公共交通の危機打開に県は役割発揮を
公共交通神戸電鉄粟生線/沿線住民の足を守る会 松本勝雄
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粟生線を行く1000系電車 |
二〇一〇年十一月二十七日、神戸新聞が報じた「神戸電鉄粟生線存廃判断へ」との記事は、沿線住民に大きな驚きと不安を与えました。神戸市北区の鈴蘭台駅から小野市の粟生駅まで総延長二十九・二㌔㍍の粟生線が、毎年十億円以上の赤字が発生し一民間企業で事業を継続することができなくなってきて「廃線の危機に直面している」――こんな内容でした。沿線に住む私には、寝耳に水というのが正直な感想でしたが、あらためて考えさせられ、「公共交通神戸電鉄粟生線/沿線住民の足を守る会」を結成し粟生線の問題に取り組むことになりました。
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粟生線は、少なくなったとはいえ年間六百五十六万人(最高は一九九二年の千四百二十万人)の利用者があり、これをバスやマイカーで代替はできません。粟生線がなくなれば、この地域に住み続けることができない人が多数出てくることになります。現に沿線では車の運転ができなくなった人が自然環境豊かなこの地域から転出するケースが増えています。
粟生線の危機に対し、関係自治体、住民代表、神鉄、学識経験者で「神戸電鉄粟生線活性化協議会」がつくられ、粟生線の維持と活性化に取り組まれていますが、私たちは住民の立場からいろいろと働きかけています。
去年も活性化協議会や神戸市、兵庫県、神戸電鉄などに申し入れと懇談を求める活動を行いました。
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兵庫県は、高速道路などでは熱心に取り組んでいますが、同じように鉄道や路線バスなどの公共交通にも取り組むことが求められています。
粟生線活性化協議会でも、ずっとオブザーバーでしたが、最近強い要望も受けてやっと正式メンバーとなりました。
粟生線のように複数の自治体にまたがって運行する場合、リーダーシップの取れる兵庫県がその役割を発揮することが求められています。現に二〇一二年の「廃線の危機」のとき、兵庫県がリードして四十億円無利子貸し付けで危機を救ったこともありました。
また、危機におちいった地方鉄道のいくつかで、和歌山電鉄貴志川線のように、いろいろな創意工夫で再生を果たしている路線があらわれていますが、その中では県レベルのリーダーシップ発揮によるものが多くあります。私たちは、兵庫県にその役割発揮を強く求めました。
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二〇〇〇年ごろから行われた公共交通へのあやまった「規制緩和」は、地方鉄道の危機を招き、生活に欠かせない路線バスの廃止も大きく引き起こし、「大事な公共交通を民間任せにしているのは日本だけ」(岡山・両備グループ小嶋光信代表)と批判される民間まかせによる安全より儲け優先の横行などから、公共交通の危機は日本の大きな社会問題にもなっています。
この事態に、国はようやく「交通政策基本法」を制定、公共交通活性化・再生法改定を行い、その際に自民党などの抵抗で見送られた国民の「交通権」を、自治体の交通基本条例で保障しようという動きもいま全国で広がりつつあります。
いま、すべての市民に自由な移動を保障することが求められています。私たちは、長年「交通権」に取り組んでいる立命館大学名誉教授の土居靖範さんをお招きして学習・交流集会「市民のあし公共交通」を開くことにしています〔二月二十七日(土)十三時三十分から神戸市勤労会館四○三号室。神戸交通問題連絡会と神戸市民要求と実現する会の共催〕。そして、公共交通をしっかりと充実させていくため頑張っていこうとしています。
(2016年1月31日付「兵庫民報」掲載)

(グラフのデータ)
粟生線の輸送人員
1990年 1337万人
1992年 1420万人
1995年 1210万人
2000年 1001万人
2014年 791万人
2005年 681万人
2010年 656万人