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2016年3月6日日曜日

借り上げ住宅協議会が「提訴」への抗議集会


神戸市の久元喜造市長が借り上げ復興住宅キャナルタウン住宅(兵庫区)の居住者3人の退去と損害賠償を求め提訴したことに対し、ひょうご震災復興借り上げ住宅協議会が2月29日、同住宅集会所で集会を開き、市に抗議し、入居者を励ましました。

協議会の安田秋成代表は「神戸市は一度も話し合いに応じず、いきなり提訴。絶対に許せない」と挨拶。借上弁護団の佐伯雄三団長が争点を解説し、代理人として全力を尽くす決意を表明。日本共産党の大かわら鈴子、赤田かつのり市議が市議会報告。丹戸郁江さんが提訴された三人を代表して決意を述べ、支援を訴えました。

また兵庫区、長田区、灘区、西宮市の連絡会からも激励と連帯の挨拶がありました。

(2016年3月6日付「兵庫民報」掲載)

2016年度神戸市予算案

市民の暮らし・営業の応援よりアベノミクス「成長戦略」展開


神戸市は総額一兆七千七百二十一億円の二〇一六年度予算案を発表しました。

重点は大型プロジェクト


久元喜造市長は、都心の再生などの「プロジェクトを重点的に展開」するとして、三宮再開発に二十三億円、ウオーターフロント整備に七十二億円、巨大港湾づくりに百四億円、神戸空港に三十二億円、医療産業都市構想に四十二億円を計上しています。

地場産業や既存小企業支援の拡充要求は見送られる一方、誘致企業や新産業をすすめる大企業支援メニューを増やすなど、アベノミクスの「成長戦略」を本格展開しています。

市民サービスは後退


こうした施策をすすめるため財源づくりで市民サービスは後退。新年度は敬老祝い金や配食サービスの廃止、小中学校や幼稚園の統廃合など、五十二事業を見直し。影響額は今後五年間で百億円にのぼります。民間委託は、中学校給食が調理業者の安全基準違反で提供を中断したにもかかわらず、小学校給食の調理まで広げようとしています。

三宮では再開発を進める一方、市全体の公共施設は、三十年で延床面積の一〇%削減をうちだし、小中学校や地域施設、市営住宅の統廃合で地域の切り捨てをすすめようとしています。

市長は「ポスト震災二十年」を掲げ、借り上げ復興住宅の明け渡しを求めて入居者を提訴。被災者の生活実態に寄り添わない冷たい市政が浮き彫りになっています。

市民の運動の反映も


予算案では「三宮一極集中」への批判や市民の粘り強い運動が反映しています。

子どもの医療費助成は、就学前までの所得制限を撤廃、三歳以上の一部負担金は四百円に。母子等、重度障害児、小児慢性特定疾患医療費助成も改善。多子世帯の保育所保育料も国と県に上乗せして軽減します。

HAT神戸に小学校と特別支援学校を新設。御影北小学校の増改築を予算化。学童保育は全公設施設で十九時まで受け入を実施します。

西神中央駅周辺に区役所を建設。阪急花隈駅のバリアフリー化。神戸電鉄の高齢者利用促進パスは、神戸高速鉄道に乗り入れできる「シーパスワンプラス」(一枚五千七百円)が発行されます。

市政の軸足を三宮一極集中・「成長産業」頼みではなく、暮らしと営業応援に移すことが求められます。

(2016年3月6日付「兵庫民報」掲載)

神戸市議会:大かわら・味口両市議が代表質疑

二月二十五日に開かれた神戸市議会本会議で日本共産党の大かわら鈴子、味口としゆき両市議が代表質疑に立ち、久元喜造市長らの政治姿勢をただしました。

大かわら議員は、神戸市の新年度予算は、大型開発を優先する一方で、敬老祝い金などの福祉施策切り捨てなど、市民の厳しい暮らしと営業を全く顧みていないと批判。

神戸市は、三宮周辺やウオーターフロントで九十七ヘクタールもの巨大再開発をすすめようとしていますが、大規模開発で「経済活性化」は望めないことは震災後に行われた開発の失敗であきらかです。

新長田再開発は多くのビルが建ち人口が増加しても商店街の活力をとりもどせていない実態。雇用と税収増などバラ色に宣伝された神戸空港は、赤字運営と二千億円以上の多大な借金が残されています。

大かわら議員は、大型開発優先ではなく、住民福祉の増進という地方自治体の責務をはたす予算への転換を求めました。

また、大かわら議員は、「借り上げ住宅を終の棲家と信じ、寄り添いながらやっと生きてきた被災者を〝不法占拠〟と断定し、法廷に立たせようとしている」と批判。借り上げ住宅明け渡しを求めた提訴の取り下げを求めました。

