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2018年1月13日土曜日

「母―小林多喜二の母の物語」上映に寄せて

三浦綾子さんが伝えたかった平和への思い

神戸三浦綾子読書会 池田真一

多喜二の遺体に呼びかける母セキ(©現代ぷろだくしょん)

昨年二月から、「母―小林多喜二の母の物語」という映画が全国の各地で上映されています。『蟹工船』で有名な、作家・小林多喜二の母・セキさんの、おおらかな人柄とともに、捕らえられて殺された息子・多喜二の辛苦の生涯を描いた作品です。
この映画は、作家・三浦綾子さん(一九二二~一九九九)による『母』という小説が原作で、三浦さんの代表作の一つでもあります。

『氷点』発表当時の三浦綾子さん

三浦さんは一九六四年(昭和三十九)、朝日新聞の一千万円懸賞小説入選作『氷点』で作家デビューし、八十冊あまりの著作を出されました。その作風は、キリスト教徒としての観点から、社会的弱者に温かい眼差しを向けつつ、「人間が人間として、人間らしく生きることの素晴らしさ、またその逆の意味での難しさ」を根本的な主題としたものですが、その中でも特に、ご自身が戦時中、小学校の教師として軍国教育をしてきたことの経験から、「苦難」の問題、「戦争と平和」の問題について、『銃口』を始めとした様々な作品を発表してきました。
また三浦さんは作家生活の中で、様々な大病を患いました。『母』という作品は、その大変な中で執筆され、一九九二年に角川書店から出版されました。夫・光世氏の長年の祈りと強い勧めにより、作者はこの作品を書こうと決心しました。最初は、共産主義の思想や知識に疎かったこともあって、なかなか執筆を始めるきっかけがつかめませんでした。しかし、多喜二が生まれ育った家庭の明るさ、そして、多喜二を生み育てた母セキさんの温かい人柄に感動し、その一方で、息子・多喜二が、治安維持法によって捕らえられて拷問を受け、不当にも殺されたことへの、母の深い悲しみとやるせなさに深く心を痛め、時には涙を流しながら描き上げました。
池田真一さん
この小説『母』は、これまで、演劇や朗読などによって広く伝えられてきました。さらに今回、映画という媒体によって、この物語が紹介されたことを大変うれしく思っています。原作に忠実に描かれて、母・セキさんの大きな愛情が伝わる素晴らしい映画です。ぜひ皆様もご鑑賞くださいますとともに、周りの方々にもお勧め頂ければ幸いです。
この作品が、これからの時代を生きる私たちにとっての道標となり、広く用いられますことを期待致します。

映画「母―小林多喜二の母の物語」



  • 1月13日(土)14時、明石市民文化会館中ホール
  • 1月14日(日)①10時20分②14時30分、姫路市文化センター小ホール
  • 2月25日(日)14時30分、東灘区民センター大ホール
原作:三浦綾子『母』(角川書店)、監督:山田火砂子、出演:寺島しのぶほか/上映前に山田監督の舞台挨拶を予定/前売1,200円(当日1,500円)/前売券申し込み・問い合わせ:現代ぷろだくしょん☎03‐5332‐3991、神戸三浦綾子読書会☎090‐3670‐3583、日本共産党兵庫県委員会☎078‐577‐6255

(兵庫民報2018年1月14日付)

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