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2018年4月29日日曜日

安倍政権退陣へ共闘発展強化を持続させよう:憲法共同センターアピール


憲法改悪ストップ!兵庫県共同センターは四月二十日、津川代表名でアピールを発表し、〝安倍壊憲〟を止め、安倍退陣への野党共闘を大きく発展するよう、地域共闘の発展強化を継続することを訴えました。

憲法を語る資格なし安倍政権は即退陣を!
公文書の隠蔽・ねつ造・改ざんで、民主主義・国民主権まで破壊

3千万署名運動の飛躍、共同の強化を

4・20アピール――憲法改悪ストップ!兵庫県共同センター代表 津川知久

いま県下の署名対話で、「安倍さんをやめさせる署名ですか」と並んで賛同してくれる姿も出てきました。行動で頑張る人びとは異口同音で「空気が変わった、国民の怒りが広がっている」と語ります。こうして「安倍首相のもとでの九条改憲は認められない」三千万署名を一気に広げるチャンス到来です。
もり・かけ問題はもとより、〝戦場日誌隠蔽〟は一層深刻です。「イラクの戦闘状況を厳格に伝える日誌は兵士の命と安全を守る重用資料」と現地に派兵された元幹部も述べています。これがリアルに伝わると文民統制(シビリアンコントロール)違反で、直ちに憲法違反となるので自衛隊幹部は大臣や政府にも隠し続けた、まさに〝軍部トップの独走〟と言えるものです。
このように憲法にもとづく政治そのものが壊されている事態が進行しているのに、自民党は三月二十五日の党大会で「矛盾だらけの九条改定案」を強引にまとめ、国会の審議をしゃにむに進めようとしています。
だからこそ、国会での野党共闘は多くの課題ごとにも共闘が実現し、与党の暴走を止め憲法通りの政治を実現させるため徹底追及しているのです。
これを支える私たちのたたかいの到達点は高揚しています。県下各行政区は、三千万署名運動を通じ、かってない共同実現へ前進しています。尼崎市や明石市、垂水区、灘区など人口大の都市だけでなく、赤穂市、三木市、丹波市でも野党の各会派や連合系労組とも手をつなぐ活動が展開されています。さらに街々レベルでも尼崎市東園田や立花、須磨区友が丘、兵庫区平野・荒田などなどから全戸訪問による感動が伝わっています。
県レベルでも総がかり行動実行委員会が5・3憲法集会成功へ全県六十カ所いっせい宣伝を成功させ、「みなせん」など市民団体主催による県下全野党合同街頭演説(編注=四月二十八日十五時~十六時二十分、三宮センター街東口)も企画されています。
四月二十日、兵庫県では二十万筆近い到達となりました(編注=二十四日現在、二十万筆を超えました)。でも目標にはまだ届きません。地域ごとの共同も始まったばかりの所も多くあります。中央の市民アクションは一応五月までとしていますが、兵庫県では〝戦争出来る国にする安倍壊憲〟を止め、安倍退陣への野党共闘を大きく発展するよう、地域共闘の発展強化を持続することを訴えるものです。
この四月末から五月、国会も激変しています。全ての団体・市民が手をつなぎ、幅広く行動しましょう。

(兵庫民報2018年4月22日付)

各地の憲法集会

5・3集会「朝日新聞阪神支局襲撃事件」を忘れない:《日本国憲法が保障する言論・表現の自由》を活かそう!

5月3日(木・祝)10時、西宮市役所東館8階ホール/講演「憲法とメディア~ジャーナリズムの現状~」坪井兵輔(元民放TV報道局ディレクター・阪南大学准教授)/参加無料/主催:平和と民主主義を進める西宮・芦屋の会☎0798‐26‐0537

戦争させない、9条壊すな! 5・3兵庫憲法集会


5月3日(木・祝)13時30分~15時、神戸・東遊園地/ゲスト:神田香織(講談師)、高石ともや(フォークシンガー)、司会:小山乃里子/集会後パレード/主催:戦争させない、9条壊すな! 5・3総がかり行動兵庫県実行委員会/☎&Fax078‐361‐9991(中神戸法律事務所)