借り上げ住宅提訴:「勝訴勝ち取りたい」と市長答弁


久元喜造市長は「安定した財政基盤の構築のために、波及効果の高い民間投資の誘導、積極的な企業誘致をすすめる」「(借り上げ住宅は)この間の対応は、全く問題ない。勝訴を勝ち取りたい」と答弁しました。

味口議員は、市長が、三宮一極集中に熱中する一方で、財源捻出策として地域の公共施設の削減・縮小を計画している問題をとりあげました。神戸市は、三宮駅前に観光バスのターミナルを整備するための中央区役所の移転や、少子高齢化で苦しむ地域から、保育所、幼稚園、市営住宅と連続で公立施設を廃止させようとしています。

味口議員は、公の施設は住民自治の要だとの基本的な認識が市長には欠けていると厳しく批判。新年度予算で市長が推進している上からの地方創生を中止し、住民自治に立ち返った予算に編成し直すべきだと迫りました。

また、JR西日本が高架下の「元町高架通商店街(通称モトコー)」の約三百店舗を追い出そうとしています。味口議員は、神戸市はJRの三ノ宮駅の建て替えを「機運」として再整備を支援しようとしているが、まずやらなければならないのはモトコー存続の立場でJRに働きかけることだと求めました。

久元市長らは「三宮のことばっかりやっていると言われているのは事実だ。各地域でバランス良くまちづくりをしていかないといけない。だからといって三宮や都心の再生は神戸の街全体の成長に重要だ」「モトコーはJRと契約者の話し合いを基本に対応していきたい」「JR三ノ宮駅の建て替えとは関係ない」と答弁しました。

(2016年3月6日付「兵庫民報」掲載)

市民にあたたかい神戸市政を〈7〉:コミュニティ支援

地域コミュニティ支える会館は市の管理で存続を

鶴甲会館問題を考える会 大江昭幾

2014年6月のビラ

鶴甲会館はどうなるの?と住民の方に、今、疑問と不安の声がひろがっています。

鶴甲会館は灘区の最北部に設置され、長年、地域のコミュニティセンターとして利用されてきましたが、耐震強度の不足から二〇一五年度末で使えなくなると神戸市の見解が出されました。

大半の住民がこのことを知ったのは、二〇一三年末に配られた日本共産党の味口としゆき神戸市議の市議会報告ビラででした。


鶴甲団地は昭和四十年代、神戸市が「山、海に行く」と呼んだ開発事業の始まりとなりました。東部の海面の埋め立てに鶴甲山の土砂を採取。跡地に鶴甲団地を造成した際、地域住民の福祉と文化向上を図るコミュニティ施設として鶴甲会館が設置されました。以来今日まで、地域住民をはじめ灘区民、神大生など広く利用されてきました。

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神戸市は、鶴甲会館について、行財政改革の一環として、住民自治組織または民間事業者による管理が望ましいととして、市の管理から手放す計画を進めています。これは市民生活犠牲、福祉切り捨ての一方で大企業支援、企業誘致優先の基本方針にそったものです。

しかし、計画をすすめるうちに、会館の自主管理を提起するには地元住民組織がたいへん困難な状態にあることが分かってきました。

鶴甲団地は高齢化が進み、六十五歳以上が人口の二九%。一丁目から五丁目では三四%にもなっています。地域の活動への参加は減少しています。連合自治会の組織率も大きく低下しているのが現状です。

神戸市は、昨年から五回ずつの二度にわたるワークショップを開催し、鶴甲会館について住民の声を聞く取り組みをしていますが、参加者はそれぞれ数十人で住民全体を対象にしたものではありません。

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それに対し、住民の運動が大きく広がりました。

私たちは「鶴甲会館問題を考える会」を結成して、味口市議から、神戸市の動きなどについて二回、聞く機会をつくりました。参加者は神戸市の考え方、歴史的経過を学び、たたかいの大きな力となっています。また、神戸市に対し全住民を対象とした「説明会」を開くことを要請し、実施させました。

「考える会」とは別に住民有志による要求署名活動(約千筆)も取り組まれました。住民や会館利用者と対話をしながら署名を集める活動は、住民との結びつきを強化し、切実な要求を集約する活動として画期的で、「考える会」の私たちも大いに励まされました。

昨年九月には、みなと総局に陳情しました。署名活動に取り組んだ二人と私の三人が市議会委員会で陳述し、地域の切実な声を市当局に直接伝える機会となりました。

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以上の活動や神戸市の方針を知るなかで、神戸市政が住民の暮らし、福祉、教育、子育てについて本気で考えているのか?という疑問が鶴甲地域に住む方々の間に広がりました。

