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2018年3月10日土曜日

真の働き方改革のために〈2〉

堀内照文(前衆院議員)

データの〝捏造〟ともいうべき調査結果をもとにした答弁を撤回せざるを得なかった安倍総理は、国民と野党六党の結束したたたかいを前に、「働き方改革」関連法案から、裁量労働制を削除するところまで追い詰められました。
しかし、前回連載でも指摘したように、高度プロフェッショナル制度も「定額働かせ放題」という点では根は同じですし、残業代ゼロでいくらでも働かせるという点ではより悪質です。また、今回の連載で取り上げる、過労死ラインを容認する「残業規制」も大問題です。撤回するなら、これらも含めての撤回が必要です。
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安倍総理は今度の法案で、時間外労働の上限を月四十五時間かつ年三百六十時間と法定することをもって、規制強化だと言い張ります。しかし、労使が合意すれば、上限は年七百二十時間、複数月の平均では月八十時間以内、単月では百時間未満というものです。しかもこの年上限七百二十時間は、休日労働を含みません。昨年三月の参院厚生労働委員会でわが党の小池晃議員(書記局長)が「理論的には休日労働を加えれば時間外労働は十二カ月連続八十時間、つまり年間九百六十時間が可能になるということですよね」ときくと、厚労省は「理論上は年間九百六十時間となり得る」ことを認めています。月に八十時間とか百時間などというのは、過労死ラインを超えるもので、到底認められるものではありません。
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さらに重大なのは、過労死の多い研究開発・建設・自動車運転・医師は五年間適用除外となっていることです。
それぞれの分野での対策を検討していると政府はいいますが、例えば医師の働き方をめぐって厚労省で検討されていることは、ICTの活用や医療行為の一部を看護師などに担わせるタスクシフティング、タスクシェアリングなどによる「生産性の向上」です。看護師の長時間労働も大問題です。これでは何の解決にもなりません。それどころか、診療のための学習や、手技向上のための見学、その他研究や論文作成は、自己研鑽として労働時間に加えないことも検討されています。医師の絶対的不足の解決こそ必要です。
建設分野はどうか。昨年、建設工事における適正な工期設定等のためのガイドラインが策定されました。そこでは週休二日等の休日の確保、準備・片付け期間、作業不能日数などの考慮、社会保険の法定福利費、安全衛生費の確保などを、発注者、受注者双方が守るようにとされています。しかし、この間の新名神での相次ぐ死亡事故でも、工期の問題が広く指摘されていましたが、工事を発注したNEXCO西日本は「適正だ」と繰り返すだけでした。
自動車運転にかかわっては、国土交通省が直ちに取り組む施策なるものを掲げていますが、トラック、バス、タクシー事業のかけもち、ダブル連結トラックの導入、第二種免許の受験資格の見直しの検討など、安全を軽視する驚くべき内容だと言わなければなりません。
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長時間労働の規制を標榜しながら、過労死ラインを容認する時間外労働を認めることは許せません。現行でも厚労大臣告示として定めている週十五時間、月四十五時間、年三百六十時間の時間外労働の上限を、例外なしに守らせる規制こそ必要です。

(兵庫民報2018年3月11日付)

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