までの低所得高齢者に対して医療費の一割を助成する老人医療費助成は、二十年間で五回に分けて徐々に所得制限が厳しくされ、二〇一六年度には廃止されました。
この老人医療費助成について井戸知事は二〇〇五年の知事選挙で「対象者率(六十五~六十九歳の制度の対象となる割合)五〇%を堅持して全国一の医療費助成水準を確保します」と公約していました。この時点で井戸県政は制度の対象者率を二〇〇〇年の七割から五割へと二割削減しているにも関わらず、「全国一」とうそぶき、さらにこの後、公約に反して対象者を削減し続けました。そして二〇一五年には対象者率はわずか五%とされ、二〇一六年度には制度を廃止し、「高齢期移行者医療費助成」に移行しました。この制度は所得制限に加え要介護二以上という要件が加えられるなど対象者をさらに限定したもので、対象者率はたった二・四%です。対象者も二〇〇〇年度の二十一万七千二百人に対し二〇二〇年度はわずか九千人に、予算は二〇〇一年度の約七十四億円から二〇二〇年度に約一億八千万円となんと四十分の一に激減しています。
同様に一人親世帯等を対象とする母子家庭等医療費助成も削減され続け、二〇〇四年度には約十五億円あった予算は二〇二〇年度約四億円に、対象者も十一万人から三万人と四分の一近くまで減少しています。

こども医療費無料化前進に県は貢献せず

この二十年間で、県下各市町で大きく前進した乳幼児およびこども医療費助成においても、県は制度を拡充していません。
兵庫県保険医協会の調査で、中学三年生まで医療費を入院・通院ともに無料としていた自治体は二〇一一年度には六市町だったのが、二〇二〇年度には三十六市町(うち十八市町は所得制限なし)となり、高校三年生まで何らかの助成を行っている市町は二〇一一年度にゼロだったのが十二市町と広がっています。
しかし、兵庫県の乳幼児とこども医療費助成に対する予算額は、二〇〇一年度の約四十三億円から二〇二〇年度には約四十億円と減少しているのです。この二十年間、県は助成対象を中三まで広げたものの、ゼロ歳児以外には所得制限を設けて対象を絞り、さらに通院・入院ともに自己負担を課しています。
それにも関わらず県の制度としての無料化を求める母親や医療者の要望に対し、兵庫県の担当者は「助成対象を中三まで広げ、対象年齢では全国トップクラス。自己負担は、制度を持続的で安定的に運営するには必要」と発言するなど、無料化に背を向け続けています。
兵庫県の人口は十年連続減少しており、その主な原因は若年層の流出と言われています。しかしそんな中、高校三年生まで所得制限なしで医療費を無料化することを決めた明石市では、人口が増加しています。若年層が住みたいと思える県を作るためにも、こども医療費無料化は有効な政策です。

安心して受診できるよう福祉医療制度拡充に転換を

本来医療は国が責任を持つべきで、国の制度としてお金の心配なく安心して受診できるようにすることが必要です。しかし、国は窓口負担を軽減するどころか、どんどん負担を増やそうと制度を改悪するばかりです。新型コロナ禍の今こそ、自治体は住民の健康を守るため、受診抑制が起こらないように福祉医療制度を拡充するべきです。

(兵庫民報2021年3月21日付)

民主主義の日本めざして――「川崎・三菱大争議」100年:第十一回 弁護士の活動と自由法曹団の創立(1)

小牧英夫(治安維持法国賠同盟兵庫県本部顧問自由法曹団元兵庫県支部長)


(一)会社と官憲による解雇・人権蹂躙・刑事弾圧

労働者の闘いが急速に強化・拡大されてきたのに対し、(一九二一年)七月六日、川崎では中心的幹部である青柿善一郎、伊藤友次郎らを、三菱では同じく水野勝次、桃野今太郎らをいち早く解雇し、その後、両社とも争議参加者を大量解雇するという暴挙を続けた。
他方七月十四日ころから警察の争議干渉も激しさを増し、示威行進を一切禁止した上、兵庫署、相生橋署、須磨署などが争議参加者のいっせい検挙を始め、その数は百人を超える状況であった。青柿善一郎は十六日に須磨署に逮捕され、治安警察法違反容疑で起訴され、十九日には橘分監に収監された。
七月二十九日には新開地筋の電気局前で、川崎兵庫工場機械工の常峰俊一が、背後から抜剣した巡査に刺殺されるという痛ましい事件が発生し、翌三十日には、湊川神社西門付近で職工三木豊が抜剣した警察官に切りつけられ、手指二本を失う大怪我をした。
他方、警察は、七月二十九日夜、美術倶楽部の川崎争議団本部を急襲して賀川豊彦、野倉萬治ら幹部多数を逮捕し、さらに、神戸連合会事務所や第二互助倶楽部の三菱争議団本部などを襲い、合計二百人を超える幹部を逮捕した。久留弘三も深夜自宅で逮捕された。
指導部を奪われた争議団を立て直すため、七月三十一日朝、友愛会本部の鈴木文治会長らが来神し、川崎・三菱両争議団の残された幹部と協議し、闘争の継続に向けて宣伝活動や行商隊の編成など持久戦覚悟の方針を決定した。また、争議団連合総本部を神戸連合会事務所に置き、新たな指導体制を決定した。

(二)弁護士らの人権蹂躙調査活動

八月五日、川崎・三菱大争議における労働者の刺殺など官憲の暴挙を黙視できないと考えた東京弁護士会所属の弁護士らが会館に集まり、調査・抗議活動を行うことを決めた。そして、神戸人権蹂躙問題調査団を結成し、八月十一日朝に来神した。
東京からの参加者は、布施辰治、山崎今朝弥、谷健次郎、上村進、松谷与次郎、宮沢武七、古谷貞雄、三輪寿壮、宮崎竜介、山中正直、宮島次郎ら弁護士十四名であった。一行は、直ちに鈴木文治ら争議団指導部と協議し、ついで、地元神戸の弁護士高山義三、同高木陸雄らと相談して、合同で調査に当たることを決めた。
調査団は、翌八月十二日午前には、神戸弁護士会の西見副会長らとともに神戸地方裁判所検事局に光行検事正を訪ね、争議参加者の検挙の方針や取調べ状況をただし、あわせて警察の違法行為について厳重な取調べを要求した。同日午後には、常峰俊一殺害現場や争議団本部の検証などをした。とりわけ、湊川神社西門前付近における三木豊切り付け事件については、検事正の立会を求めた上で詳細な現場検証をした。十二日夜から十三日にかけては被害者・目撃者多数から詳細な聴き取り調査をした。
また、十三日午後から夜にかけて、日本劇場等において三回にわたり人権蹂躙問題糾弾演説会を開いた。演説会は大盛況であったが、その状況については、「資本主義が根強くなって官憲と相通ずるようになるは日本の隆盛を阻害する憂うべき現象なりと説き来るや、巡査十数名が中止々々と叫びつつ、舞台に駆上がり、弁士と格闘を演じ、聴衆また総立ちとなって一大修羅場と化せんとせしが漸く双方の了解をえて事なきを得」(法律新聞大正十年八月十八日、一八七一号)と報じられているとおり、大変な状況であった。
調査団一行は八月十五日に帰京し、多数の聴取書を付けて調査報告書を発表した。この報告書では、警察官が抜剣して騒擾を引き起こしたこと、その責任は上長官たる知事にあることを明らかにし、市民関係者や騒擾罪の被告人が自由かつ十分に事実を述べることができるよう捜査の改善を要求している。(次号に続く)