私たちの税金が誰のために使われているかについて知る機会となっていることは、今後の鶴甲会館問題を考える上で大きな力になります。

さらにたたかいのなかで神戸市政の現状を知る人々が広がっていくと確信しています。

(2016年3月6日付「兵庫民報」掲載)

日本共産党兵庫県女性後援会が総会

各地域やたて線で参院選勝利へ多彩な取り組み


金田氏と、『峰生クリアファイル」を紹介する岸本会長

日本共産党兵庫県女性後援会は二月二十七日、二〇一六年度定期総会を開き、県下各地区・たて線の女性後援会が学習・交流し、参議院選挙での比例での躍進・金田峰生予定候補の勝利めざし頑張ることを確認しあいました。

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金田峰生参議院予定候補が記念講演。五野党合意を紹介し、「これからが本番、戦争法廃止・生命の尊厳を守る社会実現のために、参議院選挙でどうしても私を国会に送ってください」と力強く訴えました。

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休憩のあと、松吉由美子事務局長が二〇一五年度の活動報告・一六年度の活動方針・新役員の提案(会長制度を代表世話人制度に変更)を行い、東久美子事務局次長が財政報告を行い、拍手で採択されました。

活動交流では、

  • 「昨年三月に再開。救援バザーや署名行動をしている」(垂水区)、
  • 「毎月一回、学習会を開催」(須磨区)、
  • 「二千万人署名を新婦人と一緒に頑張っている」(西宮)、
  • 「三年間空白だったが、先日会長を決めて再開。週一回の宣伝行動を続けている。署名も目標の半分を達成した地域もでてきた」(尼崎)、
  • 「一昨年いっせい地方選挙の前にアナウンサー学校を二回開催し、選挙で力になった。平和カフェを一月二十二日に行い戦争体験を聞いた。毎月十九日に署名行動を続けてきた」(宝塚)、
  • 「たて線の魅力を生かして参議院選挙勝利のための紙芝居を、全班・小組で行うことを提起。金田さん押し上げのための『峰生クリアファイル』(一枚百円)を一万枚作って普及する」(新婦人内)

―など多彩なとりくみが交流されました。

『峰生クリアファイル』A4判、1枚100円
裏面の隅にも
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ねりき恵子県議団長、大かわら鈴子神戸市議、佐藤みち子西宮市議が来賓挨拶。岸本友代会長が開会・閉会挨拶を行いました。
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(2016年3月6日付「兵庫民報」掲載)

日本共産党兵庫県労働者後援会が総会

いよいよ労働者のなかでのたたかい


日本共産党兵庫県労働者後援会は二月二十七日、二〇一六年総会を開催しました。

金田峰生参院選挙区予定候補が、五野党合意を実現した国民の運動に確信を持ち、何としても兵庫県で比例四十六万票と議席確保に全力でがんばると決意を表明。堀内照文衆院議員も挨拶しました。

小林明男党県委員会労働部長が参院選勝利をめざす活動について報告し、大黒作治元全労連議長が記念講演を行いました。

大黒氏は、この間のナショナルセンターや政党支持の違いを超えた国民的共同の発展、総がかり実行委員会結成への努力や「野党は共闘」を掲げた市民連合の取り組みなど生々しく語りました。「若者のなかで運動が始まった。野党共闘でたたかう参院選は労組も取り組める。いよいよ労働者のなかでのたたかいだ」と労働者のたたかいの意義を強調、激励しました。

新事務局長に北川伸一氏を選出しました。

(2016年3月6日付「兵庫民報」掲載)

5野党合意に歓迎の声商店主やNPO役員から

五野党合意に反響が広がっています。新開地の中華料理店店主は、「さすが共産党、感動した。本気やね。今度は共産党伸びるで」と声をかけてくれました。

またNPOの役員からも、「野党共闘への共産党の取り組みに敬意を感じている。〝今度の参院選は共産党や〟とみんなで話している」との激励が寄せられました。

(2016年3月6日付「兵庫民報」掲載)

激動の時代、民青同盟の基本的性格の全面発揮へ

民青同盟兵庫県代表者会議

日本民主青年同盟兵庫県委員長 上園 隆

報告する上園委員長

戦争法廃止と立憲主義の回復を求めて、歴史上初めての市民革命的なたたかいが広がる中、二月十四日に民青同盟兵庫県委員会は第五十六回代表者会議を開きました。

挨拶する金田氏
まず初めに日本共産党から金田峰生さんが挨拶。小林明男党県常任委員が記念講演しました。参加者は、「広い視点で科学的社会主義の立場で情勢をとらえるのが大事」「若者が安倍政権の最大の被害者と言われていたが、いつまでも被害者でいられないと民青で学んでいて思う」「金田さんの決意を聞いて、私も一緒に頑張る一人として力になりたいと思った」など参院選に向かう国民的たたかいについて確信を深めました。