5・4憲法フェスタ(阪神)

5月4日(金・祝)、いたみホール/10時30分~12時10分:映画「米軍(アメリカ)が最も恐れた男―その名は、カメジロー」/13時30分~16時30分:憲法集会:メイントーク=山尾志桜里(立憲民主党衆院議員)、歌=小野純一・まあの/前売り800円、当日1,000円、障がい者・原発事故避難者半額、手話通訳、親子室(8人)・キッズスペースあり/主催:5・4憲法集会実行委員会☎090‐6065‐4857(川上)

第40回憲法を守るはりま集会

5月5日(土・祝)13時、姫路市市民会館大ホール/講演「ずっと、ずっと、非武装・非戦」中山千夏(作家・元俳優・元参院議員)/平和を歌う合唱団「希望」/スライド「お母さんの木」/主催:実行委員会☎079‐222‐0684(姫路総合法律事務所)

淡路9条の会講演会:憲法施行71年の今―改憲発動を許さない市民の運動

5月13日(日)14時、洲本市市民交流センタービバホール/講師:小森陽一(東京大学大学院教授・9条の会事務局長/参加費:大人500円、中高生300円/☎0799‐65‐0475(岡田)

(兵庫民報2018年4月22日付)

2018年兵庫県内のメーデー開催予定一覧


開催日 開会時刻 集会名 会場
4月27日 18時 川西猪名川メーデー前夜祭 川西市役所西側ポケット広場
5月1日 10時 第89回兵庫県中央メーデー 神戸三宮・東遊園地
第89回東阪神地域メーデー 尼崎・橘公園
第89回統一メーデー西宮集会 西宮・六湛寺公園
第89回西播地域メーデー 姫路・シロトピア記念公園野外ステージ
17時30分 第89回メーデー東播地域集会 加古川・小柳公園
18時 2018芦屋地区反戦メーデー 芦屋市役所北側広場
第89回淡路地区メーデー 洲本市民広場(エディオン洲本店横) 雨天時:洲本市総合福祉会館3F多目的ホール
2018但馬統一メーデー 豊岡・総合体育館前広場
第89回メーデー丹有地域集会 篠山・四季の森生涯学習センター
(兵庫民報2018年4月22日付)

市民アクション川西が緊急学習会:自民党改憲案の危険さ


全国市民アクション川西実行委員会は四月二十日、川西市文化会館で緊急憲法学習会「自民党改憲案はなぜ問題なのか」を開催しました。
司会は、自治市民クラブの北上哲仁市議(社民党)が行い、落合恵子さんの講演会の成功を受けて、さらに取り組みを広げましょうとよびかけました。日本共産党の黒田みち市議が、市議会では超党派で憲法を守る取り組みをしてきた、あきらめないで次の世代にバトンタッチしていきましょうと挨拶しました。
講師は関西大学法学部の高作正博教授。同氏は――安倍政権下で日報、森友、加計問題で議会制民主主義が問われている。さらに、迎撃ミサイルシステムや長距離巡航ミサイル配備などで軍事化が進んでいる。この状態で集団的自衛権が付与された自衛隊が憲法に明記されると、極めて危険だと強調しました。また、憲法に自衛隊が明記されると自衛隊募集が市広報紙で行われ、学習指導要領改定で自衛隊が教育の場に公然と入ってくる。銃剣道指導のために自衛隊員が学校に配置されることも考えられる。集団的自衛権を行使して自衛隊が参戦した場合には、川西や伊丹の自衛隊基地や伊丹空港も攻撃対象になる――と、具体的な危険性を説明しました。
立憲民主党の桜井周衆院議員がかけつけ、国会での森友、加計問題、セクハラ問題で自民党政府を追い詰めていることが報告されました。
連合市民クラブの津田加代子市議が、市議会の超党派の取り組みと市民の力を合わせて憲法を守っていきたいと閉会の挨拶をしました。
―今西清(川西実行委員会事務局)

(兵庫民報2018年4月22日付)

