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2017年7月23日日曜日

観感楽学: 「こんな」と「あんな」

「こそあどことば」というのがある。指示する言葉の体系で、話し手から見て、空間的に近い=こ、少し離れている=そ、遠い=あ、定まらない=ど、に分類される▼たとえばいくつも並んだスイカの中で気に入ったものを、対面販売してくれているお店の人に指示するとき、自分に近いものから「これ」「それ」「あれ」と使い分け、迷っているときは「どれ」となる▼都議選最終日、安倍首相は秋葉原に集まった人たちをまえに「こんな人たちに、みなさん、私たちは負けるわけにはいかない」と息巻いた。目の前の聴衆後部で「アベハ、ヤメロ」とコールしている人たちを意識してのことだ。一方その八日後、新宿で行われた安倍退陣を迫る集会において、共産党の小池晃書記局長は「あんな人に負けるわけにはいかない」と声を張り上げた。当然だがその場には安倍首相はいない▼小池さんはもちろん、ことばの壊し屋であるかの人でさえ、この場合において「こそあど」の使い方に文法的な誤りはなかった。しかし、「どんな」でもなく「あんな」でもなく「そんな」でもない、明確に多数となった「こんな」人たちに追い詰められた姿がそこにはあった。(T)

2017年7月23日付「兵庫民報」掲載

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