2021年1月10日日曜日

観感楽学


ラジオの年末特番で「蓄音機」を使って古いSPレコードを聞かせる番組があった。その中で、百年前のスペイン風邪流行時のことが話題になり、松井須磨子や与謝野晶子がスペイン風邪に感染していたということを初めて知った▼新型コロナウイルスによって、志村けんさんや岡江久美子さんが命を奪われ日本中に衝撃が広がったが、百年前も「カチューシャの歌」で名高い松井須磨子が感染。看病にあたった島村抱月も感染して亡くなり、悲しみにくれた須磨子がその二カ月後に後を追うという悲劇を生んでいる▼このスペイン風邪対策に適切に対処しない時の政府を歌人・与謝野晶子が痛烈に批判している。「政府は、なぜいち早くこの危険を防止するために、大工場など多くの人間の密集する場所に一時的休業を命じなかったのか?」と▼百年後の現在、新型コロナ感染症は依然衰える気配はなく、不安は広がるばかりである。百年前に経験した悲劇の教訓は生かされているだろうか? 「密を避けよ」「四人以上での外食は控えて」などと国民に要請しながら総理大臣や政府幹部などが、毎日のように密を作り外食を重ねる。国民に指摘されると、その時だけ「反省」する▼与謝野晶子はさらに「統一と徹底を欠いたために多くの国民は避けられるべき禍を避けられていない」と。晶子のこの指摘は現代に通じる手厳しい指摘である。(D)

(兵庫民報2021年1月10日付)