9条改憲で軍事が地方自治の上位に

木下関大教授が県自治研の講演で指摘


兵庫県自治体問題研究所は四月二十一日、神戸市内で講演会「安倍九条改憲と地方自治の危機」を開催しました。
講師の木下智史・関西大学教授は安倍改憲について、何も変わることはないと思わせながら変えるのがそのやり口であり、自民党がまとめたとされる条文案は、九条二項を維持しながら自衛隊を明記し、「自衛隊違憲論」を封じるものだと強調しました。
条文案の内容について①「自衛のため」は軍事力行使の制限にならず、集団的自衛権も含む。米国の軍隊も「自衛のため」②「必要最小限度」の限定は取り払われ、軍事活動の装備・範囲が拡大。空母やミサイルも保持可能に③「前条(九条)の規定は……(自衛の措置を)妨げず」は九条の全面否定。交戦権を公然と認めるもの④「我が国の平和と独立」「国の安全」は、新たな軍事力行使の根拠となる―などと指摘。自衛隊をより強化し、世界中に展開できる軍隊にするものだと批判しました。
安保関連法制で自治体が戦争に動員される範囲が拡大したが、九条が改憲されると軍事が地方自治と同格以上の位置づけとなり、より広い範囲で自治体組織、人や物資が動員され、権利が制限されるなど、地方自治が蹂躙されるとしました。
国民運動には、自衛隊が海外に出て行って戦争する集団的自衛権が必要か、ここを対抗軸にして多数派になることが求められると結びました。
―岡田裕行(兵庫県自治体問題研究所副理事長)

(兵庫民報2018年4月22日付)

山下よしき「心洗われ、力与えられたひと時」

連載エッセイ4

なんて心地よい響きでしょうか。尼崎の後援会総会に来てくれた「新婦人めだかコーラス」のみなさんによる合唱です。
ひかえめで、やさしい、女性たちの歌声による童謡のメドレー。目を閉じて聞いていると、国会のなかでたかぶった気持ちがスッとしずまります。
たくさんの人が互いに耳を傾けあいながら紡ぎだすハーモニーに、安心感や心地よさを感じるのは人間の本性なのかも知れません。一強や忖度とは正反対の世界です。
童謡に続いて歌ってくれたのは「ヒロシマの有る国で」。私たちの世代が青年のころ、平和運動にとりくむなかから生まれた曲です(一九八三年、山本さとし作詞・作曲)。たまに口ずさむことはありますが、本格的な合唱で聴くのはずいぶん久しぶりです。

♪わたしの国とかの国の人の生命は同じ
……

コーラスに乗って歌詞の一節一節が胸に迫ってきます。自然と熱いものがこみ上げるのを抑えることができなくなりました。大勢の人々がうたごえ運動や平和運動を営々と時を超えて繋いできたことが被爆者の声、世界の願いと合流し、いま核兵器のない世界、核兵器のない北東アジアへの扉をひらく大きな力となって立ち現れている。そのことに思いが巡りました。
心が洗われ、力を与えられたひと時。めだかコーラスのみなさん、ありがとうございました。
(日本共産党参院議員・党副委員長)

(兵庫民報2018年4月22日付)

