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日本共産党兵庫県議団は、これまで十一年間行われてきた県行財政構造改革について、震災復興に名を借り、神戸空港や関西国際空港二期事業、阪神高速道路(北神戸線、神戸山手線、大阪湾岸道路、大阪池田線等)、淡路交流の翼港など大型開発を行ってきたことが、県財政を悪化させた震災関連債の大きな要因であり、そのしわ寄せを、福祉・医療、教育、県民サービス、県職員の切り捨てで県民に押し付けるものだとして批判してきました。
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今回の「兵庫県行財政運営方針(案)」は、それまでの県「行革」が掲げた財政目標を達成しましたが、なお震災関連県債の返済、新たに発行した財源対策債などの償還をすすめ、適切な財政運営をすすめる必要があるとして、二〇一九年度から十年間の方針として提案されたものです。
しかし、その内容は、従来の大型開発事業をさらに推進し、新たな借金をつくる一方、社会保障や県民サービスをすすめる県職員の枠を財政的に制限し、「選択と集中」の徹底として、公共施設の統廃合、県営住宅の統廃合による戸数削減、病院や警察の統廃合、水道事業の広域化などで県民サービスの新たな切り捨てをすすめるものとなっています。
県民サービスさらなる削減
職員削減
運営方針(案)は、財政運営の目標として、経常収支比率の中の人件費を現状の三六%から、三〇%にまで抑えるとしています。職員数は、この間の「行革」で削減率全国一位、人口や面積による適正な配置数に対する職員数が全国で二番目に少なく、土木事務所や福祉事務所、農業改良普及センターも削減され、十分な県民サービスを担い得ない状況になっています。今回の運営方針では、阪神南県民センターと阪神北県民局の統合が検討の対象になっています。
今回の人件費の削減は、子どもの数が減り、教員定数が減ることを見越しているといいますが、この間の「行革」で減らしてきた職員の増員や、他府県と比べても遅れている三十五人学級の拡充などを考えても、人件費枠ありきの在り方が問われます。
県営住宅削減
県営住宅事業については、これまでの行革プランで提起された管理戸数の適正化として、二〇二五年までに、四万八千戸(二〇〇七年度には五万五千五十戸あったもの)にする方針を改めて確認し、推進することとしています。格差と貧困が広がる中、健康で文化的な最低限度の生活を保障するためにも、低廉な住宅供給の充実が求められていることに逆行した方針です。病院再編医療圏広域化
病院については、「地域医療構想」「保健医療計画」などにもとづき、病床機能の役割分担を明確にして、公立病院等との再編・ネットワーク化を推進するとしています。それにともない限られた医療資源を有効に活用させるとして、中播磨圏域と西播磨圏域を、阪神南圏域と阪神北圏域を、それぞれ統合し、「播磨姫路圏域」、「阪神圏域」として、広域化させるという方針がうちだされていますが、本来は、それぞれの圏域で完結できる医療体制の充実が求められます。水道広域化
水道事業については、「県内水道事業体との広域連携等の取り組みを推進する」とあります。今年七月の西日本豪雨災害では中国自動車道の法面崩壊に伴い、県営水道の広域送水管が水平に押し出され破断するという災害事故が発生しました。バックアップ管路の活用や、市の自己水源活用、節水呼びかけなどで断水という事態は危機一髪避けることができましたが、水道事業の広域化は、こうした災害時のリスクも広範囲に及びます。大型開発には何ら制限なし
高速道路
一方、この間の借金をつくってきた「高速道六基幹軸」としてすすめてきた高速道路整備は、広大な土地の北海道に次いで全国で二番目の総延長距離になっていますが、今回の運営方針(案)の中では、「ひょうご基幹道路ネットワーク整備基本計画」を策定し、「基幹道路八連携軸」等として新たに百十五キロメートル延長し、総延長距離九百十八キロメートルの高速道路整備をすすめようとしています。県庁建て替えと元町北部再整備
また、この間、耐震化を理由に県庁舎の建て替えと、それにともなう元町北部再整備計画を打ち出すなど、新たな借金を積み増ししかねない事業計画も浮上しています。今回の運営方針(案)は、こうした大型開発を何ら制限するものではありません。今回の運営方針(案)は、県民生活にかかわる部分の経費のフレームを決め、その枠内に抑えようとするものですが、これでは「住民の福祉の向上」をすすめる行政本来の役割を発揮しえません。
国の抑制策を前提に
知事は、震災関連県債、財源対策債の償還とあわせ、国が「骨太方針2018」で財政健全化目標を五年先送りにし、地方一般財源総額が二〇二一年度まで抑制される方針だと述べていますが、国の地方財政抑制方針を前提に、県財政の運営を行うのではなく、県民サービス向上に向け、国の財政措置を抜本的に求める必要があります。社会保障関係費等は、国が示す自然増分や消費税増税による充実分の上乗せなどから、現状の二五%から二九%程度をめどにすると示されていますが、とくに社会保障関係費は、国が示す自然増分がそもそも抑制されており、しかも医療分野で、この間、県単独助成を削ってきたことなどをふまえ、さらに充実させることが求められます。
新たな「行革」ストップを!
9月議会で論戦
県当局は、「『行革』はおわった。これからは、財政運営方針なんだ」と強調しています。しかし中身を見てみると、従来通りの大型開発は進めながら、新たな県民サービスの切り捨てをすすめようとしている新たな『行革』方策と言わざるを得ません。日本共産党兵庫県議団は、県が示す「二〇一九年度以降の行財政運営の枠組み」をさらに分析・検討し、県民要求実現・サービス充実の立場で、行財政構造改革特別委員会、九月議会での論戦をすすめていきます。
(兵庫民報2018年9月2日付)