給付型奨学金制度の創設で地域の中小病院看護師確保を
兵庫県民主医療機関連合会事務局 森浩司
兵庫民医連看護委員会では、看護師確保の課題で、看護学生へのアンケートと合わせ、兵庫県に対し、二百床以下の中小民間病院就職希望者への看護奨学金制度の復活を求める運動に取り組みました。内容と今後の方向性について報告します。
兵庫県の看護奨学金制度の現状
過去には、兵庫県も、官民を問わず県内の医療機関就職希望者を対象とした奨学金制度を設けていましたが、行財政改革の一環として二〇〇九年度を最後に廃止。以降は県立病院のみを対象とした制度となっています。
看護学生アンケートを実施
看護奨学金制度の復活を求めるにあたり、兵庫県に看護学生の生活・経済実態を示すことが必要だと考え、看護学生にアンケートをお願いしました。「一日看護体験」でつながった看護学生約八百人へのニュースに折り込んだ他、実習を受け入れている大学にも依頼し、総数二百五十六人の看護学生から回答を得ました。
六割以上が奨学金を受給。そのうち七割が日本学生支援機構から受給している他、複数の奨学金を受給している学生もいます。貸与月額は平均七万五千円、最大で二十万円を超える学生もいます。奨学金の使途では学費・交通費・書籍代の他、食費や水道光熱費など生活費にもあてられています。
一方、奨学金を受けない理由として、「返済が必要になるから」が二割にのぼります。
アルバイトは七割の学生がしており、平均月収は五万円弱です。アルバイトの目的では生活費がおよそ四割、学費・書籍代が二割です。奨学金の平均月額とアルバイトの平均月収を合わせると、学生生活に必要な費用は月額十~十五万円と考えられます。
自由記載では「学費も高いし、家庭も裕福ではないので奨学金制度ができたら利用したいと思う。ぜひ復活させてほしい」「海外だと公立でも私立でも、もっと安く通えるのに日本は学びづらいです。経済的な理由で大学を中退する人もいます」など切実な声が寄せられました。
県医務課との懇談、会派まわり、請願書提出
看護学生アンケート結果と、地域医療を支える中小民間病院の新卒看護師確保の必要性と困難を抱える現状をもとに県医務課と懇談しました。
医務課は看護師確保は必要と認めながらも「看護師養成校の運営費加算、離職防止、復職支援の取り組みを強めている」と述べるにとどまり、さらには「中小の慢性期病院に新人看護師が必要なのか?」と発言するなど、民間病院の新卒看護師確保と学生の就学支援に極めて消極的な姿勢でした。
その後の県議会請願行動では、看護委員が各会派をまわり実情を訴えましたが、その場では同調をえたものの、紹介議員になってもらえたのは日本共産党のきだ結議員と無所属の丸尾牧議員のみでした。
審査した健康福祉常任委員会では「奨学金が看護師確保につながると考えにくい」と多くの議員が発言し、不採択とされました。
今後の方向性、県下の要求運動として
昨今、看護に限らず学生の高学費と貸与型奨学金が社会問題としてクローズアップされ、国会でも給付型奨学金の拡大を求める論戦が行われています。
日本は返済不要の給付型奨学金制度は皆無に等しく、ほとんどが返済義務のある貸与型奨学金制度です。そのため、経済的に余裕が無くても奨学金制度を利用せずにアルバイトでまかなう学生や、奨学金をなるべく使わないようにする学生など、学業とアルバイトの板挟みに苦しむ学生が増えています。
長野県では教職員組合を中心とした粘り強い運動で県独自の大学生への給付型奨学金制度を創設したことを「しんぶん赤旗」報道で知りました。
長野県の運動に学び、県「行革」ストップ連絡会に結集する教職員組合や婦人団体、医系学生を含む広範な青年学生と力を合わせて給付型奨学金制度の創設を求める要求運動を展開し、看護師確保の課題を全県民的な要求として結実させたいと思います。
(2016年3月20日付「兵庫民報」掲載)