記事を検索

日付順目次

2020年5月1日金曜日

〈特別寄稿〉いまこそ『資本論』を(下):三重大学名誉教授(経済学)平野喜一郎


格差拡大と地球環境破壊――第7篇と第4篇第13章

もちろん『資本論』の課題は、労働時間の問題だけではありません。現代資本主義の行きづまりを示すものとして、貧富の格差の拡大と地球環境の破壊があげられます。

資本の蓄積はそのまま貧困の蓄積でもある

「世界で最も裕福な二十六人の資産が世界の所得下位三十八億人の資産と同額」という調査を国際NGOのオックスファムが最近発表しました。アメリカでは「高所得者一%が下位の九九%より多くの富を所有しているのは民主主義ではない!」と演説するバーニー・サンダース上院議員が若者たちの熱狂的な支持をえました。
コロナ・インフルエンザの拡大も格差問題と関係があります。アメリカのコロナによる死者は中南米系の移民や貧しいホームレスに多いといわれています。
格差問題は第一部・第七篇「資本の蓄積過程」(『新版』第四分冊)と直接につながっています。資本の蓄積はそのまま貧困の蓄積でもあるのです。

現代の環境問題を分析する視点と方法をあたえる

環境破壊では豪雨や洪水を毎年ひきおこしている「温暖化」です。私は温暖化という表現は正しくないと思います。温暖という言葉はプラス・イメージです。地球灼熱化とでもいうべきだと思います。昨年、十七歳の少女のグレタ・トゥーンベリさんが、地球を破壊する資本家や政治家にむかって、"How dare you!"(なんでそんなことをするの! なんでそんなことを言うの!)と涙をながしながら訴えました。
今回のコロナ禍も地球環境の破壊につながっています。それまで人間とは別世界に住んでいた動物が森林の破壊によって人間に近づいたからではないかといわれています。
環境問題について『資本論』では農業の工業化・資本主義化が自然を破壊する問題として論じられています。
第一巻・第四篇・第十三章・第十節「大工業と農業」の個所です(『新版』第三分冊)。「資本主義的生産様式は……人間と土地とのあいだの物質代謝を……永久的自然条件を攪乱する……資本主義的農業のあらゆる進歩は……土地から略奪する技術における進歩でもあり……この豊度の持続的源泉を破壊するための進歩である……北アメリカ合衆国のように……大工業から出発すれば……ますます急速に進行する」
ここに書かれたことから地球環境の破壊を考える指針をあたえてくれます。『資本論』第一巻は一八六七年に出版されました。百五十年以上もたった著書ですから当然現在の課題をそのまま解明することはできません。しかし、眼前の具体的な問題を分析する視点と方法をあたえてくれます。

当面は独習に励んで――強制された「自由時間」を有効に

それでは、当面は独習に励み、コロナ禍が終わったら、学習会や講演会で議論をたたかわせてください。
新日本出版社の『新版資本論』の第一部(四分冊)も出版されました。これを機会に挑戦する人が全国で増えています。読者のみなさんもこの流れにくわわり、強制された「自由時間」を有効につかってください。


カール・マルクス著/日本共産党中央委員会社会科学研究所監修
『新版 資本論』
第1部(4分冊)、第2部(3分冊)、第3部(5分冊)
A5判並製、各分冊220〜480ページの予定
各分冊1,700円~2,000円(税別)、全12分冊セット21,600円(税別)
新日本出版社刊/隔月で刊行予定/最新刊は3月刊の第4分冊
https://www.shinnihon-net.co.jp/dk/
一般書店の他、各地の日本共産党事務所でも扱っています


平野さんの『入門講座『資本論』を学ぶ人のために』、新日本出版社、2011年
https://www.shinnihon-net.co.jp/general/detail/code/978-4-406-05487-4/



(兵庫民報2020年5月3日付)