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2018年6月10日日曜日

連載・「神戸市都市空間向上計画」完全撤回を〈1〉

郊外の生活基盤取り上げ

神戸市の「都市空間向上計画」(以下「計画」)は、国の立地適正化計画制度に基づき設計されています。国の制度では、既存の市街地に、①都市機能誘導区域(医療施設、福祉施設、商業施設などの都市機能増進施設の立地を誘導すべき区域)と、②居住誘導区域(居住を誘導すべき区域)を設定します。区域の外側(居住誘導区域外)では、住宅や公共施設など開発が抑制されたり、移転の対象になります。

ニュータウンなど郊外切り捨て計画

「計画」では、ニュータウンなど人口が減少し、高齢化がすすんでいる地域の大半を居住誘導区域外にする考えで、今後は「緩やかに住宅以外の用途に土地利用転換を図り、自助、共助、公助のバランスをとる区域」にされます。
神戸市はこれらの地域を「ゆとりある居住区域」という穏やかな言葉を使っていますが、実際には交通・医療・福祉・介護など生活に必要なサービスが保障されず、切り捨てられる危険があります。

居住権・財産権を奪う計画

「居住権・財産権を奪う計画である」という市民の大きな批判に対して、神戸市は「(居住誘導区域外でも)引き続き居住していただくことができます」と釈明しています。
しかし、議会答弁でも「民間の維持が難しい場所には、神戸市も都市機能を集積はしない」(岡口副市長)としており、「区役所や図書館など」は、駅周辺の便利な地域に集積するとしています。
高齢化で移動できる範囲が小さくなっている住民から、生活の基盤である公共施設や利便施設を取り上げておいて、どうして住み続けることができると言うのでしょうか?

土地や建物の価値下落に拍車

居住誘導区域外とされた地域の不動産価値の下落は必至です。
神戸市は、「国土交通省は、『立地適正化計画』の策定により、ただちに地価水準への大きな変動が生じるものではない、との見解を示しており、神戸市も国と同様の見解です」としています。
しかし、同じ国土交通省都市計画基本問題小委員会の中間まとめでは「例えば、住宅需要がこれ以上見込めない都市郊外において、さらに住宅が新規供給されることは、インフラの追加整備の必要や都市中心部の空洞化等の影響から社会的に望ましくないと考えられる場合、一定のエリアの土地に関しては地価上昇や開発期待を持つことが合理的ではないことに関する情報を周知し、啓発することは、住宅を増やさないという政策の実現に効果的な手法となる可能性がある」とされています。居住誘導区域外への指定が、これ以上の地価の回復へ期待を断念させることであることを明確に語っています。

ニュータウンの抱える問題がより深刻に

現在でも「名谷南センターが縮小され、買い物が不便に」「須磨ニュータウンで公立幼稚園が二カ所も閉鎖された」「押部谷では、スーパーが撤退し、移動販売車が命綱に」「君影町でもスーパーがなくなった」など、神戸市が開発を主導したニュータウン地域で、行政も民間も「撤退」をはじめています。
神戸市が今やらなければならないことは、人口が減り、高齢化がすすむなかで様々な困難を抱えるニュータウン地域の課題に寄り添い、活性化させることです。ニュータウンなどの地域では自治会など住民組織がまちづくりの努力をしています。また、神戸市自身も「開発団地のリノベーション」施策をこの間行ってきました。「計画」は、こうした住民の努力に水を差し、市の施策とも矛盾するものです。ニュータウンは、そもそも神戸市が開発してきた地域です。「オールドタウン」化するもとでの困難に神戸市は心を寄せるべきで、手を引くような「計画」を絶対に認めるわけにはいきません。(つづく)

(兵庫民報2018年6月10日付)

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