丹波市で「学校統廃合を考える講演会」

市島5つの小学校「統合」に住民の不安、批判広がる


「学校統廃合を考える講演会」が四月二十二日、丹波市のライフピアいちじま(丹波市市島町)で開かれ、和光大学の山本由美教授が、「子ども、地域、住民にとって学校とは!」と題して講演しました。
主催は「丹波市の教育と地域を守る会」(代表世話人=清水孝志・前川昌藏・中川龍美の各氏)で、この講演会には、地元市島地域をはじめ市内各地から約九十人が参加しました。
*
丹波市教委が事務局となり、自治会代表やPTA代表、学校長などで組織している「市島地域のこれからの教育を考える会」(以下「考える会」)が、市島地域の五小学校区で「小学校の統合」などについての住民説明会を開き、「できるだけ早く、五小学校を統合することが望ましい」とする教育委員会への「提言」素案を示したのに対し、参加者から不安や批判、反対意見が数多く出されました。
ところが住民説明会が終わった今年三月下旬、「考える会」は、多くの地域住民の意見を切り捨て、「子どもの教育環境整備が最優先である」と結論づけ、「できるだけ早く、五小学校の統合が望ましい」と教育委員会に「提言」したのです。
以前「考える会」自身が行ったアンケートでも、「統合」に賛成は多くても五三%(認定こども園)で、保護者や地域住民では賛否はほぼ拮抗していました。この状況で、一方的に結論を出すことは時期尚早であり、「地域住民の理解が得られた」とする「提言」に正当性がないことは明らかです。また、小規模校・複式学級では「学び合いができなくなり、多様な考えにふれることができない」などをことさら強調して、「統合が望ましい」と結論づけています。
*
こうした動きに対して、今年三月に、小規模校を統廃合することで「子どもの教育や地域を本当に守ることができるか」と、「丹波市の教育と地域を守る会」を結成し、今回の教育講演会を開きました。
山本教授は、「地域コミュニティーの拠点」、「歴史的に形成された伝統・文化」として大きな役割をはたしている小学校を、政府が主導する各市町村の「公共施設等管理計画」に沿って、統廃合する動きが全国で進められ、大企業が活動しやすいように、「効率的」に地域を再編しようとしていると指摘。「統合」の対象とされている小規模校や複式学級のある小学校について、「教育的効果と学校規模の相関はない」とし、小規模校の子どもたちは、どんな状況になっても安定的に生きている」と強調しました。
そして、こうした「統廃合」の動きに対し「保護者・住民・教師の共同が対抗軸になることが重要」としました。
参加者から、「統廃合のねらいがよくわかった」「小規模校のほうが、メリットが多いことがよくわかった」「目からうろこがおちた。何かしなくては」などたくさんの感想が寄せられました。
―西本嘉宏(丹波市議)

(兵庫民報2018年4月22日付)

借上弁護団らが石井新西宮市長に要請

入居者に寄り添い継続入居へ必要な措置を


四月十五日に就任した西宮市の石井登志郎新市長に対し、借上復興住宅弁護団は四月二十日、〝シティハイツ西宮北口の入居者の継続入居を〟求め、阪神・淡路大震災救援・復興兵庫県民会議、被災地と被災者を考える懇談会、兵庫県震災復興研究センター、ひょうご震災復興借り上げ住宅協議会との連名で声明を発表・提出しました。
石井市長は、市長選挙にあたっての借上住宅弁護団や借り上げ住宅協議会の公開質問への回答で、入居者に住宅明け渡しを迫った提訴に対し明確に反対の意を表明し、URからの戸別借り上げによる入居継続に賛意を示していました(今号「観感楽学」参照)。
声明は、「市長の交代にあたり、西宮市は、速やかに、目の前にいるひとりひとりの入居者の現状に寄り添い、継続入居に向け、URと借上期間の延長に向けた交渉を行うために所要の措置を講じられるよう」要請しています。また、市議会各会派あての声明も発表し、この問題の早期解決への尽力を求めました。


借上弁護団は二十二日、神戸市産業振興センターで「健康権」を主題にシンポジウムを開きました。
最初に神戸大学大学院の井口克郎准教授が講演し、岩手県のある地区で行った東日本大震災被災者の生活調査で、住み慣れた自宅に戻ることができた被災者よりも、避難所・仮設住宅・災害公営住宅など、住居の転居を余儀なくされることが多かった被災者の方が、震災前に比べて健康が悪化する傾向が強く、要介護者の出現率も後者の方が高い傾向が見られたことを報告し、借り上げ住宅からの意に反する転居も入居者の健康権を侵すおそれがあると強調しました。(「健康権」については本紙四月一日八日十五日付に井口氏による解説記事を掲載しています)。
次いで、公営住宅法に詳しい水野吉章関西大学准教授、借り上げ復興住宅問題調査研究者の関本英恵氏、佐伯雄三同弁護団団長らが、借り上げ住宅裁判での健康権の活用の仕方などについて議論しました。


(兵庫民報)

