Web版の発行はしばらく休止します

「兵庫民報」編集部は2012年11月から専任1人で続けてきましたが、その1人も2020年末で退職し、2021年1月からは嘱託となりました。編集業務の整理のため、「兵庫民報Web版」はしばらく休止いたします。それにともないTwitterへの転送も休止します。 紙版の通常号のご購読をお願いします。

2020年11月10日火曜日

漫画「マルクス&エンゲルス」で伝えたかったこと:尼崎革新懇「秋の学習会」で著者が語り合う


尼崎革新懇は11月8日、秋の学習会として対談「マルクス&エンゲルスとの出会い」を小田南生涯学習プラザで開催。漫画『マルクス&エンゲルス』の著者、野口美代子さん(シナリオ:写真右)と丸川楠美さん(漫画:写真左)の対談を聞きました。



○きっかけは?

野口さんは、2018年にマルクスとリンカーンに接点があったことを知り、周りの人に話したら「マルクスって誰?」という人が多く、ヨーロッパでは最も偉大な思想家としてダントツ1位なのに、日本ではこんなに知られていないのは、知らせないようにされて来たのではないかと思ったと言います。
神戸で映画『マルクス・エンゲルス』(ラウル・ヘッケ監督)を観て感動した野口さんは、「これを2019年の参議院選挙までに漫画にして若い人の中に広げたい」と、猛勉強して2018年の秋からシナリオづくりに取りかかりました。マルクスとエンゲルスの少年時代・青年時代のことも調べて、再会してから「共産党宣言」を書き上げるまでをシナリオにしました。2019年1月にシナリオを書き終え、尼崎の若い漫画家2人(丸川さんとこの本で監修を担当する円谷源さん)をこむら潤さんに紹介しもらい、なんどもなんども読み合わせをし、イメージを共有しながら修正をくり返しているうちに、丸川さんが「描きたい!」と意欲を見せ、驚異的な速さで漫画を描いて第1巻を2019年6月に出版することができました。

丸川さんは、『全国革新懇ニュース』2020年1月号での長浜悠さんとの対談で「こんなに知られてる人とのことを描いて怖くなかったか」と聞かれ、「マルクスのことを全然知らなかったからこそ」と答えていました。「でも自分で理解していなかったら読んだ人に伝わらないと思い、図書館で検索してマルクスに関する本を全部読みあさった」と明かしました。さらに「この本は、マルクスの人間部分を描いたマンガと思ってもらったらいい。マルクスのハチャメチャなところとエンゲルスの聡明なところを比べたら“メチャクチャ漫画やん”と」と語りました。

○苦労したところは?

野口さんは、シナリオづくり、特に第2巻のシナリオは様々な人に聞いたりして、修正やカットなどを繰り返し、何度も書き直したこと。また、本の価格をできるだけ安くするための出版社との交渉にも苦労したと語りました。

丸川さんは、カール・シャッパーという、野口さんのシナリオには出てこない人のことを知り、その人のことを図書館でさらに調べてシナリオに取り入れてもらったことをあげました。シャッパーは、知識人を敵対視していた労働者と知識人との架け橋になった人で正義者同盟に所属し、マルクスらの共産主義通信委員会と合併して共産主義者同盟を結成しました。

○うれしかったことは?

野口さんは、「清風堂(大阪)で平積みされていたこと。『しんぶん赤旗』の「背表紙」欄で評価されたこと。そして、常に協力者が現れて助けてくれることが大変ありがたい」と語りました。

丸川さんは、「自分の絵が紙の本になって書店に並んだことが一番うれしい」と言いました。

○特に読んでほしいところは?

丸川さんは、「第2巻を楽しく書いたところ。特に最後の、光に向かって「君たちが考えることをやめない限り」と歩いて行くところ。長い『共産党宣言』をぎゅっと凝縮したところ」をあげました。

○今後の活動は?

野口さんは、「第3巻で『資本論』ができるまでを作る。シナリオは8月に書き上げ、いま日々更新中。これから読み合わせをしながら漫画化していきます。また第1巻の英語版を作り、英語教材として使ってもらえるようしたい」と答えました。

丸川さんは、「このような古典を書いた人間が、どのような人間かを描こうと思ってきた。第3巻も『資本論』を書くのでは、“『資本論』を書いた人“を描くという気持ちで描いていきたい」と言います。さらに「今日の対談で、描こうという気持ちが膨らんだ。漫画としてお話として面白く、同時に、『資本論』を読みたくなるようなものにしたい」と抱負を語りました。

○著者どうしはお互いに……

それぞれがお互いをどう思っているのか:
丸川さんは野口さんを、「パワフルで感性豊か、アイデア豊富、行動力が半端なくて尊敬しかない。諦めないことの大切さをひしひしと感じた」と言います。

野口さんは丸川さんを、「素晴らしい感性と今時の若者の持つ表現力。自分が知らなくては伝わらないという努力をとことんする人」、さらに「丸川さんがいなかったらこの漫画はできなかった」とマルクスとエンゲルスの関係をまねて言いました。

〔松岡宗治=同革新懇事務局〕


漫画『マルクス&エンゲルス』
発行=高文研、各650円+税。

映画『マルクス・エンゲルス』
公式サイト  http://www.hark3.com/marx/



(兵庫民報2020年11月15日付掲載記事の補足)