写真:神戸川崎・三菱両造船所争議での人権蹂躙問題調査で来神した東京弁護士団と争議団(兵庫区三川口町にて)。二列目右三人目=布施辰治、三列目右二人目から=賀川豊彦、宮崎竜介、山崎今朝弥、四列目中央=鈴木文治。労働者新聞45号(1921年9月8日)1面。

(兵庫民報2021年3月21日付)

日本共産党兵庫県文化後援会が総会:コロナ禍の中、文化の重要性指摘:新事務局長に濱本鶴男氏など新体制を決定


日本共産党兵庫県文化後援会は二〇二一年度総会を三月七日、新長田文化センターで開催しました。
当初、一月に開催の予定でしたが、新型コロナにかかる「緊急事態宣言」のもと延期されていたもので、十八名が参加してマスク着用や「密」に配慮しながら議論しました。
総会は、会長挨拶の後、こむら潤衆院比例予定候補(兵庫八区重複)のメッセージが紹介され、続いて小林明男・党県常任委員(写真中央)が、「二〇二一年総選挙について」と題して講演しました。
小林さんは『週刊金曜日』や『週刊朝日』の記事などを紹介しながら、日本共産党への期待の高まりと市民と野党の共闘で政治変革を起こす必要性について、分かりやすく解説しました。同時に、自・公が後退しているなかで、必ずしも日本共産党が前進しているとはいえない現状についても率直に提起し、三月二十日の志位委員長の「オンライン演説会」を聞いてほしいと訴えました。
小林氏の講演は途中で何度も笑いが起き、参加した女性から「政治の話がとても楽しく聞けて良かった」と好評でした。
講演の後、活動経過報告と新年度の計画案を濱本鶴男副会長が提案し、機関誌『風を起す』の発行計画や学習会・文化集会と作品展の計画などが承認されました。
後援会の新体制は、事務局長に濱本鶴男さん(写真右)、事務局次長に下田大助さんが新任されたほか、朝倉えつ子神戸市議と山元光さんが新理事に、堤隆二さんは副会長など、段野太一会長(写真左)以下の諸役員が提案通り選任されました。
会議はコロナ禍の中でも文化の重要性がかたられ、三菱造船OBの藤原隆美さんが飛沫に配慮しながら小声で歌を披露するなど、文化後援会ならではの和やかな総会となりました。
〔段野太一〕

(兵庫民報2021年3月21日付)

大門みきし「あれから十年――「グループ補助金」誕生秘話」連載エッセイ60


十年前の春は連日、東日本大震災の被災地を回り、津波で何もかも流された町をどう復興するかについて、現地の方々と話し合いました。とにかく工場や設備などの復旧なしに生業の再建は進みません。国会でも支援を訴えましたが、財務省は個別財産への支援はできないの一点ばりでした。
しかし質問のあと、当時の中小企業庁長官Tさんが私の部屋に来られ、個別財産は支援しないなどと言っている場合ではない、力を貸してほしいと言われました。当時の民主党政権は右往左往するだけ。野党の自民党も政権の足を引っ張ることばかり考えていましたから、わが党を信頼し相談してくれたのだと思います。
Tさんは私の意見も取り入れ、被災事業者がグループを作り復興計画を立てれば、それぞれの工場、設備などの復旧を支援する「グループ補助金」を策定してくれました。事実上、個別財産への支援です。また水産加工だけでなく対象業種を広げるべきだと伝えると、当時、気仙沼民商の建設業グループが申請していた計画をすぐ採択してくれました。その後、対象業種も予算もどんどん拡大。今では全国の災害でも「グループ補助金」が活用されるようになっています。
Tさんはその後、退官され、現在は大手商社の副社長をされています。久しぶりにお会いした時、当時のことをふりかえり、「共産党の先生と一緒に仕事をすることになるとは思ってもいませんでした」と言われたので、「私もです」と答えました。
(日本共産党参院議員)

(兵庫民報2021年3月21日付)

亀井洋示「どこまで続くぬかるみぞ」


(兵庫民報2021年3月21日付)

原発なくせ! 福島原発事故から10年、各地で行動:11日:原発なくす会が神戸大丸前でイレブン宣伝


(兵庫民報2021年3月21日付)

原発なくせ! 福島原発事故から10年、各地で行動:12日:関西電力兵庫支社前行動(カンキン)454回デモでも訴え


(兵庫民報2021年3月21日付)

原発なくせ! 福島原発事故から10年、各地で行動:13日:革新懇などが丹波地域集会


「原発再稼働反対、震災復興支援丹波地域集会」が三月十三日、丹波市柏原町自治会館で開催され、約三十人が参加しました。
丹波市革新懇を中心に毎年、開催しているものです。昨年は、コロナ禍での非常事態宣言発令でやむなく中止しましたが、今年は、バザーや軽トラックパレードはやめ、講演会のみの開催となりました。
講演では「福島原発事故十年、原発ゼロをめざす運動は~動きと変化~」と題して、速水二郎さん(元関電職員、原発なくせ自然エネルギー推進兵庫の会)が話しました。東日本大震災・福島原発事故十年目の現実、推進派の動き、原発反対運動の広がりと変化、これからのたたかいの方向などについて詳しく解説。裁判では勝利判決が何件か出てきているのは、原発ゼロの運動が後押ししていると指摘しました。
質疑も活発におこなわれました。トリチウムの害毒、原発依存自治体の問題、再生エネルギー、福島の事故現場を今後どうしたらよいか、などの問いに速水さんは丁寧に答え、「さすが専門家だなあ」との声もあがりました。
集会を終え、参加者は今年、集会を開催できたことを喜び、原発ゼロめざして取り組む決意を固め合いました。
〔西脇秀隆=丹波市議〕

(兵庫民報2021年3月21日付)