たつの市議選で堀譲氏が議席回復・佐用町議選で日本共産党1議席増


たつの市議選(定数二十二・立候補二十八人)は四月二十二日投開票で行われ、日本共産党の堀譲=元=が千三百九十三票を獲得(得票率三・七七%)、十二位で当選し、前回選挙以来の党空白議会を克服しました。投票率は五八・六〇%。
堀氏は前回より得票で三百九十五票、得票率で一・二六㌽伸ばしました。二〇一七年衆院比例票比では八百十七票減でした。

佐用町議選(定数十四・立候補十五人)は四月二十二日投開票で行われ、日本共産党の平岡きぬえ=現=、金谷英志=現=、児玉雅善=新=の三氏全員が当選し、一議席増を果たしました。投票率六八・八三%。
日本共産党の得票合計は千五百八十四票、得票率一五・六〇%(前回は四人立候補で得票数二千百九十三票、得票率一八・二一%)。二〇一七年衆院比例票(七百四十五票)の二・一三倍、得票率で七・四三㌽伸ばしました。

(兵庫民報2018年4月22日付)

倉敷民商弾圧事件無罪勝ち取る兵庫の会が総会

戦争する国づくりと一体

禰屋町子さん

「『戦争する国づくり』と一体となった『えん罪』『弾圧』許さない」と、「倉敷民商弾圧事件・無罪を勝ちとる兵庫の会」は四月十八日、第四回総会を開き百四十六人が参加しました。
同事件は、広島国税局が倉敷民商会員の法人税法違反を口実に、事件とは関係のない三人の事務局員を法人税法違反、税理士法違反で逮捕・起訴した権力による弾圧です。現在、最高裁と岡山地裁でたたかわれています。
一月の禰屋裁判控訴審で、広島高裁岡山支部は、「一審判決破棄、差戻し」と判決しました。これまで二つの裁判の三回の不当判決に対し、全国の支援を受けた粘り強いたたかいが実ったものです。
弁護団の則武透弁護士は「差戻し審となり延長戦となった裁判に勝利するために、これまで以上に支援をお願いしたい」と呼びかけました。
倉敷民商の禰屋町子事務局員は「私が四百二十八日もの人権侵害の長期拘留からの保釈後、最初に訴えにきたのが三年前の『兵庫の会』結成総会でした。私は、自分と民商が間違っていないことを証明するために、無罪を勝ち取るまでたたかいます」と支援を訴えました。
「勝利の光をのがさず、引き続き運動を強めよう」と、署名運動、財政支援、裁判傍聴運動、学習活動などが呼びかけられました。
―田中邦夫(兵商連)

(兵庫民報2018年4月22日付)

ノーモアヒバクシャ近畿訴訟・傍聴記:2018-04-16

国の不法行為に厳しく迫る司法を願って

副島圀義

四月十六日の大阪地裁。法廷では、双方からの書証や準備書面の提出や、次々回(八月二十七日)の弁論期日決定などだけでした。

この間に原告のうちお二人について、国は判決を待たずに原爆症と認定。医療継続の必要性や、四日後に爆心地近くに入った事実などを、認めざるを得なくなったのです。しかし高齢で病気の被爆者にたいへんな負担を強いてきたことへの、損害賠償請求は引き続き争訟中です。
「被爆者いじめ」のような態度を続けている国の不当性を明確にしないかぎり、問題のほんとうの解決になりません。
ところが裁判所はこのお二人の訴えについて、他の原告と切り離して早く判決を出す姿勢を示したと聞きました。今まで、原爆症を認定した判決でも、国に損害賠償を命じた判決はほとんどありません。その「流れ」のままに、損害賠償請求をあっさり却下ということにさせてはならぬ、と原告側が主張して分離は認めませんでした。
この日本で、国の不法行為を改めさせ、ただすところまで「司法の独立」を確立させることもまた、さまざまな裁判の大きな課題なんだ、と、思いを新たにしました。(速やかな審理で、よい判決を原告に届けるべきことは言うまでもありませんが…)