そうした情勢について、民青同盟第三十九回全国大会決定では「国民の力で政治を変える激動の時代の幕開け」として、一回一回の班会で学んできたこと、一歩ふみだしてデモでスピーチをしたこと、対話宣伝にふみだしたこと、これらすべてが新たな歴史をつくる力となり、激動の時代の幕を開けたことを明らかにしています。

今回の兵庫県代表者会議では、この激動の時代に民青同盟の基本的性格を全面的に発揮し、戦争法反対やブラック企業、原発再稼働反対、学費値下げと給付型奨学金を求める運動などあらゆる運動を広げ、こうした運動と一体に、一年間で百四十七人の仲間と機関紙読者を迎えて組織作りでも前進し、安倍政権を退陣に追い込むことを目標に掲げた方針を提案しました。

青年要求のよりどころとして


方針案をうけた討論では、第三十九回全国大会決定で明らかにした「国民の力で政治を変える激動の時代の幕開け」の情勢と、その中で地域、職場、学園に班があり、同盟員がいることで周りの青年の要求のよりどころとなっている民青の役割が、それぞれの言葉でいきいきと語られました。

西芦地区の地域班の代議員は、班のメンバーから出されたブラックな働き方を変えようと、首都圏青年ユニオンの神部紅さんをゲストに労働法の学習会を企画、自らも労組に加入し、たたかいにふみだしているなかで「まだまだ身近に悩んでいる青年がいました。中学時代の友人から『毎日残業で帰りが遅く、土日も出勤で、病院に行くために休みたいというと、職員全員に謝罪してから行くようにと言われた』と相談を受けました。こうしたブラックな働き方をなくしていきたい」と発言しました。

学生からは「署名はデモと同じで、自分の意思を示すことができるもの。授業でいっしょになった席の前後の学生にも署名を呼びかけ書いてもらっている」と二千万署名を学内で取り組んでいる経験が語られました。

東神戸地区の病院職員の同盟員は、「不破さんの『マルクス「資本論」発掘・追跡・探究』を班で学んでいる。マルクスも紆余曲折していることがよくわかる。科学的社会主義にふれて、これまで受身だった社会観が、変えていけるものだと捉えられるようになった」と民青での学びの確信も語られました。

組織づくりの手ごたえ各地で


同時に、現在取り組んでいる「財政機関紙活動パワーアップ期間」でそれぞれがつかんでいる組織づくりの手応えについても語られました。

東神戸地区の代議員は「地区として名簿を見ながら、忘年会に声をかけようとか、訪問してみようとか、一人ひとりの近況もつかみながら具体的に取り組むことで、地区としてこれまでにない同盟員とつながれた」と発言。

西宮芦屋地区の代議員は、「初めは同盟費を集めるというノルマ的な感じだったが、つながれていない人たちがどんな気持ちを持っているのか考えるようになり、つながって話をするうちに、班会に来てほしいと思うようになった」と発言。

西神戸地区の代議員は、「人見知りで電話かけは苦手だが、昨年の全国大会で『苦手な電話かけに挑戦したら、就活に失敗して孤立している実態が分かった。来れていない青年ほど大変な実態にある』という発言を聞いて、自分も頑張ってみた。すると、就職したけど今は辞めてしまって無職という青年や、ブラックな仕事で交通費は出ず給与も未払いという実態に置かれている青年とつながることができ、雇用アンケートを書いてもらった」と発言しました。

*
国民の力で政治を変える体験を歴史上やったことがない日本で、フランス革命や、マグナカルタのような市民革命と同じ質のたたかいが二千万署名を軸に日本でも現在起こっています。代表者会議で語られた民青の役割をおおいに発揮して、組織づくりでも前進し、多くの青年とともにたたかい、新しい日本をつくる一年にしていく決意です。

(2016年3月6日付「兵庫民報」掲載)

ノーモアヒバクシャ近畿訴訟・傍聴記:2016-2-25

国の言い分を鵜のみ 被爆者援護法の精神を無視した判決

副島圀義

判決後の報告集会

二月二十五日、大阪高裁は、国の言い分を鵜のみにして「故梶川一雄さんの心筋梗塞は、被爆が原因ではない」と、国に軍配をあげました。被爆者側の反論を無視して、国側証言をそのまま採用したのです。