吉井英勝『3・11から10年とコロナ禍の今、〝ポスト原発〟を読む』

原発なくし自然エネ推進兵庫の会 速水二郎


『3・11から十年とコロナ禍の今、〝ポスト原発〟を読む』と、少し長い題名の本があけび書房から出版されました。著者は元衆議院議員(日本共産党)の吉井英勝さんで二百ページもありながら一気に読ませられる豊かな内容です。東電福島原発事故から十年、つい先日も強烈な余震で崩壊した一号、三号炉が圧力低下、地震計も壊れたままなど、到底アンダーコントロールが考えられない福島第一原発現場の状況です。
全体は三部構成で、計十一章にわたって原発問題の全てがリアルに解るように工夫され、最終で原発なきあとのエネルギー社会も語り、特に「原発を無くそう」と思っている人びとには必携書となっています。なぜなら、原子力研究者でもある著者自身が国会で時々の原発問題を取り上げ、原発推進の政府ならびに関係者と徹底追及するやりとり全てが現在の老朽原発再稼働問題と深く関係しているからです。
巨大な地震・津波・台風など自然現象は地球温暖化とともに強烈となっています。著者はこれを「自然災害」と呼ぶのは間違いで東電幹部や政府関係者が「想定外だった」と述べる態度を厳しく批判しています。
▽○一九九五年、阪神・淡路大震災直後の衆議院での三宮や西宮でのガル数のやりとりは、昨年十二月四日大飯原発の大阪地裁判決で取り上げられたガル数値判断とも共通しています。
▽一九九一年二月の美浜原発二号機のギロチン破断の大事故についての衆議院での具体的な追及内容から、まさに今、「四十五年経過の高浜一、二号再稼働は絶対ダメだ」ということがすぐ解ります。
▽二〇〇七年頃から福島事故の一年前の衆議院まで、繰り返し外部の全電源喪失の事態を追及していたことが議事録に記されています。
もし政府が著者の発言を真摯に受け止めていたならあの大爆発事故にはならなかったことも容易に推察可能です。さらにプルトニウム保存量と潜在的核保有についての安倍発言への追及も今日的意義を示しています。
原発問題は確かに専門的ですが、コロナ禍リスクと放射能リスクも共通した観点で考えれば理解が進むことがよく解ります。幅広い人びとが読まれることを望みます。
 
あけび書房刊
四六判、208ページ1,600円+税

(兵庫民報2021年3月21日付)

《編注》
漫然とアマゾンに頼らず、ぜひお近くの書店にご注文ください。
版元から直接買うこともできます。


こんにちは♡こむら潤です!13:住民の声届ける「宝の議席」


先日、以前から尼崎市の道路維持課に改善要望を出していた道路を通行すると、改修工事が完成していました。電柱が邪魔になり、車いすも歩行者も通れない歩道を、関西電力に電柱を数本移動してもらい、通りやすくするという少し大がかりなもので、完了までおよそ二年かかったことになります。要求が実現した嬉しさがこみあげてきました。
一月末日で尼崎市議会議員を辞職し、市議という立場でなくなると、「道路の穴を直してほしい」などの些細な要望ですら、これまでのように気軽に素早く市役所に伝えにくくなりました。一市民として市に相談することはもちろんできるのですが、少しハードルが高くなった気がしてしまいます。市民のみなさんに押し上げていただいた、貴重な一議席のありがたみを、今更ながら実感しています。
尼崎市議会にはあと五人の市議団が頑張っていますが、比例キャラバン宣伝で兵庫県内の各地に訪れると、地方議会の議員さんが一人、二人のところもたくさんあります。住民の困りごとに寄り添い、その声を行政に届ける共産党の議席は、文字どおり「宝の議席」です。
地方議会ではどうにもできない問題もたくさんあります。私も市議になって国の方針に抗えない地方自治体の実態を知り、国の政治そのものを変えなければ、まちの政治も良くならないと痛感してきました。
こんどは国会に、皆さんの声をしっかり届けるためにがんばります。
(衆院近畿比例・兵庫8区予定候補)

(兵庫民報2021年3月21日付)

兵庫山河の会 〈三月〉

こもったらだめと友の忠告に来る人もなし行く所もなし
 石井敏子

公園のハゼノキの幹小さき洞ヤマガラの尾の見え隠れして
 塩谷凉子

紅梅の小さき蕾ポツポツと今か今かと膨らみを待つ
 鵜尾和代

サーローさん「終わりの始め」いみじくも保有国ら心に止めよ
 西澤 愼

ゆきすぎしこの年月をゆるぎなき心をもちて生きしかと問う
 山下 勇

梅の樹の下で写真を撮る母子マスクはずしてニッコリ笑う
 大中 肇

梅咲きて今がいちばん幸せと胸でつぶやく七十路のわれは
 古谷さだよ

廃村を再生せんと集いたる若者の目は鋭く輝く
 岸本 守

ときじくの如月の陽の温かく空のまほらに父母いる如し
 山下洋美

クレヨンの肌色の名前疑わぬ無知を思い知る人種差別の
 古賀悦子

(兵庫民報2021年3月21日付)



観感楽学


韓国の平和団体「平和と統一を開く人々」(SPARK)が平和行進を計画している。「被爆七十五年・朝鮮戦争七十年――朝鮮半島非核化と平和協定締結への道に平和勢力の結集を」の旗印に行う「南北鉄道連結大行進」だ▼一九四八年以前、釜山~ソウル~平壌~新義州を結んでいた南北鉄道路をたどり訴える。朝鮮戦争後、分断された鉄道は一九六七年に廃線となったが、二〇〇〇年南北会談で南北の鉄道連結を合意。一八年の南北首脳会談「板門店宣言」でも再確認されたがその後の米朝首脳会談の決裂もあって実現できていない▼韓国最北端の都羅山駅に行ったことがある。非武装地帯を目の前にしたホームの駅名板にはソウルおよび平壌への距離が表記されていた。寸断されたレールが繋がれることは「統一」の証だ▼行進は四月二七日から七月二四日、釜山から大邱、大田、ソウル、臨津閣まで七メートル×二十五メートル×高さ一・五メートル、重さ百五十キ ログラムの朝鮮半島を模ったオブジェを伴って行われる。兵庫県の行進と同時期だ▼非核「神戸方式」を米軍の拠点の釜山港に適用めざす運動との共同が続いている。釜山市からの出発に参加しないかと魅力的なお誘いを受けた。非核神戸港と非核釜山港の共同をさらに強める機会だがコロナ禍のもとでは?(K)

(兵庫民報2021年3月21日付)

2021年3月14日日曜日

兵庫県議会予算特別委員会で入江次郎議員が質疑①財政状況:消費税増収が病床ダウンサイジングに


兵庫県議会では、予算特別委員会が設置され、二〇二一年度予算案について、本格的に審査が始まりました。日本共産党からは、入江次郎議員が予算特別委員に選出され、五日、財政状況の質疑にたちました。

