全県交流会議は毎年二回春と夏に開いているもので、今回の交流会議では「憲法を活用し、人間大事の日本社会に」をテーマに、〝県レベルや各地域ごとに〟さらなる共同を広げることを目標に開催。コロナ禍で十分な間隔を取りつつも十二団体と十三の行政区から四十五名が参加し、学習と活発な討論を行いました。
記念講演:安倍退陣後につくるべき政治改革への道筋は
石川教授は、まずコロナ禍であぶり出された世界の問題として貧困・食糧難・環境破壊・経済危機の実態をリアルに説明、それは資本主義世界そのものを変えようとする動きだと述べました。その中で「新型コロナ」と闘えない日本政府の的外れの対応を批判、医療崩壊が過去三十年の「新自由主義・自己責任」政治で起きた点について「警察・消防はいつも万一のため備えている」例をあげ、医療・公衆衛生の格段の充実が喫緊の課題だと指摘しました。
コロナ禍後の「新しい社会」をどうつくるのか、その足がかりとして北欧諸国の幸福度・男女差別なし・労働時間上限三十七時間・最賃千八百円・医療や学費無料、さらに温暖化対策・人々の多様性の承認・公的支援の高さも維持しつつ、それでも高い経済成長を続けている姿を紹介しました。北欧の各国がこれらを実現したのは、子ども時代から政治への参加が常識で、各選挙の投票率が八割以上、労組組織率も高く、政治社会を変える努力の積み重ねは、どの国も日常化されていると語りました。
その上で日本の場合は二〇一九年参院選で十三項目の「市民連合と五野党・会派の『共通政策』」ができたことを紹介し、さらに「脱新自由主義」が野党合意になるよう全力を尽くそうと訴えました。
そのため、一人ひとりが、下からの声を地域から職場から、個人でも団体でも、「賢い市民・主権者」の運動として拡大強化していくことを強調し、今日の話を直ちに周りに広げようと締めくくりました。
報告:「共通政策」充実への展望が見えてきた
報告と運動提起は津川知久憲法共同センター代表が行いました。
六月以降の市民と野党の共同へのとりくみとして長田区、兵庫一区、オール灘区、東灘区など各地のとりくみを紹介しました。
とりわけ八月十日に兵庫革新懇が主催した「市民と野党の政策意見交換会」はこれからの兵庫県における野党共同がさらに発展する画期となったと強調。六野党の県代表らが参加し、考え方をそれぞれ発言するとともに、会場からの青年・業者・教育・医療各分野の発言に野党から共感が示され、「市民連合と五野党・会派の『共通政策』」を兵庫県で充実させる展望も見えたと述べました。
提起:コロナ危機突破へ緊急五大要求
津川さんは、今、憲法が生きる社会へ向かわなくてはならず、その中心は〝コロナ危機突破〟のための緊急五大要求だと述べ、これを提起し、解説しました。【緊急五大要求】
1、PCR検査の飛躍的拡大を=だれでもいつでもなんどでも
2、感染状況・検査陽性率など正確な情報を国民みんなに
3、コロナ対応も一般診療も停滞させない医療体制への緊急支援を
4、コロナ禍の中でもだれもが人間らしく生活できる支え・補償を
5、いまこそ、子どもたちに二十人学級をプレゼントしよう
交流:小選挙区レベルの共同各地で
団体と地域からの発言は二人の質問を含め十二人が行いました。長田区 市民と野党の長田共同アクションによる「内田樹講演会」(七月)開催のエピソードを語り、九月の大規模な街頭行動の計画を紹介するとともに、二区レベルの共同への発展の展望を述べました。
灘区 コロナ禍への切実な要求を区内の多様な相談会の声をもとに区長交渉を準備、行政側はやや渋っているが区内の労組や宗教団体にも呼びかけると参加が増えていると報告し、一区での革新共同へも結びつけたいと述べました。
兵庫労連 総がかり行動兵庫県実行委主催の十一月三日「憲法集会」の準備のもようと県レベルの共同の発展を紹介。コロナ禍で労働相談も急増、ある保育所では有給休暇をめぐる問題で労組が結成された例などを語りました。
兵庫革新懇 八月十日の「市民と野党の政策意見交換会」での津川代表世話人の提起内容まで、積み重ねてきた歴史も述べ、「県下の草の根の努力がしっかり形の上でかみ合ってきている」と述べました。
但馬 憲法九条を守る一致点で〝一点共闘しよう〟と運動をすすめていること、萎縮しないで、憲法をいかす不断の努力でやろうと、「十一月七日平和のつどい」の成功へ頑張っていることを語りました。
伊丹市 五年前の戦争法強行に対する「十九日行動」から一回も休まず市議会超党派議員の結集で街頭宣伝を阪急とJR駅前で行い、いつも約二十人の参加で盛り上げていること、無所属を含め超党派議員も伊丹革新懇の会員にもなってもらい、フェイスブックでのやりとりも日常化していることを報告しました。
西宮市・芦屋市 四年前から野党は共同をと西宮芦屋市民アクションをつくりとりくみを強めてきたこと、党派を超えた七人の呼びかけ人が参加して毎月七日、十七日、二十七日に「バイバイ安倍政権」の街頭宣伝を続けていることを報告。「衆院七区市民連合」へ発展させようと努力していると報告しました。
垂水区 「安倍ピリオド署名」にとりくんだ平和憲法垂水区ネットの活動を報告。神戸市が個人情報を電子媒体で自衛隊に提供する人権侵害とのたたかいがあまり広がっていない問題も述べました。
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交流の中で「県内野党の共同がどのように進んでいるか」との質問があり、参加していた日本共産党兵庫県委員会の村上亮三書記長が状況を説明しました。
また、村上さんは、野党共闘のバージョンアップとしてコロナ禍をふまえた新しい政治の方向性や政権合意も必要で、安倍辞任で野党分断の動きがでるおそれもあるが市民と世論による大きな押し上げが必要だ、と指摘しました。
まとめ:希望と願い語り、今までにない規模で活動しよう
兵庫革新懇の樫村庸一事務局長がまとめを行いました。安倍辞任で、憲法が生きる新しい社会をつくるチャンスが到来したと述べ、①石川教授の講演内容と津川代表の提起のとおり、希望を語り、願いを押し出し、新しい社会実現への活動を展開しよう、②県レベルの総がかり行動や各地の市民アクション、市民と野党の一点共闘を基礎に、さらに「国民の声で政治を変える」共同へ発展させよう、③コロナ禍の中での活動は創意工夫が必要であり、SNSも大きく活用し、今までにない規模で活動しよう――と呼びかけました。
(兵庫民報2020年9月6日付)