例えば―

判決要旨には「(悪玉コレステロール値が)心筋梗塞二次予防の観点から望まれる目標値を達成していなかった」とありますが、昨秋の最終弁論で「悪玉コレステロールが一定の基準値以下にコントロールされていたことは、原告のカルテで明白」と被爆者側弁護が立証したのに、無視。

また「既に形成されていた粥腫が破綻して(心筋梗塞が)再発した」とありますが、これも、審理のなかで「最初の発症とは別の部位」「発病後きっぱり禁煙して十年もたてば、喫煙歴のない人と遜色がないということは、日本動脈硬化学会のガイドラインでも明白」と立証されたことも無視。

中でも「放射線被曝と発病の因果関係」の問題は重要です。

判決要旨に何度も「通常人が疑いを差し挟まない程度に(被曝と発病の因果関係の)高度の蓋然性の証明が(必要)」とあります。「世間の人が何の疑問も持たずに『この人の病気は原爆が原因だ』と思う程の立証責任が被爆者にある」ということでしょうか。

原爆症といっても「被爆者だけがかかる病気」ではありません。様々な原因が関わりあって病気が起こるのが当たり前です。被爆が他の原因と相乗し、また、被爆がもたらした生活・健康状況が発病原因をも形成します。

「被爆以外の発病原因は考えられない」ような立証を被爆者に求めるがごとき判決は、被爆者援護法の基本精神をも、今までの確定判決をも、厚労省の原爆症審査方針をも、逸脱するものでしょう。

前途遼遠ですが、裁判官を含む「通常人」に、被爆の実相をしっかり知らせる責務を痛感させられた判決でもありました。

(2016年3月6日付「兵庫民報」掲載)

第14回阪神北「小林多喜二祭」:近代文学の受難者たちから学ぶ


第十四回阪神北「小林多喜二祭」が二月二十一日、いたみホールで行われました。昨年、安倍政権が憲法違反の戦争法を強行採決し、日本を戦後から戦前に戻そうとするなか、弾圧をおそれずに反戦平和をつらぬき、特高警察に検挙・拷問死した先輩・小林多喜二をしのび・学び・意思を引き継ごうと九十名が参加しました。

三重大学名誉教授の平野喜一郎氏が、「近代日本と文学者の受難」をテーマに講演。「三人のT」として、北村透谷、石川啄木、小林多喜二の三人の文学者を、時代背景やそれぞれが残した作品を踏まえて紹介しました。

多喜二の作品では、自我と個性が大事にされる時代を強く望んでおり、個人を大事にする現憲法には、そうした思いが含まれており守っていかなければならないとの思いを参加者に抱かせました。

講演のあとは、エンキ(閻杰)さんの中国琵琶演奏による多彩な演奏に、会場に集まったみんなで盛り上がりました。
(吉岡健次)

(2016年3月6日付「兵庫民報」掲載)

ひどすぎてタイトルもつけられません


段 重喜

(2016年3月6日付「兵庫民報」掲載)

観感楽学

敗戦によって日本に進駐してきたアメリカ軍は、日本各地を完全に支配し占領した。この米兵たちの中には無法者がおり、彼らの傍若無人は警察も手出しができずにいた▼戦後四年目の一九四九年、福井県敦賀市で、占領軍兵士による婦女暴行が頻発するという事件が発生、地元住民が自警団を作って自衛し、抗議する事態となった。新聞「アカハタ」はこの事件を詳しく報道、告発した▼神戸でも怒りの声があがり、山陽電鉄板宿駅で二人の青年労働者が「アカハタ」を壁新聞にして訴えていた。すると、たちまち人だかりができ、百五十人もの群衆が拍手を送った。このさわぎに派出所から警官が駆けつけてきた▼それから一週間後、二人は進駐軍に呼び出され、「軍事裁判」にかけられてしまう。「誰が女性を襲ったのか」と尋問した判事に、彼らは「ジープに乗った大男がやった」と答えた。しかし、証言に立った派出所の警官は、「二人が『黒んぼがやった』と宣伝していた」とでたらめを言った▼このうその証言で二人はアメリカを侮辱したとされ「占領法違反」で、最高刑の懲役五年の実刑判決を下される。世にいう「敦賀壁新聞事件」、米軍占領下のひどい冤罪事件であった▼ところで、二月十七日の参院憲法審査会での「アメリカは黒人が大統領になっている。これは奴隷ですよ…」という自民党丸山和也議員の発言は、まぎれもない侮辱で、国会議員資格のみならず、人格が問われる大問題である。 (D)

(2016年3月6日付「兵庫民報」掲載)