消費税五%への減税、法人税収の引き上げを

歳入について、入江議員は、前年比九百十九億円の減となった県税等収入について質疑。前年比五・二%減の二千三百十二億円を見込んでいる地方消費税について、「コロナの影響だけでなく、二〇一九年十月の消費税の一〇%増税の影響で、経済が縮小し、個人消費が冷え込み、税収にも影響しているのではないか」とただし、「苦境にたつ中小、小規模事業者支援策としても五%への減税を行うべきだ」と求めました。
県当局は、「社会保障の充実、財政構造の安定化のために、地方消費税収は必要。増収分は社会保障充実の財源となっている」と、消費税五%への減税に背を向けました。
入江議員は、一方で、二〇二一年度の税制改革において、研究開発減税の拡充やDⅩ投資促進税制など大企業向けの減税が行われていると指摘。兵庫県の影響額を問うと、「二千三百万円の減税となる」と答弁しました。
入江議員は、「苦境に立つ中小事業者には、赤字でも消費税の支払いをうながしながら、大企業には減税を行い優遇するのは、コロナ禍から暮らしと営業を救うのとは逆行しているのではないか。税収について、地方消費税収は全体の三二・八%も占めるのに、法人関係税はわずか一九%。九〇年代には、四〇%を占めていた法人税収を引き上げるために、大企業減税をやめさせ、応分の負担を求めるべきだ」と主張しました。

保健師の増員を

入江議員は、地方財政計画による保健師等保健所職員の増員等について質疑。入江議員は、「国は、地方財政計画にもとづいて、保健師等の保健所職員について標準団体(人口百七十万人、九保健師)で感染症保健師を六人、感染症以外の保健師を八人、保健師以外の保健所職員を二人増員し、交付税措置を行っている。兵庫県で、それぞれ、何人の増員が見込まれるのか」と問いました。
県当局は、「感染症保健師は八人、感染症以外の保健師は十人、保健師以外の職員は、二~三人となる」と答弁。さらに、実際の増員数を聞くと「七人」と回答しました。
入江議員は、「感染症対策において、保健師職員は要となっている。それ以外の保健師職員も含め、少なくとも国の措置どおりの増員、七人のみではなくせめて二十人以上の増員を行うべきではないか」と要求。県当局は、さらなる増員への言及は行いませんでした。

病床削減を消費税収入で行うな

入江議員は、「消費税増税による増収分は、全額社会保障に使っているというが、そのメニューの中に、来年度からダウンサイジング支援金など、地域医療構想に基づく病床削減メニューが入っている。なぜか」とただしました。
当局は、「地域完結型医療のために必要」などと答弁しました。
入江議員は、「このコロナ禍において、ベッドが足りないといわれるときに、誰が、消費税を払って、病床削減をすすめてほしいというのか。県民からは到底理解されない。地域医療構想にもとづく病床削減はいったん中止し、必要な社会保障にまわすべきだ」と迫りました。

(兵庫民報2021年3月14日付)

赤穂市議選迫る(3月28日告示・4月4日投票):日本共産党ふかまち直也さん事務所開き


三月二十八日告示・四月四日投票で行われる赤穂市議選に日本共産党から新人の、ふかまち直也さん(34)=写真右端=が立候補を予定しています。立候補予定者は定数十八に対し現職十三人、新人七人計二十人となる見込み。
ふかまちさんは赤穂城近くに事務所を開設。七日に事務所開き(街頭演説会)が行われ、三十人余りの市民が沿道などで訴えを聞きました。
川本孝明・小林篤二の両市議は、日本共産党が一九六五年、赤穂市議会に議席を得て以来、「ガラス張りの議会」「市民が主人公」「福祉第一の市政」の姿勢で一貫し、大企業にもズバリものの言える共産党市議団の果たした役割は大きいと紹介。今回、二人は体調により引退するが、若い力・ふかまちさんを全力で支えると誓いました。
姫路市議団の森由紀子市議も、赤穂市での産廃処分場建設を許せば、姫路市民である家島住民の飲み水に影響が及ぶと指摘。一議席だから大丈夫との楽観論が一番危ない、ふかまちさんへの支援の輪を大きくと訴えました。
ふかまちさんは、高校一年生の時に赤穂市議会を初めて傍聴、その後も共産党議員団が鋭い質問で市民のために活動している姿をみて、数年前に入党した経緯などを語りました。
さらに、「千種川の水、市民の命の水を守るためにも、産業廃棄物最終処分場は絶対つくらせてはなりません」「子育て支援のためにも、給食費の無償化を」「市内循環バス『ゆらのすけ』が通っていない地域への乗り入れ、便数の少ない地域への増便・増車で、公共交通困難地域を無くします」「国政でも赤穂市政でもクリーンな政治を実現しましょう」「赤穂市には国の悪政から市民の暮らしを守る責任があります。そんな市政にかえるため、全力で頑張ります」と、力強く決意表明しました。

(兵庫民報2021年3月14日付)

3.20近畿オンライン演説会:成功させようと取り組み広がる


3.20志位委員長近畿オンライン演説会(三月二十日十四時~十六時、https://youtu.be/sdCVZw_7ryU)があと一週間余となりました。
 
総選挙勝利に向け、近畿二府四県で一万カ所、五万人の規模でいっせいに視聴する初めてで空前の取り組みです。兵庫県の党と後援会では千五百カ所の視聴会場をつくり、一万人の参加で成功させ、「いまが選挙」と立ち上がりをつくり、対話をすすめ、比例四十六万票、一七%以上で、こむら潤比例候補(八区重複立候補)を含む近畿ブロックで四議席回復を何としても勝ち取ろうと演説会の取り組みが各地で広がっています。
 
神戸西地区委員会は、四日現在で視聴会を九十五会場まで広げ、百五十七人が参加を約束しています。三行政区の後援会とも力合わせ、すべての支部と単位後援会で取り組もうと頑張っています。西区の桜ケ丘支部では、一人ひとりからネット環境を聞くと、パソコンを持っていてもYouTubeを見たことがないと分かり、ネットに明るい人がじっくり援助して六カ所で開催できるようになりました。「これで安心して視聴参加を呼びかけられる」と喜びの声が上がっています。西神ニュータウンの支部でも、全党員に視聴環境のアンケートを取り、一人ひとりの条件に応じた視聴環境を整え、二カ所以上の会場に十人の参加約束を取っています。地区委員会は、視聴会場、参加者を増やそうとWi-Fiのレンタルを呼びかけ、申し込み窓口をつくるなど「ネット環境づくり」にも取り組みを強め、小中規模でも視聴できるように援助をしています。
 
兵庫・長田・北地区委員会の長田区の長楽支部では、地域のコミュニティ施設「ふたば学舎」を視聴会場として借り、ネット環境も確認し、駒ヶ林支部と合同で参加のよびかけを進めています。
 
西宮芦屋地区委員会の民青同盟の学生班も視聴会場を決め、つながりを生かして三人、四人と参加の呼びかけをしています。
 
今回のオンライン演説会の最大の魅力は「政権交代のキーパーソン」志位委員長の演説です。比例候補が座談会形式でお話しするなどさまざまな工夫がこらされています。若い人も高齢者も元気と確信が得られる演説会。最後まで演説会成功へ心ひとつにがんばりましょう。

(兵庫民報2021年3月14日付)


