2020年7月26日日曜日

借り上げ住宅からの被災者追い出し:大阪高裁判決の不当性――借上住宅弁護団が批判

神戸市が借り上げ公営住宅キャナルタウンウエストに住むTさんに明け渡しを迫っている事件について大阪高裁(小西義博裁判長)が六月十九日に言い渡した判決。その不当性を借上住宅弁護団の「『被災者追い出し裁判』入居者支援NEWS」七月号が批判しています。(判決と批判は同NEWSから、注と小見出しは兵庫民報編集部)

後からできた法で不利益を与える

判決 転借人に対し、借上公営住宅明渡しに伴う代替の公営住宅の提供を容易にする措置が講じられていることや新法適用によって転借人の経済的負担の軽減が図られていることを考慮すると、新法が適用された場合が借地借家法二十八条の適用(正当事由による保護)がある場合に比して、一般的に転借人に対し重大な不利益を与えていることになるとは必ずしもいえない。

注(1)入居者Tさん。(2)改正公営住宅法。

批判 入居時に保障されていた住み続ける権利(正当事由による保護)の変更と、その後、新法による応能応益家賃制度の導入は、次元の異なる問題です。

UR・神戸市の賃貸借契約が解消されれば、入居者の権利が消滅するのか

判決 原賃貸借契約の賃借人が原賃貸借契約の更新を望まずに、原賃貸借契約が期間満了によって終了する場合であるから、借地借家法二十八条の適用はなく、原賃貸借契約の更新拒絶に「正当事由」は何ら問題とならず、その結果、原賃貸借関係は終了し、転貸借契約も履行不能により終了するから、転貸借契約においても「正当事由」は問題にならないことになる。……サブリース契約のように原賃貸借契約の賃貸人と賃借人が共同事業をしている事例……では別異に解する余地があり得るが、借上げによる公営住宅の場合はそれには当たらない。

注(3)URから神戸市が住宅を借り上げる契約。(4)神戸市。(5)神戸市が借上住宅を入居者に貸す契約。サブリース。

批判 借上復興住宅はサブリース(転貸借)の仕組みを採用していますが、サブリースの事例について判断した最高裁判例(6)が適用されない理由は何も示されていません。

注(6)二〇〇二(平成十四)年三月二十八日判決。原賃貸借契約の賃借人による原賃貸借契約の更新拒絶によっても転貸借契約の入居者は占有権原を失わず、したがって建物所有者による明渡請求に対して対抗しうる―と判断。

市の都合を優先した「事前通知」の解釈

判決 法三十二条一項六号の趣旨は、賃貸人(建物所有者)が借上期間満了時に確実に建物の返還を受けられるようにすることによって、円滑な公営住宅の供給を図ろうとするもの……法二十五条二項所定の通知が法三十二条一項六号に基づく明渡請求の要件になると解すべき規定はない。……法二十五条二項所定の通知は、将来明渡しがあることの注意を喚起するものというべき。

注(7)事業主体は、公営住宅の借上げに係る契約が終了する場合には、当該公営住宅の賃貸人に代わって、入居者に借地借家法第三十四条第一項の通知をすることができる。(8)事業主体の長は、借上げに係る公営住宅の入居者を決定したときは、当該入居者に対し、当該公営住宅の借上げの期間の満了時に当該公営住宅を明け渡さなければならない旨を通知しなければならない。

批判 公営住宅法は住宅困窮者の住宅のセーフティネットであり、二十五条二項の通知は「注意喚起」制度だとはどの解説書にも記載されていません。
判決は、入居者の継続入居の権利よりも、オーナーへの建物返還という自治体の都合を優先するものになっています。

身体的および精神的な負担を軽視

判決 平成二十六年の初め頃……には、本件居室を明渡す必要があることを説明しており、控訴人の負担を軽減させるための準備期間を十分に設けていた……完全予約制の導入と移転期限の猶予、福祉との連携と見回りサービスの実施、移転料の支払いなど移転に伴う負担を少なくする対策……。

注(9)明渡し期限の二年前。(10)入居者Tさん。(11)移転先市営住宅を予約(複数)させ空室がでるまで最長五年間、退去を猶予する制度。

批判 十八年近く、居室での生活を続けてきた高齢者にとって、もはや転居が困難となったわずか二年前の通知では意味がありません。完全予約制は、必ず希望した住宅に入居できるわけでもなく、転居による健康への影響が生じていることも確認されています。
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Tさんは最高裁への上告手続きを行いました。借上弁護団やひょうご借り上げ住宅協議会など支援団体は、引き続く支援を呼びかけています。

(兵庫民報2020年7月26日付)