黒田みち(川西市議)
水産物の安全性と漁業復興
翌十一月十八日は、福島県水産海洋研究センターで、放射能研究部の神山亨一部長から「福島県水産物の安全性と漁業の復興状況」について、丁寧な資料を使って説明を受けました。
相馬双葉地区の底引き網などの沿岸漁業が盛んな地域と、いわき地区のように沿岸漁業と沖合漁業が盛んな地域があるのが特徴です。震災・事故前は、水揚げ約三万九千トン・約百九億円。沿岸漁業は、水揚げで約六割ですが、高級魚が多いため金額では約八割に上っていたそうです。
震災・事故で、約八百二十三億円の被害を受けましたが、施設の復旧は進んでいるとのこと。しかし、漁獲量は一五・五%と低く、放射能汚染への風評被害是正への検査・取り組みを県が行う以上に、漁協が基準を厳しくするなど努力されています。検査結果では、九九・五%が「不検出」(検出下限価八ベクレル)となっています。
更なる風評対策が必要だと取り組んでおられますが、東電で保管されている放射性物質トリチウムを含む〝処理水〟を海洋放出することを経済産業省が推進しており、地元漁業関係者は更に風評被害がひどくなると反対しています。
また、漁業従事者は六割程度まで戻っているそうですが、後継者の問題、他所から水揚げされたものを使っているなどの課題も山積しています。
現場は、どうにかして元通りの漁業に戻したいと懸命な努力をされているにもかかわらず、まして当事者は反対されているにもかかわらず〝汚染水〟放出を強行するなんて絶対に許せません。
汚染土壌を農地に埋める案まで
その後、常磐道を北上。富岡・大熊・双葉・浪江・小高町を走りましたが、まだ帰還困難区域が残されています。「二・五マイクロシーベルト」の表示を横目で見ながら一路、宮城県塩釜港へと向かいました。
高速道路からは、太陽光パネルが張り巡らされている広大な田んぼ。黒いフレコンバッグが野積みされている場所が見えます。まだまだ終わりが見えない原発事故。しかし、この汚染土壌も農地に埋めようという案が出されています。
汚染水や汚染土は、見えなくなれば終わりではありません。私たちの子どもや孫、次代を担う人達に責任をもつ大人としての役割を果たすこと、原発ゼロができるように、今自分にできることを取り組もうと感じています。
ツアーでは、勉強会や懇談会、現地~本当に勉強になる企画を組んでいただいて感謝です。最後の夜の皆さんの感想でもありましたが、「ここに来て、見て、聴いて、次につなげていきたい」と。私もそのエネルギーを充電できました。
観光にも貢献
また、塩釜神社・青葉城跡・裏磐梯五色沼・喜多方などの観光。大きなお天気の崩れもなく、綺麗な紅葉を愛でながら、何度も大きな虹に出会うなど楽しく有意義な時間を過ごすことができました。バスを降りる度にお土産の袋が増え続け、ツアーの目的の一つ「地元にお金を落としてくる」こともできたのではないでしょうか。
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当初から、この救援ツアーやバザーに精力的に取り組んでくださった安武ひろ子さん(元参議院議員)が、今夏お亡くなりになり、誰もが寂しく感じているところですが、その志をしっかり受け継いで、「福島を忘れず、原発ゼロを目指す取り組み」を担っていきたいと思います。
誰もが、安心して暮らし続けることができる社会・国を求めて。今を生きる大人の責任として。共にがんばりましょう。
(兵庫民報2019年12月8日付)