たけやま彩子(49)さん:私たちもがんばります!:衆院比例近畿ブロック180万票・得票率20%を――比例候補の自己紹介


兵庫県のみなさん、こんにちは。私は、昨年十月から日本共産党京都府委員会で女性部長、まんなか世代活動チームとジェンダー平等委員会の事務局長をしています。
大学卒業後、印刷会社でデザインの仕事を始めたころに、沖縄米兵少女暴行事件への悲しみと怒り、基地をなくしたいという思いが大きなきっかけとなって民青同盟に加盟。その後、共産党に入党しました。二〇〇一年に京都府長岡京市の市議選に立候補。以来二〇一八年まで二人の子どもを出産、夫と子育てをしながら、市議をしていました。住民の声をきき、多くの方と要求実現の運動をする中で、政治は暮らしのなかにある、と実感しました。
人を大切にする政治に。政権を私たちの手で。全力でがんばります。

HomePage: https://takeyama-saiko.net (takeyama-saiko.net)
Twitter: たけやま彩子さん (@takeyamasaiko2) / Twitter

(兵庫民報2021年3月14日付)

西田さえ子(49)さん:私たちもがんばります!:衆院比例近畿ブロック180万票・得票率20%を――比例候補の自己紹介


大阪市生野区で自営業を営む家に生まれ育ち、非正規で働きながら夜間大学に進み放送大学を卒業しました。
二〇一一年に入局した生野民主商工会で様々な業者と出会い、中小業者は地域で雇用を生み出し文化の担い手になっていることを知りました。持続可能な地域社会は中小業者の存在があってこそと考えるなか、人間が能力を全面的に発展させることのできる共産主義社会をめざす日本共産党に共感し、入党しました。
中小業者に非情な政治を変えたいと二〇一九年には大阪市議選に挑戦し、今回の総選挙では比例候補として、コロナ禍の中で中小業者を淘汰する政策を進める菅政権を政権交代に追い込む野党連合政権を実現するために全力を尽くしています。

西田さんの野区で自営業を営む家に生まれ育ち、非正規で働きながら夜間大学に進み放送大学を卒業しました。
二〇一一年に入局した生野民主商工会で様々な業者と出会い、中小業者は地域で雇用を生み出し文化の担い手になっていることを知りました。持続可能な地域社会は中小業者の存在があってこそと考えるなか、人間が能力を全面的に発展させることのできる共産主義社会をめざす日本共産党に共感し、入党しました。
中小業者に非情な政治を変えたいと二〇一九年には大阪市議選に挑戦し、今回の総選挙では比例候補として、コロナ禍の中で中小業者を淘汰する政策を進める菅政権を政権交代に追い込む野党連合政権を実現するために全力を尽くしています。


(兵庫民報2021年3月14日付)

西宮芦屋市民アクション総会:政策合意で魅力アピールを

安倍九条改憲NO!西宮芦屋市民アクションは二月二十日、上脇博之神戸学院大学教授を迎えて講演会・総会を行いました。
共同代表の魚谷直生さんが、「改憲ストップへ、自公政権を何としても倒そう」と開会挨拶をしました。


来賓の(写真左から)立憲民主党七区総支部長の安田真理さん、日本共産党西宮市議のまつお正秀さん、社会民主党兵庫県連合代表・宝塚市議の梶川みさおさん、(右から)新社会党芦屋総支部副委員長の前田辰一さん、(三人目)西宮市議のよつや薫さん、(二人目)田中あきよさんが「戦争は、どんなことがあっても起こしてはならない。改憲を何としてもストップを」「市民のみなさんと一緒になって政権交代しなければならない」などと連帯挨拶。
「改憲ストップへ、政権交代を!」と題し講演した上脇教授は、「政権交代したいと思っているし、それは可能。そのためには、①アベスガ政権がひどかったかという問題と②それに代わる市民と野党の政策合意も含めてもっといい政権をつくり本当に国民のための政権ができるというアピールの両方を相手に応じて訴えることが大事」と前置き。小選挙区制と政党助成法による政治劣化の実態、自民党の改憲策動などを明らかにしながら、「どう考えても政権交代しなければならない」と述べ、「森友学園」問題、「桜を見る会」問題など真相を解明しなければならない、明文改憲と戦争する国づくりを止めなければならないし、違憲の法令を廃止しなければならないとし、「政権交代のためには、統一候補をつくればいいという問題ではない。政策合意が必要だ。棄権している人たちに、〝魅力ある野党政権、候補者だなあ〟と思える選挙にすることによって政権交代していただきたい」と強調しました。
参加者からは「政権交代できるという方向が良く分かりました」「政権交代で憲法が生きる政治を実現したい」などの感想が寄せられました。
〔樫村庸一〕

(兵庫民報2021年3月14日付)

シリーズ 憲法が輝く兵庫県政へ(22)「兵庫県は責任を持って、県民の願いに応える公共交通の実現を」神戸の交通問題連絡会事務局 松本勝雄


日本は高齢化、少子化、人口減少などが進み、住み慣れたところに住み続けることができない問題に直面し、公共交通の重要性が高まっています。
神戸市東灘区の高台に二〇〇五年実現した「住吉台くるくるバス」は、不便で高齢になると転居しなければならなかった地域を大きく変え、「バスができて買物回数や、趣味習い事、気分転換の外出が増えた」の声が聞かれました。また、車に乗る回数が減り、自家用車を手放した人もあり、定住志向が八割を超え、地域への愛着も強まりました。さらに住吉駅周辺の商店街の賑わいにも貢献、住む人の生活の質が高まりました。
*
日本の公共交通は独立採算が当然とされ、民間も含む交通事業者の〝黒字〟が運行の基準であり、大事な公共交通の責任が交通事業者まかせとなっています。少子高齢化が進み、過疎化した地方から公共交通の危機が広がり「規制緩和」が危機を加速させました。こうした〝危機〟に国の交通基本政策を求める声が広がり、国民の権利として「交通権」を求める声もうけて論議が行われ、二〇一三年に「交通政策基本法」がつくられました。しかし、与党や官僚などの妨害で「交通権」も移動する権利も見送られ、「交通に対する基本的な需要を適切に充足」と後退しました。「安全」も抜け、逆に国際競争力強化を前面に大型開発・交通インフラ整備が持ち込まれ変質させられ、二〇二〇年の改定ではさらにリニア新幹線や東京外環道など推進のためと言える「基幹的な高速交通網の形成」まで入れられました。
しかし、交通問題の解決をめざす取り組みは全国の自治体などで行われ、「交通基本条例」などがつくられ、住民の移動を支えることを自治体の大事な責務とし、交通事業者や住民とともに交通政策を確立する動きが広がりました。
*
いま地域交通政策で求められるのは、①全ての住民の移動を支えることを基本理念とすること、②そのため公共交通の責任は自治体など公的部門にあると明確にすること、③地球温暖化やエネルギー問題などからも、自家用自動車利用を抑え、環境と省エネにやさしい公共交通を優先すること、④安全をきちんと位置づけること、⑤交通手段として公共交通を選択する、そのためにも高齢者と子どもたちから始めて運賃・料金を低く抑える政策をすすめること、⑥鉄道やバスなどの乗り換えやダイヤを会社が違っても一体的に改善し、親しみやすく魅力的な交通を作り出すこと、⑦住民参加による公共交通と、まちづくりを一体的に進める「交通まちづくり」とすること、⑧公共交通は住民の運動や社会参加を通じて健康寿命を伸ばし、医療費も抑えることが明らかであること、⑨国、県、市町村や、交通事業者と住民の役割などを明確にして交通政策を進めること―などです。
交通政策で決定的なのは財源です。国などが財源をしっかりつくるよう求め、権限とともに地方へおろすことが必要です。巨額な財源をつぎ込んでいる高速道路建設計画をあらため、公共交通の財源とすることを決断すべきです。
兵庫県は二〇一三年に「ひょうご公共交通十カ年計画」を改定しており、その見直しをやるとしています。この間の交通政策の前進や、欧州など世界によく学んで、県民の願いに応える公共交通実現へ、責任も明確にし、「交通基本条例」などとして交通政策の発展を図るべきです。県として各市町が取り組む公共交通問題に政策立案や、財政的な支援をしっかり行うこと、各市町の交通問題担当職員の能力向上への支援をすることなども盛り込むべきです。
神戸電鉄粟生線の問題で、二〇二〇年沿線各市の市民でつくる「粟生線の会」は共同で兵庫県に対し、①粟生線への支援を強めること、②神戸、三木、小野の三市にまたがる活性化協議では京都府などのように県が主導的役割を果たすこと、③北播磨各市町も加え経営形態もふくめた立て直しを検討することなどを申し入れました。粟生線のような市町をまたがる公共交通の問題は、兵庫県が粟生線を基幹交通と位置づけ主導的役割を果たさなければ解決できません。 

