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2018年9月9日日曜日

県弁護士会「防災の日」イベント:災害報道や社会のあり方を討論


防災の日の九月一日、兵庫県弁護士会がイベント「阪神・淡路大震災の記憶をたどって」を県弁護士会館で開き、パネリストとして防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実氏、神戸学院大学現代社会学部社会防災学科の安富信教授、兵庫県弁護士会災害復興等支援委員会委員の永井幸寿弁護士が報告・討論しました。
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渡辺氏は、阪神・淡路大震災発生時のNHKテレビニュースを上映。当時の気象庁の発表方式の問題もあり、第一報(五時五十分)は「東海地方で強い揺れ」と表示され、「神戸で震度6」の画面表示は六時十六分。その後、六時四十四分の神戸放送局からの電話レポート「七カ所から火災発生」でようやく神戸がただ事ではないと分かったと振り返りました。
将来の南海トラフ地震のような広域・大規模な災害の報道については現地放送局への応援体制をどうつくるかが課題になっていると指摘しました。
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当時、読売新聞阪神支局デスクだった安富氏は、報道ヘリコプターの騒音が生き埋めになり助けを呼ぶ人の声をかき消したこと、避難所への取材集中など被災者の生活の場に入りこんだこと―など当時の報道の問題点を上げ、現在の報道を検証。「読売」八月六日付朝刊で「最大三百万円支援金……政府決定」と安倍政権がさも新しく決めたような報道をしているものの、実際には既存の被災者生活再建支援法の適用にすぎないなど、報道はかえって後退している部分もあると批判し、その背景には記者が半減していることを指摘しました。
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永井氏は、阪神・淡路大震災では弁護士自身も被災したが、「机と六法があれば仕事ができる」と、県弁護士会で相談活動を一月二十五日に開始。相談件数は一年間で推計十万件にのぼり、法的な解決や支援制度の紹介などで被災者のパニックを防ぎ、精神的支援となるとともに、被災者生活再建支援法などの立法へ向けての被災者の実態・要求など事実の裏付けとなったと報告しました。
また、流言飛語などを理由に災害報道に法的な規制をしようという論があることについては、関東大震災での「治安維持令」が実際には「朝鮮人の暴動」など国自身のデマ流布を糊塗したばかりか、「治安維持法」に発展させたことをあげ、報道規制は危険であり、正確な報道こそが求められると指摘しました。
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討論では、渡辺氏が、日常生活モードと災害モードとの速やかな切り替えができる社会的な仕組みを作る必要を提起。安富氏も、台風が来るなら仕事を休みにして、地域で高齢者の避難を手伝うというような社会にしなければと応じ、永井氏は、自民党改憲草案にあるような緊急事態条項は政府に権限を集中させ三権分立の原則に反し、危険だと指摘。改憲しなくても現行制度で災害モードへの対応は十分できると述べました。

(兵庫民報2018年9月9日付)

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