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山名さんと自画像(後ろ)、アロハシャツ、サル |
芦屋市の山名重信さんは今月八十四歳になりました。喜寿(七十七歳)から習い始めた絵手紙をとば口に水彩画、立体造形、陶芸、洋裁、調理にと才能を開花させています。
夫婦で余生を芦屋で過ごそうと七年前、岡山県牛窓から越してきた翌々月、突然、妻・順子さんが他界。食事など家事に困りました。コンロや炊飯器、洗濯機の使い方などはメーカーに問い合わせ、料理はインターネットで作り方を調べ、一カ月後には三食作れるようになりました。
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毎日の食事の記録 |
しかし、近くに友人もなく途方にくれていた時、図書館で新日本婦人の会の絵手紙教室のチラシを見かけました。「七十七のおじいさんですが、見学させてください」と勇気をだして行ってみました。描いてみたらほめられました。「下手さならだれにも負けません」と山名さんは言いますが、嬉しくなり、女性ばかりの教室に男性ひとりでしたが習い続けています。
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絵手紙 |
水彩画は絵手紙教室の仲間から誘われて始めました。自画像、風景などを描いています。
洋裁は、たんすを整理していて見つけた海の生き物柄の布から。アロハシャツがつくれるかもと、手芸店で型紙を買ってきて手縫い。襟の付け方やボタンホール、絵柄の合わせ方など失敗と工夫を重ねて仕上げました。
この他、公民館や保健福祉センターの絵手紙、料理教室などにも参加して、ますます腕を上げています。
山名さんの器用さに気づいた新婦人の会員から「原発反対の集会に持っていくから何かつくって」と頼まれたのが二〇一五年二月の原発なくす会などによる県庁包囲行動に「原発再稼働だメー」と登場したヒツジの立体作品です。段ボールなどで体をつくり、細く切れ目を入れたキッチンペーパーを貼り重ねています。
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2015年2月の県庁包囲行動に登場した「羊」(山名さんは右端から2人目) |
山名さんは岡山県の建設会社で長く労働安全衛生に携わってきました。「安全対策のコストはたいしたことありません。事故を起こして信用をなくすことの方が問題です」と言います。
そのために「金を出せないなら知恵を出せ」「守らなければならないのは法律だけではない。命を守れ」と、例えばふつうは屋根の端に落下防止柵を設けてすます場合でも、作業員が滑落の勢いで柵に激突すれば怪我をするおそれがあるとみれば、屋根の途中に卓球のネットのような網を張るなどの対策を考え出しました。また、工期に無理があるのをみつけ施主にかけあい延ばしたことも。
「鬼」と恐れられるほど厳しく安全を追求し、工夫を重ねてきた人生をいま、暮らしに花咲かせている山名さんです。
山名さんの作品展は十二月二十二日までKOBE須磨きらくえんギャラリー(妙法寺駅から送迎バス)で開かれています(毎日九時~十七時)。
〔〝趣味で腹いっぱい〟は「しんぶん赤旗」で連載中の小説のタイトルです〕
(兵庫民報2017年12月17日付)