憲法と市民の力で平和を
日本国憲法公布から七十一年の十一月三日、神戸憲法集会が神戸市立西区民センター大ホールで開かれ、定員四百八十人の会場が満席となりました。兵庫県憲法会議などでつくる実行委員会が主催、憲法共同センターなどが協賛しました。
東京慈恵会医科大学教授(憲法学)の小沢隆一氏の「今、憲法九条を守ることの意義」と、兵庫県原水協事務局長の梶本修史氏の「新しい歴史をひらく核兵器禁止条約」の二つの講演が行われ、ゆがふバンドが沖縄のうたを歌いました。
今、憲法9条を守る意義
小沢隆一東京慈恵会医科大学教授![]() |
小沢氏 |
小沢氏は、安倍首相が提唱する九条三項「加憲」は、九条を軍事に対する制限から権利を与える規範に転換するものであり、集団的自衛権の全面行使を狙うものだと指摘。軍事への人員確保のため災害救助活動は拡充するどころか縮小すること、自衛隊法はじめ関連する法律の改正により戦争法のバージョンアップが行われること、さらに、軍事費の増大、軍事産業の拡大、軍学協同の促進など波及効果もあげ、「九条改憲を〝小さく見せる〟企みとしての三項加憲の本質を徹底的に暴く」ことが必要だと強調しました。
自民党が改憲の課題として高等教育無償化、緊急事態条項、参院選挙区合区解消などをあげていることも批判しました。
国連での核兵器禁止条約成立について小沢氏は、大国中心の国際秩序への異議申し立て、市民社会の国際活動の成長とその成果であり、立憲主義の国際化の兆しといえ、憲法九条とともに「法と世論の力による平和の実現」という課題を共有していると述べました。
日本国憲法は、国家権力には憲法尊重擁護を義務づけ(九十九条)、国民には「憲法が保障する権利」を保持する責務を求め(十二条・九十七条)、立憲主義の「見事な芸術品」だと指摘しました。
小沢氏は講演の結びにかえて、映画『この世界の片隅に』に寄せ、引き続く戦争に対し「否」と主張し続けること、その根底にあるのは(日本国憲法が保障する)個人の尊重と平和的生存権であり、「戦争のための砦」ではなく「平和への路(途)」を築いていこうと呼びかけました。
歴史ひらく核兵器禁止条約
梶本修史兵庫県原水協事務局長![]() |
梶本氏 |
梶本氏は、核兵器禁止条約採択によって核兵器が歴史上はじめて明文上も「違法」なものとなったと強調。会議名が「核兵器の全面廃絶につながる、核兵器を禁止する法的拘束力のある協定について交渉する国連会議」であったこともあげ、核兵器保有国とそれに同調する国が条約への参加する道も規定し、条約が「核兵器のない世界」というゴールを可視化していると説明しました。
八〇年代半ばまで、核兵器廃絶は「空想論」だとして国外では国際政治・平和運動の中心課題とされていなかったもとで、被爆者が自身の体験を伝え、核兵器の非人道性を訴え続け、反核・平和運動とともに「ヒロシマ・ナガサキアピール署名」を積み重ね、九〇年には兵庫県でも県民過半数に広げてきたことなど、条約採択が草の根からの苦難の道を乗り越えたものであること強調しました。
現在、条約への署名が五十三カ国(批准三カ国)であることについて、梶本氏は、それぞれの国で政府と議会に条約調印と批准をさせるたたかいが重要だと指摘しました。
特に、世界と国民の願いに逆行する日本政府に迫るたたかいの重要性を強調し、「『ヒバクシャ国際署名』で核兵器保有国と日本など同調国を包囲しよう」「日本で調印・批准する政府をつくることは被爆国の運動の国際的な責務だ」と力説しました。非核「神戸方式」も改めてその値打ちに着目しようと述べました。
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ゆがふバンド |
開会挨拶では憲法会議代表幹事の佐伯雄三弁護士が、総選挙での市民と野党の共同の経験を生かし、憲法改定国民投票に打ち勝つ力をつけるとともに発議を許さないたたかいに打ってでるために学ぼうと呼びかけました。閉会挨拶では同代表幹事の津川知久氏が「一万人意見広告」運動の到達を報告し(三面に記事)、「三千万署名」への取り組みを訴えました。
(兵庫民報2017年11月12日)