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2017年11月12日日曜日

神戸演劇鑑賞会11月例会:劇団民藝『集金旅行…』


昭和初期。東京・荻窪に古びたアパート富士荘があった。持ち主が急死。残ったのは多額の借金のみ。身よりもない。そこで、富士荘に住み続けたいと願う住民たちは一計を立てた。
十号室に住むヤブセマスオ氏を管財人に仕立て、部屋代を踏み倒し、夜逃げした人たちから滞納金を取り立て、借金に当てる。売れない小説を書いているヤブセ氏は、小説のネタも兼ねると同意する。この計画を知った七号室の、コマツランコさんが、昔の不実な恋人たちから慰謝料を取り立てたいと、同行を申し出た。旅は道連れ世は情け。まったく目的の違うふたりの旅が始まった。
最初は岩国。宿に着くと、さっそく、女中から街の見所や、取り立て相手の情報を探った。女中は、方言でこと細かく告げた。ヤブセ氏は、筋をきっちりとおし、コマツさんは艶ぽっく相手に迫り、集金は大成功。残りの、下関、福岡、尾道、福山も、ほぼ同じ方法で成功させる。そして、この旅で浮かびあがって来たのは、庶民の生活の中にあるユーモアとペーソス。美しい方言。そして、その庶民を演じるのが民藝の主役級の俳優たち。一挿話、一挿話をつなげると、昭和初期の厳しい社会を人情豊かに、しなやかに生き抜いた、先輩たちだった。
もう一つ心に残るのは、ヤブセ氏の心情を語るナレーションの文章に、小説家・井伏鱒二が光って見えた。
(小谷博子)

劇団民藝公演『集金旅行』

原作=井伏鱒二、脚本=吉永仁郎、演出=髙橋清祐、出演=樫山文枝・西川明ほか/①11月30日(木)18時30分②12月1日(金)13時30分③2日(土)13時30分/神戸文化ホール中ホール/会員制(入会時に入会金1,000円と月会費2カ月前納)、月会費3,500円(大学生2,000円、中高生1,000円)/☎078‐222‐8651、Fax078‐222‐8653


(兵庫民報2017年11月12日)

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