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2018年5月27日日曜日

ノーモアヒバクシャ近畿訴訟・傍聴記:2018-05-16

疫学・統計の理解を欠いた  国側代理人の失礼な「尋問」

副島圀義

五月十六日の大阪地裁では、原告・Kさんの狭心症について河本先生が証言台に。

Kさんは陸軍の救援隊として八月六日に広島入りし十一日まで救護活動に従事。争点は「狭心症が原爆放射線に起因するかどうか」。国側は「(一時的な血糖値の高さをもって)高血糖値や高齢が原因だ」「Kさんは『安定型狭心症』だから心筋梗塞とは別」などと、放射線起因性をしつこく否定しようとします。
河本先生は「被爆直後の爆心地近くで救護活動に携わった方が下痢に苦しめられたら、放射線被ばくによる急性症状と考えるのが当然」「他の原因がいっさいない、とは言わない。被爆によってリスクがあがることを認めよ」「安定型と不安定型を機械的に区別するのは病気の実際をみないものだ」等々と、ていねいに証言されました。

印象に残ったのは国側代理人が「反対尋問」の冒頭「証人は物理学、疫学、統計学などについて大学院博士課程を出ているか?」と切り出したことです。いかにも「証人は素人だ」との「印象操作」をねらったのでしょうが、河本先生はそのような失礼な質問にも「その分野の大学院博士課程はでていません」とたんたんと答えられました。
そもそも、「疫学も統計学も」たくさんのサンプル群全体を通じての、大きな傾向・特徴を研究・解明するものです。「〇〇%程度発病する」ということが明らかになった場合でも、個々の人(サンプル)が発病するかしないか、をそのまま当てはめることはできません。「特定の誰かが、宝くじに当たるか当たらないか」は、当たる確率とは別の問題。確率が高ければ「当たりやすい」だけ。「被爆者は病気しやすい」のは事実ですが、被爆者である私が健康に恵まれていても「それはおかしい」のではなく「よかったね」ということですし、病気にかかりやすければ「やっぱりね」ということにつきます。
証人に対する失礼な「尋問」は、国側代理人の無知ぶりや人格の低さを、自ら法廷でさらけ出してしまったようでした。

(兵庫民報2017年5月27日付)

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