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2017年10月21日土曜日

観感楽学

わずか六歳にして「雪の朝二の字二の字の下駄のあと」の句を詠んだのは田捨女。丹波・柏原の出身で正岡子規は「元禄四俳女の一人」としています。子育てを終え四十六歳で仏門に入り播州・網干の龍門寺に庵を結びそこで六十六歳の生涯を終えます。龍門寺と言えば日本仏教会の会長もつとめられた河野太通さんが住職。彼女の墓は同寺にいまもまもられています▼その彼女の句の一つを紹介し、どんな月か考えて欲しいというのは坪内稔典さん。「いつかいつかいつかと待ちし今日の月」。いつかが三回かさなるので十五日。一方、われらが一海知義先生は十五夜をうたう有名な漢詩として白楽天の七言律詩を解説。「三五夜中 新月の色 二千里外の故人の心」。さんごは十五、新月は昇ったばかりの月、故人とは親友の意▼陰暦八月十五日、中秋の名月をかたや自分の恋人のようにうたい、かたや左遷され遠く離れた友人を思うよすがにする、そして日本は足し算で中国はかけ算でと、十五夜を表現するそのひねり方の違いにも嬉しくなります▼でも田捨女の「今日の月」や白楽天の「三五夜の新月」がはたして満月だったのか、変な心配もしてしまうのですが。(T)


(兵庫民報2017年10月22日付)

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