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2020年1月12日日曜日

ローカル港湾で多発している「水先類似行為」

正規の水先人を送迎する神戸のパイロットボート(編集部撮影)

藤丸 徹(元全日本海員組合教宣部長)

水先人とは、港や湾、内海や海峡において、船舶を安全かつ効率的に入出港させる専門家であり、職務を行う海域ごとに法で定めた水先人免許が必要です。
水先人が業務提供する海域を水先区といい、水先法(一九四九年制定)では三十五の水先区があり、その広さは湾や内海、海峡や港などで大小さまざまです。また水先区の中でも、特に船舶が混雑し地形や水路が複雑で気象や潮流の状況が厳しい十一の水先区を「強制水先区」と指定しています。いずれも船舶の航行安全と国民経済の混乱を防止する観点から制定されています。
ところが近年、北は稚内・紋別から南は石垣・平良など、水先人不在の地方の中小港湾に大型クルーズ客船が入港し、水先になり代わる類似行為が多数発生しています。最近の実績では、全国六十七の水先人不在の港湾において行われた水先類似行為は約六千隻あり、このうち四十四港で近隣の水先区から水先人が出向き約二千五百隻を嚮導、二十三港で水先人資格のない海技者六十四人が約三千五百隻を嚮導する、由々しき事態が続いています。
こうなった背景には、①水先法制定時と経済環境が著しく違って港の環境も変化してきたこと、②二〇〇八年に策定された観光立国推進基本計画により、大型クルーズ客船の誘致が全国的に進行したこと、③LNG(液化天然ガス運搬)船やその他の大型船専用船などの入港がローカル港湾に拡大していったことなどがあげられます。
いずれにしても水先法違反は明らかですが、監督官庁の国交省は、水先人の後継者不足が深刻なのと、類似行為が頻繁に行われていることなどから対応策に苦慮し、事実上無法状態を放任しています。
海外のほとんどの港では、強制水先制度が導入され、その対象船舶は数百トン以上とされています。なぜなら船舶航行や港湾の安全確保、さらには領土の保全上の問題も内在しているからです。

【編注】「嚮導」=案内をすること。参考:国土交通省の「水先人のページ」http://www.mlit.go.jp/maritime/shikaku/mizusaki2/index.html

(兵庫民報2020年1月12日付)

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