報告集会で藤原精吾弁護団長は、九年前、麻生現副総理が首相であったときに被爆者と交わした「8・6合意」にふれ、「今の麻生氏はもうボロボロだけど、彼が署名した『合意』は生きている。政権はいったい誰のために仕事しているのか。誰を守っているのか。被爆者をいじめるために多額の国民の税金を使うとは何事か。モリ・カケと同じではないか」と怒りの発言。支援者たちの共感をよびました。

(兵庫民報2018年4月22日付)

ひなたぽっころりん〈618〉


(兵庫民報2018年4月22日付)

映画「マルクス・エンゲルス」を鑑賞する人のために(2)

平野喜一郎


© AGAT FILMS & CIE ‐ VELVET FILM ‐ ROHFILM ‐ ARTEMIS PRODUCTIONS ‐ FRANCE 3 CINEMA ‐ JOUROR ‐ 2016

パリでの出会い

一八四四年、エンゲルスはパリを訪れマルクスと再会した。ここではじめて意気投合し共同の文筆活動をはじめた。その最初の成果が『聖家族』である。エンゲルスはマルクスの論文を高く評価しながらも、経済学的知識の不足を指摘し、スミスとリカードの著書の研究をすすめる。映画では、パリでマルクスは共和派の思想家プルードンに会って友好をふかめている。プルードンは、自然権思想の立場から、『所有は盗みだ』として所有の廃止を説き、労働者に人気があった。映画にはプルードンが登場する。立派な風貌で、監督のプルードンへのリスペクトが感じられる。マルクスはプルードンのサークルに参加する。そこには一瞬ではあるが画家クールベが映される。

プルードン(右から3人目)とともに
© AGAT FILMS & CIE ‐ VELVET FILM ‐ ROHFILM ‐ ARTEMIS PRODUCTIONS ‐ FRANCE 3 CINEMA ‐ JOUROR ‐ 2016

ところが、その頃、ドイツでプロシャ王暗殺未遂事件があり、それをきっかけに、フランス政府は在仏ドイツ人にきびしくなる。一八四五年、反動的なギゾー首相によって、マルクスはパリを追放された。二十四時間以内に去れという命令で、やむなくベルギーのブリュッセルへいく。経済的な困窮のなかで、映画では、彼はまず職を求めて鉄道局を訪れるが、悪筆のゆえに拒否される。だが、貧困に負けることなく、ブリュッセルでは共産主義通信委員会を結成する。
マルクスは、ロンドンにエンゲルスを訪ねる。エンゲルスはロンドンの正義者同盟に加盟していた。正義者同盟は、労働者や職人が結集して、社会的正義をかかげ、「人類はみな兄弟」を主張していた。映画では、二人が参加者に、この社会は階級社会であり、涙や親切心だけでは資本家に勝てぬと説き、この同盟には「情熱はあるが理論がない」と批判する。作家ジョルジュ・サンドの「闘いか死か」という言葉が発せられ、自分を解放し人類を解放する労働者の使命に多数が気付く。会場の正面に「万国の労働者、団結せよ」のスローガンがかかげられる感動的な一瞬である。

二人の友情の結晶、共産党宣言

マルクスとエンゲルスとは真理への熱中と労働者解放の実践ということでは違いはなかった。ただ、個人としては、それぞれが違った個性をもっていた。
後にマルクスの娘のアンケートの問と答えが「告白」として残っている。それによれば、「あなたの好きな美徳」という問いに、マルクスは「素朴」と答え、一方、エンゲルスは「陽気」と答えている。「あなたの幸福感」には、マルクスは「闘うこと」、エンゲルスは好みのワインの銘柄をあげている。「好きな仕事」にはマルクスは「本の虫になること」、エンゲルスは「からかいあうこと」と答えている。二十の質問で一致しているのは、好きな詩人・散文作家と問われて、ゲーテを揚げていることだけである。
映画では、肉体が強くスポーツにも秀でていたエンゲルスと、体が弱くワインで二日酔いをするようなマルクスが描かれている。また、どこまでも科学的に真理を追究しようとするマルクスと、そのことは前提としながら、何よりもかれらの説を労働者に理解させようとするエンゲルスとのあいだに考えの違いがあったことも描かれている。労働者にわかりやすいパンフレットを作ろうとするエンゲルスにたいし、マルクスがふたリの課題を結びつけた著作を提案する画面も印象的である。かれらの著作のなかでもっとも大きな成功を収めた『共産党宣言』の提案である。映画は、二人がジェニーの協力で『共産党宣言』を執筆し完成する感動的な場面でおわる。
(続く)
〔三重大学名誉教授〕