(兵庫民報2021年3月14日付)

憲法県政の会がオンライン学習会:選挙戦でのウェブ活用強化へ――メインスタジオと28会場結び開催


「憲法が輝く兵庫県政をつくる会」は三月六日、コロナ禍の選挙戦においてウェブ活用を強化する目的で、「オンライン学習会」を開催しました。
学習会では、代表幹事の石川康宏さん(神戸女学院大学教授)はミニ講演「本気のSDGsを兵庫から」で、「ポスト井戸県政」を考える上で、二〇一五年の国連総会で合意された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」(SDGs)が重要な指針になるとして、その歴史や十七項目のグローバル目標を詳しく紹介しました。
その上で日本政府は、二〇一六年にSDGs推進本部を立ち上げているが、「貧困をなくそう」「気候変動に具体的な対策を」などの重要項目を棚上げし、そのかわりに財界が求める成長戦略(ソサエティ5・0)や自治体のサービスを骨抜きにする「地域創生」を掲げるなど、自公政治の正当化にこれを悪用する姿勢をとっていると批判。「憲法県政の会」が掲げてきた政策とSDGsは基本的に同じ方向を目指しており、これが「市民と野党の共闘」を知事選で実現していくのに重要な役割を果たすと強調しました。
最後に、津川知久代表幹事が行動を提起。「①地域の会、加入団体が役員会、総会、学習会などを開き活動の再開を②地域の会、加入団体は要求を整理して政策づくりへの着手を③「県政の会」として知事選挙における市民と野党の共闘に努力するとともに、地域での人と人とのつながりを生かした働きかけを④コロナ禍の中、ネット選挙に習熟することは不可欠。若い人にも大胆に依拠して取り組みを――あと四カ月、今日を契機に県政を変えていく行動を積み重ね、広げていこう」と呼びかけました。
学習会では、メインスタジオと二十八会場をウェブで結び四人が発言。「コロナ禍から命と暮らしを守る電話相談会で寄せられた切実な声に応える県政を」(兵商連)、「少人数学級の実現、ジェンダー平等の立場に立つ県政に」(新婦人西宮支部)、「非核の東アジアづくりに貢献する兵庫県政を」(兵庫県原水協)、「コロナ禍の中、病床削減となる地域医療構想を進め、県庁再整備も継続しようとする県政の転換を」(共産党県議団)などとエールを交換しました。
また、選挙戦に向けての新たな取り組みとして、新婦人兵庫県本部と兵庫民医連作成のショートムービーが上映されました。兵庫県知事選挙は、七月一日告示、十八日投開票でたたかわれます。
〔田中邦夫〕

(兵庫民報2021年3月14日付)

淡路市浅野神田の県有地を住民に説明なく売却:サッカー場として使えなくなるなど困惑

兵庫県が三月議会に提案・可決された議案の中に、淡路市浅野神田の県有地三十一万三千平方メートルを取得時の約十分の一の価格五億円で「パソナ」に処分(売却)することが含まれています。(写真は筆者のツイートから)
その用地の中にあるサッカー場が使えなくなったことについて、子どもサッカーチームのコーチは「昨年の秋ごろに、(サッカー場が)三月いっぱいまでだと聞かされ、決定事項として聞かされたので、仕方がなかった。淡路市からは代わりに、小学校のグラウンドを使えというが、小学校側との話はできていないので、本当に使えるかどうかはわからない。それに小学校のグラウンドは必要な広さがなく、コートが取れない。試合ができない。代替え地がなく、北淡地域には試合ができる場所がなくなった」と語っています。
また、地域の住民は「そんな話は初めて聞いた。用地には県の土地だけでなく、私有地も入っている。すでに売却したのだろうか。住民には説明会などされていない。パソナが何に使うか知らないが、近くに学校があり、ウィズタウンの分譲地があり入居者が増えている。住民に説明なしに進めるのは問題だ」と語っています。
岡田のりお=日本共産党淡路市地域くらし対策部長〕

(兵庫民報2021年3月14日付)


芦屋保健所の存続・拡充を:芦屋・あたたかい会が知事に署名提出

「芦屋保健所の存続・拡充を」と署名運動に取り組んできた「あたたかく民主的な市政をめざす芦屋市民の会(略称 あたたかい会)」(木野下章、濱本鶴男代表)が三日、二月末までに集めた署名千三百八十一筆を兵庫県知事に提出しました。
兵庫県は「行革」の一環で、阪神地域の行政区域の統合と、それにともなっての芦屋保健所の廃止・宝塚保健所への統合計画を決めていました。
「コロナ」禍で保健所の大事な役割が浮き彫りになったなか、「あたたかい会」は昨年夏、「芦屋保健所の存続・拡充を求めるよう」、芦屋市議会に請願。市議会は全会一致で採択。国・県に保健所の統廃合をやめるよう求める意見書も全会一致で可決し、国・県に送りました。
それにもかかわらず、県当局は「統合後にも『分室』として一定の機能は残すが、宝塚保健所への統合は既定方針どおり」との態度をとり続けています。
以後、「あたたかい会」が提唱した署名運動が取り組まれてきました。この問題はほとんどの市民にとっては〝まったく知らなかったこと〟。「芦屋保健所がなくなるってご存知ですか?」と問いかけながら対話の輪を広げていく署名運動となりました。
この日、第一次分としての署名の束を受け取った県社会福祉課長の岡田英樹氏は「分室として、どんな機能を残すか検討している」などと話しましたが、「あたたかい会」代表は「〝統合ありき〟ということ自体がよくない」「直接影響を受ける芦屋市民がほとんど知らされていないままだ」「市議会の意見書を県としてどう受け止めたのかも伝わってこない」と批判。重ねて市民・県民の声にきちんと向き合うよう求めました。
当局に署名を渡したあと、「あたたかい会」代表らは、県議会の各会派と無所属県議にも署名を提出したことを伝え、支援を要請しました。
〔副島圀義=あたたかい会事務局〕

