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2018年12月16日日曜日

観感楽学

「笑いの落語、涙の浪曲、怒りの講談」と言われる。落語は「話す」、浪曲は「語る」、講談は「読む」の違いはあるが、落語も権力者への怒り、弱者への涙が笑いの中に練りこまれる▼「過労死落語」―上方落語の作家らでつくる「笑工房」が遺族、関係者らの取材を基に『エンマの願い』を創作。手話落語で知られる桂福団治の弟子桂福車が演じ、理不尽な死への怒り、遺族への共感が笑いとともに伝えられた▼過労を苦に自殺した青年が地獄行きか天国行きかの裁きを受ける。現世で暮らす母親のために、閻魔大王や鬼が一肌脱ぐという人情噺。急増する過労死の亡者への対応で鬼たちは忙しくて過労死寸前になる▼鬼たちが「会社に命まで預けんでいい」などと青年に説教したり、労働法などの知識もちりばめながら過労死をつくる社会への怒り、当人と遺族の無念さを語る▼桂福車は、今年二月に急逝した。『エンマの願い』は他の演者に引き継がれ、過労死のない社会が実現するまで語られるだろう。落語に限らず浪曲、講談など「大衆芸能」が社会的弱者の立場にたち、抑圧者とのたたかいを後押しする力も発揮する責任があるといえば、堅苦しすぎるだろうか。(K)

(兵庫民報2018年12月16日)

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