すすむブラック自治体化
兵庫自治体労働組合総連合執行委員長 森栗強
増え続ける非正規職員
自治体で働く非正規職員の数は二〇一二年四月現在で六〇・三万人(総務省調査)となっています。
総務省が「集中改革プラン」五年間と称して(二〇〇五~〇九年)の計画作成を自治体に強要し、職員削減や民間委託を推進してきた事により、正規職員から非正規職員への置き換えが急速に進んだ結果です。〇五年と比較して正規職員は二七・四万人減少に対して、非正規職員は一四・七万人増加しています。
総務省は二〇一二年時点での、非正規職員の割合を一七・九%としていますが、ここには警察や消防等も含まれており、自治体によって差はあるものの、実態はほぼ三割から四割と言われ、多いところでは半数以上が非正規職員で占められている自治体も存在します。
さらに保育所・図書館・公民館・ゴミ収集・給食調理・住民票窓口等、市民と直接に接する最前線(現場)に行けば行くほど非正規職員の割合は高くなり、非正規職員だけの職場も生まれています。
労働者扱いされない非正規職員―行政行為の「任用」
自治体の非正規職員の雇用は「任用」と言われ、民間事業所で行われる「雇用契約」は存在しません。毎年「任用」始めに「任用通知書」が手渡され、そこに任用期限が明記されています。雇用契約のようにお互いの契約でなく、行政側が一方的に通知し「行政行為」として働かせています。このことにより、何年「任用」が繰り返されていても整理解雇四要件は適用されず、自治体では解雇と言わず、「任用切れ」と称して一方的に解雇・首切りをすることが可能です。
また、パート労働法や労働契約法・育児休業法等の労働者保護法は適用除外とされ、根拠法令によっては協約締結権も有りません。
働くルールの順守率69%
NPO「官製ワーキングプア研究会」は十二月十七日に、全国の自治体を対象に行なったアンケート結果を発表しました。働くルールを守っているかどうかを調査したところ、平均順守率は六九%。研究会は「ルール違反の実態を自治体自身が十分認識出来ていない現状が浮かび上がった」とコメントしています。
この中で、兵庫県教育委員会でも問題になっている、「臨時的任用職員」(臨時職員)の法的な必要性が全く無い空白期間(実態は継続任用だが、一日もしくは数日任用をしない日を挿入する)については、七〇%の自治体が設けており、健康保険・年金の資格喪失、有給休暇の消滅など大きな不利益を生じさせています。
違法行為が常態化
「脱法行為」もしくは悪用とも言える、任用方法や労働条件で非正規職員を働かせ、簡単に「任用切れ」(首切り)を行っているのが、多くの自治体での現状です。また、正規職員についても三六協定締結権が無いことを利用し、長時間残業を強い、精神疾患の職員の率も多くなっています。
まさしく今社会問題になっている「ブラック企業」と同じか、それ以上の違法行為が常態化している自治体も少なくありません。
(2016年1月17日付「兵庫民報」掲載)