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2019年11月3日日曜日

ノーモアヒバクシャ近畿訴訟・傍聴記:2019-10-15

気になる「医学的な解明」や「結審期日ありき」の訴訟指揮

副島圀義

十月十五日、大阪高裁では、二件の控訴審弁論が続けて行われました。

Tさんについての第一回弁論では、裁判長が国側に「慢性肝炎とは何か、について次回期日までに反論を」求めました。国側が時間不足と躊躇するのに対し、「医師意見書も早くに出ている。一審以来数年もやっている。新しい審査の方針もずいぶん前に出ているのだから」と督促。
裁判長の関心は「慢性肝炎についての放射線被ばく起因性」にあるようでした。
そもそも国は、原爆被害だけの「他の戦争被害とは異なる特殊の被害であることにかんがみ」被爆者援護施策は例外中の例外、との考えに固執してきました。原爆症認定にあたって、個々の発病と放射線被ばくの因果関係の立証を、被爆者に要求することの根本が、そこにあります。
「慢性肝炎についての医学的解明」を求めるような訴訟指揮がたいへん気になったことでした。

苑田朔爾さんについての第二回弁論で裁判所は、映像を使っての原告側意見陳述も、原爆放射線の専門家の証人採用も認めませんでした。
「補充の意見書提出」も「反論」も、時限を切って「次回一月二十九日で結審としたい」と表明。たいへん性急な訴訟指揮ぶりが気になったところです。高齢の原告のことを配慮した審理の促進ならいいのですが。

被爆者が原爆症認定のあり方の抜本的な改正を求めて集団訴訟、ノーモアヒバクシャ訴訟を起こして十六年。ほとんどの裁判で被爆者が勝訴してきました。
その結果、機械的な基準のあてはめではなく、被爆の実相にむきあった総合的な判断が必要との「流れ」ができてきたのですが……。
ここにきて「核抑止」や原発への固執、戦争での加害責任の否認、等々「逆流」を感じざるをえません。「戦争での犠牲を国民は受忍しなければならない」との考え方を国民的な広がりで打ち破らねば、と、最近ますます思うのです。

(兵庫民報2019年11月3日付)

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