(兵庫民報2021年3月14日付)


宮本たけし「山宣のDNA受け継ぎことし必ず政権交代を」連載「東奔西走」11


三月五日は戦前の代議士山本宣治が右翼の凶刃に倒れて九十二年目の命日でした。
山宣は一九二八年の第一回普通選挙に京都二区から立候補し当選。 第五十五・五十六回帝国議会では治安維持法の死刑法への改悪に、真正面から反対の論陣をはりました。
この日、衆議院で反対討論を行う予定でしたが、与党の動議により強行採決され、討論できないまま可決。 その夜、右翼団体の構成員に刺殺されたのです。
それを報じた「赤旗」一九二九年三月二十日号では、「ただ彼はまだわが党に加入していなかった」としながらも、「彼は現在の『無産党代議士』の中で階級的立場にふみとどまった唯一の人であった。それ故に、敵は『無産党代議士』の中で、彼を選んで殺したのである。疑いもなく彼は労働者農民のために倒れたのだ」とし、日本共産党は「今や同志山本宣治をわが党党員としての資格を以って葬る」と宣言しました。
毎年、命日には京都宇治で墓前祭が執り行われています。今年の第九十二回墓前祭には立憲民主党国会対策委員会から、心のこもったメッセージが届きました。そこでは「山本先生のDNAは今、脈々と日本共産党に受け継がれております」と述べるとともに、「いまこそ、野党と市民が結集し、山本先生が望んでいた大衆のための政治、貧しきものや決して省みられることのない人に光を当てるための政治を実現するため、政権交代を実現しなければなりません」と力強く呼びかけられました。
今こそ山宣のDNAを受け継ぎ、今年の総選挙で必ず政権交代を成し遂げなくてはならないと決意を新たにしました。
(日本共産党前衆院議員)

(兵庫民報2021年3月14日付)

国会議員団兵庫事務所だより:県内比例キャラバン


日本共産党兵庫県委員会は今、こむら潤国政委員長(近畿比例・兵庫八区重複)を先頭に、日本共産党と政党名で投票する比例代表選挙で、県内四十六万票以上を獲得し、近畿で必ず四議席を回復させるための「県内比例キャラバン」に取り組んでいます。

二月に入ってからは、芦屋市、猪名川町(八日)、赤穂市、相生市、上郡町(十五日)、宍粟市、佐用町(十八日)、香美町、新温泉町(二十日)を訪ね、二十五日には西脇市と多可町を予定しています。

こむら氏は、新型コロナ感染拡大で医療現場が危機的状況に陥っている原因が、保健所と公立・公的病院を減らし、今なお病床削減を推し進めようとしている自公政権にあることを告発し、「国民の命と健康を守ろうとしない政治から、社会保障最優先の政治にきりかえましょう」と呼びかけました。

また、東京五輪組織委員会の森前会長の女性蔑視発言とその後の経過に触れ、「私は日本でもぜひジェンダー平等社会を実現したい」と決意を語り、「国民が声を上げれば政治は変わります」と支援を訴えました。

散歩途中に足を止めて耳を傾ける、わざわざ家の中から出てくる、車窓から手を振るなど、どこでも激励が寄せられました。

四月に市議選が予定されている赤穂市ではふかまち直也予定候補が、町議選が予定されている香美町では山本賢司、谷口眞治両議員も訴えました。

(兵庫民報Web版のみ)


ジェンダーわたしの視点:「素直に心のままに」神戸西地区委員会常任委員 八鍬知子


令和の時代、会社の休憩時間のお茶は、給湯器や自販機などで自分が好きにとれるようになっています。女性の「お茶くみ」は、昭和の死語になっているのならうれしいことです。以前、新入社員の男性が「女性はお茶を入れるのが好きなのですよね」と発言した時、女性陣から「なにも好きなことないわ」「仕方がないから入れてるのよ」と大反撃されて男性はびっくり。いつもお茶を入れてもらっているのが当たり前だった彼は、「私作る人」ではなくて、「僕食べる人」として育てられたのでしょうね。私の家庭は共働きでしたから、夫や子供もみんなが協力して家事をしていました。「私もあなたも作る人」でした。
女性が社会進出するためには、希望者全員が保育所に入れることと、送迎も夫婦でできるように男性も定時で帰れることが必要だと思います。私自身、保育所の送迎が一番大変でした。二人だけの努力でできるものではありませんでした。二十一世紀になった今、いろいろな制度ができていてもまだまだ負担は大きく大変です。
ジェンダー・ギャップ指数百二十一位の日本が、みんなが少しずつ声を上げていく中で変わっていっています。わたしは、「原始女性は太陽であった」「女性が変われば、社会が変わる」という先人たちの言葉をずっと胸に抱いてきました。自分は、〇〇さんの妻、〇〇ちゃんのお母さんではなく、私は私でありたいと思っていました。
一人一人に光が当たることが大事です。男、女だからというのではなく、一人の人間として自由に、自分の思いや考えを話すよう心がけています。「本音と建て前」「長いものに巻かれろ」「出る杭は打たれる」なんて言葉がありますが、本音で生きていたいです。出る杭になって打たれてもいいです。自分の心のままに自由でいられることを大事にしていきたいです。普通の人が声を上げていくことでどんどん変わっていく世の中に期待しています。素直に心のままに。

(兵庫民報2021年3月14日付)

国際女性デー行動:日本共産党兵庫県女性後援会と党県委員会ジェンダー平等委員会が宣伝


国際女性デー(3月8日)を前に日本共産党兵庫県女性後援会と党県委員会ジェンダー平等委員会は7日、神戸元町・大丸前でリレートークを行いました。川島あゆみ芦屋市議(左端)は地方議会での女性議員の比率の低さの改善を訴え、こむら潤衆院比例・兵庫8区候補(写真左から3人目)は、日本共産党がジェンダー平等社会をめざしていること、自らも3人の子どもの母親であることを紹介して、「ジェンダー平等の視点で一緒に考え、その声を国会に届けたい」と訴えました。

(兵庫民報2021年3月14日付)

