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2016年11月6日日曜日

ノーモアヒバクシャ近畿訴訟・傍聴記:2016-10-20,27

司法のあるべき姿を示した判決と国の作戦

副島圀義

十月二十七日には大阪地裁で原告お二人が勝訴。その前の週二十日には、大阪高裁で六人の被爆者についての弁論と、裁判が続きました。
それぞれの印象的な場面の一端をご紹介します。

地裁判決は「結論ありき」ではなく、双方の主張をしっかり検討したことがよくわかります。「司法のあるべき姿を示した」と言えるでしょう。
その一例――
お一人については「被爆数日後に長崎の爆心地近くを歩いて通ったかどうか」が争点でした。国側は「国鉄の運行が再開されたのになぜ徒歩で?」と難癖をつけましたが、裁判所は「原爆投下後の運行再開であり、ダイヤ通りでもなく、だれでも乗車できる状況でもなく、原告の供述は信頼できる」と判断しました(ちょうど一年前の弁論で国側代理人が、汽車のことを何度も電車というほどのお粗末ぶりをさらけだしたことを、本欄でもご紹介しました)。

高裁では、珍しく国側代理人が、被爆者側弁護士と〝公開の法廷〟で論戦。前段、被爆者側弁護士が国側の「医師意見書」を批判。多くの被爆者医療に携わってきた医師団が提出した反証を紹介する意見陳述です。
―国側「意見書」はこれまで大半の判決が放射線被ばくと心筋梗塞との関連性を認めたことを否認する。しかし、放射線影響研究所や国連科学委員会、国際放射線防護委員会の諸報告はじめ、多数の研究成果として、放射線被ばくが心筋梗塞に有意の影響を及ぼすことは明確だ。被ばくと発病の関連を否定することは非科学的である―

その後、今後の審理日程などをやり取りするなかで、国側代理人が「甲状腺機能低下症は被ばくと無関係」との意見を書いた医師を証人に立てたいと言い出しました。
被爆者側弁護士は直ちに「その医師は、甲状腺機能低下症の発病原因にはいろいろある、と一般的に論じているだけで『被ばくは発病の原因になりえない』と言っているものではなく、争点とは無関係・無意味なものだ」と厳しく反論。
結局、まずは双方の準備書面、書証などの調べにとりかかることになりました。

「病気の原因にはいろいろある。被ばくだけが発病原因ではない」という、その限りではもっともな論。
国は国民の税金をじゃぶじゃぶ使って次々と「専門家意見書」を出したり証人を立てたりの物量作戦で、この論を繰り返し言い立てて「被ばくが原因ではない」雰囲気を法廷にふりまこうとするのでしょう。

(2016年11月6日付「兵庫民報」掲載)

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