2020年7月26日日曜日

観感楽学


「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」エッ、日本国憲法前文にこんな文言があった? 後段は有名な長沼訴訟一審判決で福島裁判長が「平和的生存権」の根拠規定として示したものだから承知していたが問題はその前段▼「新型コロナの恐怖と医療・介護・教育・収入・文化・芸術…の欠乏から免れる」権利と読めるではないか。しかもどこかの大統領とはちがって「全世界の国民がひとしく」とうたっているのだ。おしいなあ。「この憲法のまねをしてはいかが」とその大統領に苦言を呈する総理であれば、世界で「名誉ある地位を占め」ることができるのに▼もちろん憲法制定時にコロナが意識されていたわけではない。調べると「恐怖から免れる」とは自由権のことで「欠乏から免れる」とは社会権のこと。平和的生存権もあわせその保障を宣言する箇所だったのだ▼井上ひさしは憲法学者・樋口陽一との共著『「日本国憲法」を読みなおす』のなかで「人類共同体のキーワード」が「日本国憲法の根本規範に含まれているとぼくは信じています」と語っているがまさにここだ。(T)

(兵庫民報2020年7月26日付)