2020年8月2日日曜日

観感楽学


暑いのに庭に出て草むしりをしていた妻が、「お父さん、今年蝉があまり鳴かないね」と、声をかけてきた。空蝉(抜け殻)はあちこちに見られるのだが、いわれてみると確かに蝉の声が少ない。「蝉も自粛してるのと違うか?」と冗談を言いながらふと気が付いた。「ことしは二〇二〇年、去年はうるさいほどやったな」「素数ゼミっていうから、去年は大量発生したんやろう」「素数年に大量発生する? 蝉が数学を知ってて? そんなバカな……」と妻に一笑された▼ところで、この「素数ゼミ」のこと、ご存知だろうか? 蝉のなかに十三年、十七年という「素数年」に大量発生する「素数ゼミ」が存在するというのは昆虫の世界では定説になっている。その原因は、種の保存を図るためといわれ、三年周期、四年周期という蝉の天敵・鳥の大量発生周期と重ならないようになっているとか▼自然界というものは、人間の思考では考えられないような不思議な力で生き物のバランスを保っている。考えてみれば、コロナウイルスも、われわれ人間が勝手に「新型」と銘打っているだけで、自然界ではずっと昔から存在していたのだろう▼毎日毎日、感染者の数が増えているというのに「GoToトラベル」という。そんな国の体たらくにうんざりしながら、このコロナに天敵はいないのだろうかと考えてしまう。雨上がりの林の中でカナカナと鳴くヒグラシの声を聞きながら今日もまたステイホームしている。(D)

(兵庫民報2020年8月2日付)