日本共産党兵庫県委員会ジェンダー平等委員会が災害と女性をテーマに学習会

 日本共産党兵庫県ジェンダー平等委員会は災害時の性被害をテーマにした学習会を開催。NPO法人女性と子ども支援センター ウィメンズネット・こうべの正井禮子さんが、「災害を女性の視点から検証する〜ジェンダー平等社会の実現をめざそう」という演題で講演しました。

*

正井さんは、阪神・淡路大震災直後に女性支援ネットワークを立ち上げ、避難所への物資の配布や女性のための電話相談などに奔走しました。活動する中で、メディアで流される美しい家族愛の陰に、孤軍奮闘する女性たちがいると知ったそうです。当時、女性の人権は後回しにされ、被災地における性暴力はなかったことにされるばかりか、声を上げた女性たちへのバッシングまで起こっています。

その後、二〇一一年の東日本大震災の際にも、様々な支援団体と共同して現地で調査や支援を行い、防災や復興対策に女性の参画をと活動してきました。

また、ジェンダー・ギャップ指数百二十一位(百五十三カ国中)という日本社会を変えるために、ジェンダー平等教育の必要性や、全ての立法過程においてジェンダー平等の視点をと、台湾やニュージーランドの事例も紹介し、女性の議員を増やすためのクオータ制やパリテ法導入も提起しました。

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日本共産党兵庫県ジェンダー平等委員会が発足して、約一年になります。今後も先駆的な運動に学び、党として自己改革を進めながら、誰もが自分らしく生きられるジェンダー平等社会実現に向けて力を尽くします。

〔佐藤結=同委員会事務局長〕

(兵庫民報Web版のみ)



民主主義の日本めざして――「川崎・三菱大争議」100年:第十回 尼崎での労働運動のスタート

藤原紀嘉(治安維持法国賠同盟兵庫県常任幹事)

友愛会支部の創立と争議の続出

尼崎では、米騒動の翌一九一九年三月、リバーブラザース工場の労働者により友愛会大阪連合会武庫川支部、七月には大日本紡績尼崎工場で尼崎支部がそれぞれ結成され、旭硝子のストライキ、八月にはリバーブラザース工場五百人の半日サボタージュ、尼崎駅仲仕六十人の三割賃上げ要求運動と続き、十月に大阪合同紡神崎工場三千四百人が七割、大日本木管三百八十人が五割の大幅賃上げを掲げ争議を起こした。
一九二〇年春の恐慌以後は、工場閉鎖・操業短縮による大量の人員整理が続き、旭硝子、関西ペイントなど解雇反対の争議が続発した。翌一九二一年二月、東亜セメント二百五十人余の労働者が、一五%の賃下げと労働時間延長反対のストを決議、友愛会大阪連合会の支援を要請。三月三日夜、杭瀬火葬場で西尾末広・藤岡文六らの指導で友愛会尼崎支部が再建され、百四十余人が入会。会社側は、スト参加者全員を解雇する方針をとり、大阪連合会からは連日二~三百人が応援して街頭デモを行う。争議は六日、解雇百六十一人、解雇手当一万五千二百八十五円余(一人平均実収の三十日分)および帰国旅費を獲得し比較的有利に解決した。これは恐慌下、解雇の脅威にさらされた尼崎の労働者に大きな激励となる。
総同盟友愛会は、尼崎支部結成後、東亜セメントの被解雇者による第一支部、久保田鉄工所を中心とする第二支部、大日本木管・日本硝子・ユニオン硝子による第三支部に再編成され尼崎支部連合会を結成。九月十五日これらの尼崎支部、武庫川支部、犠牲団、西宮支部(樽工組合が加わる)が合同し、総同盟大阪連合尼崎合同組合(組合員約七百人)が結成された。
(この節:一九七〇年版『尼崎市史』第三巻から抜粋要約)
  

川崎・三菱争議支援に参加し全国の闘争の一環を実感

久保田鉄工の山下栄二は、十九歳で争議に参加、尼崎の争議は全国の大争議のうねりの一つだということを、川崎・三菱争議支援に参加し、実感したという。一九二一年七月、久保田から五、六十名で神戸に行き騎馬巡査警戒の中、新開地でのデモに参加、八時間労働制実施、退職手当・解雇手当制定、組合団体交渉権など共通の要求で立ち上がり、労働運動に加わる決意となり、一九二三年二月久保田鉄工労働総同盟支部をつくった。二年間賃金は上がらず、組合で日給三十銭値上げ要求をだし、五日間ストを決行、二十銭の賃上げ獲得する。翌年は、久保田が軸になり尼崎金属労組をつくる。地域産別横断的労働組合となった。久保田から、国領五一郎(一九二七年日本共産党中央委員、一九四三年獄死)の弟の国領巳三郎や上森四郎など共産党の活動家も生まれる。

資本の労働対策の急対応と労働運動の新局面へ

「この時期に注目すべきは工場委員会(労働委員会・工場協議会)が多くの工場で成立したことである。十年(一九二一年)七月の日本電線製造の工場協議会をはじめ、八月に住友伸鋼所、九月には久保田鉄工所・大日本木管、十月にリバーブラザース、十二月に中外ゴム、関西亜鉛など、尼崎だけで六工場に協議会ができたことは、総同盟友愛会組織の伸張とともに、尼崎における労働運動の高揚を反映するものといってよい。それは同時に尼崎が阪神間の大工場地帯として、経営者の労働対策が急速に進められていたことを物語っている」(山崎隆三)
このことを顕著に示したのが住友伸銅所尼崎工場争議であった。一九二一年四月労働者の三割に及ぶ解雇後、労働条件は悪化、住友工場協議会員選挙で組合側が圧倒的勝利したが、経営者側は「協議会の審議内容に賃金等含まず福利厚生のみ。諮問機関であり、決定の実行に経営側が拘束されない」と労働者の要求を突っぱねた。労資協調的機関であると労働者にも明白になり、一九二二年二月の住友職工大会で工場協議会否認宣言をする。この時は、ワシントン軍縮条約成立の時で、六月には、工場の部分閉鎖、百二十四名の指名解雇、希望退職募集と重なった。組合の工場再開に応じない方針は残留労働者の約八割が就業して結束が破れ、労組支部も惨敗宣言を出し、支部解散となる。
同時期、総同盟大阪連合会加盟の阪神電鉄運輸支部も結成されたが、藤岡文六組合長らが検挙、弾圧される中、敗北に終わる。
しかし、こうした経験をへて中小工場をはじめ尼崎の労働運動の新たな前進も始まる。一九二四年九月五日、総同盟の主力となった久保田支部が中心になり、大阪連合から独立し、総同盟尼崎連合会の創立大会を開いた。以降の尼崎労働運動の成長、尼崎独自の動きが生まれる土台を築いたことである。
(この節:一九七〇年版『尼崎市史』第三巻から抜粋要約)

(兵庫民報2021年3月14日付)


瀬戸恵子「ひなたぽっころりん」〈678〉


(兵庫民報2021年3月14日付)