ビートルズの曲が今にも聞こえそう路地の奥には古きスタジオ
古谷さだよ
父果てしニューギニアには食も無く餓死病死続出すこれが戦場
鵜尾和代
見えるもの聞こえることに好奇心疲れ知らずに輝く三歳
新井 幸
甲子園勝者もいずれ敗者となる高校野球に人生を重ねみる
古賀悦子
さるすべりチリチリ乾きこの世にも灼熱地獄と呼びたき日あり
山下洋美
新しきカバン買いきて夢も詰め一人の時間安曇野の旅
塩谷凉子
闊達な声をききたしもう一度不意の訃をきく慟哭の朝
石井敏子
いつになく深紅に染まる百日紅萎れた我が身に突き刺すごとく
大中 肇
若き日に夢にまで見た世の中を歳ふりてなお求めてやまず
山下 勇
蝉しぐれ残暑見舞いの絵手紙に透かしうちわの風届けられ
高木庸子
小六の「平和の誓い」二人して原稿も見ず声を合わせる
古賀哲夫
核兵器禁止条約批准する国にせんかな被爆の重み
西澤 愼
(「兵庫民報」2017年9月24日付)