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2018年4月1日日曜日

『サーミの血』:神戸映画サークル協議会4月例会

差別に抗い生き抜く姿


『サーミの血』は北欧スウェーデンの美しい自然を舞台に描かれる、サーミ人少女の差別に抗い生き抜く姿を描く感動作です。
サーミ人とは、ラップランド地方、いわゆるノルウェー、スウェーデン、フィンランドの北部とロシアのコラ半島でトナカイを飼いならし、フィンランド語に近い独自の言語を持つ先住民族です。映画の主な舞台となる一九三〇年代、スウェーデンのサーミ人は分離政策の対象になり、他の人種より劣った民族として差別されました。
一九三〇年代のスウェーデン北部山岳地帯で暮らすサーミ人の十四歳の少女エレ・マリャが、当時の厳しい差別に直面しながら自ら人生を選び取ろうとする様子を通して、自己の民族的なアイデンティティを捨てなければならなかった女性の姿を浮き彫りにします。
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物語は、老いたクリスティーナが妹の死に際して故郷を訪ねるところから始まり、自分がサーミや故郷、家族を捨てた事を回想していきます。
クリスティーナは少女時代エレ・マリャという名前のサーミ人でした。彼女が寄宿学校で受ける仕打ちは差別としか呼べないものでした。そんな中で利発なエレ・マリャが「この土地から出ていきたい」と感じたのも無理からぬことでしょう。彼女の体験や行動を通してみると、当時のスウェーデン社会が異常事態に思えてきます。そして故郷を捨てたエレ・マリャはスウェーデン人に同化するサーミ人となりました。
物語は、エレ・マリャの門出の前で終わります。クリスティーナとなったエレ・マリャはどんな人生を送ったのでしょうか。そんな問いが観客の心の中に残されます。彼女は自分の意思でサーミとの訣別を選びました。たとえその決断が彼女に痛みを与えたとしても、自分の選んだ人生を自分のやり方で切り開いていくのでしょう。
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少数民族であることの難しさ、アイデンティティと向き合う彼らが、現代の実世界にも存在し、苦悩し、葛藤しているのだと思うと、それを知らない人に届けられるべきで、私たちがこの作品を見られることは素晴らしいことです。
正確に再現されたサーミ民族衣装や伝統歌謡・歌唱法「ヨイク」も見どころの一つです。中でも「ヨイク」という歌が一番印象に残りました。エンドロールに挿入されるヨイクは余韻を感じさせます。サーミ人の少女が抱える葛藤や選び取った人生。ぜひ繊細で力強いこの物語を例会でご堪能ください。
桑田葉子(神戸映画サークル協議会)

予告編:https://youtu.be/9R5AasNNRUs

アマンダ・シェーネル監督作品『サーミの血』 

4月20日(金)①11時30分②14時30分③19時、21日(土)①11時30分②14時30分③18時、神戸アートビレッジセンターKAVCホール/2016年、スウェーデン・デンマーク・ノルウェー、108分/一般当日1,700円(前売1,300円)、シニア・障がい者・大学生以下1,300円/神戸映画サークル協議会☎078‐371‐8550、http://kobe-eisa.com/

(兵庫民報2018年4月1日付)

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