前回(1)は4月22日付←(2)→次回(3)は5月13日付

映画「マルクス・エンゲルス」

ラウル・ペック監督作品/2017年、フランス・ドイツ・ベルギー合作、118分/カール・マルクス生誕200年記念作品/公開予定:5月12日(土)~=シネ・リーブル梅田☎06‐6440‐5930、6月9日(土)~=シネ・リーブル神戸☎ 078‐334‐2126

公式サイト:http://www.hark3.com/marx/

(兵庫民報2018年4月22日付)

『ローマ法王になる日まで』:神戸映画サークル協議会5月例会

独裁下も民衆ととともに


二〇一三年三月、第二百六十六代ローマ法王にアルゼンチン出身のフランシスコが選ばれた。
新法王は貧しさや貧困にあえぐ人々に寄り添った活動を展開。昨年末には長崎原爆の「焼き場に立つ少年」の写真を教会関係者に配布し、核兵器と平和の共存を否定した。また、トランプ大統領の内向きな政策を非難。「壁を作るより、橋を架けよう」と世界に呼びかけ、今年四月の復活祭では「シリアに平和を」と訴えた。
この映画『ローマ法王になる日まで』は法王になるまでのフランシスコのアルゼンチン時代を実話を下に描いた作品だ。
十九世紀、英国資本投下により、ヨーロッパへの一大食糧供給基地となったアルゼンチン。第二次大戦中に起こった軍事クーデターから保守派・軍部と革新派の政権交替が繰り返された。一九七六年には「五月広場の母親たち」の運動が始まった…。
―松本正憲(神戸映画サークル協議会)

映画『ローマ法王になる日まで』

5月25日(金)①11時30分②14時30分③19時、5月26日(土)①11時30分②14時30分③18時/神戸アートビレッジセンター/監督:ダニエーレ・ルケッティ、出演:ロドリゴ・デ・ラ・セルナ/2015年、イタリア、113分/一般1300円(当日1700円)、シニア・障がい者・大学生以下1300円/主催:神戸映画サークル協議会☎078‐371‐8550、http://kobe-eisa.com/

公式サイト: http://roma-houou.jp/
予告編:  https://youtu.be/j1ZQEmgo0mA

(兵庫民報2018年4月22日付)

観感楽学

四月十五日の西宮市長選で石井登志郎氏が新市長に就任した。市長選挙で「借り上げ住宅問題どう解決するか?」を問う、借り上げ住宅協議会の公開質問と回答が選挙後も関心を集めている▼協議会は、告示前、候補者に質問状を送り、全候補者から回答を得て、直ちに機関紙「たんぽぽ」39号に質問と回答の全文を掲載し借り上げ入居者に配布した。質問の要旨は、①借り上げ住宅入居者に対する「提訴」は取り下げ話し合うべき②自治体間で対応が異なっているが被災者はみな平等に扱うべき③URとの契約を継続して「継続入居」が必要―という三項目である▼質問に対し入居者に寄り添う回答をしたのは上田さち子氏と石井氏の二人であった。石井氏の回答の要旨は「そもそもこのような裁判が行政から住民に対して起こされていること自体不幸であり残念、これまで市が行ってきたことを精査したうえで、基本的にはまず和解を視野に検討したい」「被災者はどこに住んでいようがみな平等、復興住宅ができた経緯を考えれば、継続入居を認めていく方向で考えるべき」「解決策として戸別借り上げ手法など、前向きに考えたい」▼「たんぽぽ」に掲載されたこの公開質問と回答は、たちまち全入居者に広がり、元気を取り戻した入居者は、さっそく四月二十日、弁護団と共に声明を発表して早期解決に向け動き始めている。(D)



(兵庫民報2018年4月22日付)