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2016年11月6日日曜日

「部落差別の解消の推進に関する法律案」百害あって一利無し〈1〉

村上保(兵庫人権問題研究所事務局長)

はじめに


通常国会会期末が迫った去る五月十九日に、自民・公明・民進三党の議員九名(二階俊博他八名)による議員立法という形で、「部落差別の解消の推進に関する法律案」(以下、「部落差別解消推進法案」)が衆議院に提出されました。衆議院法務委員会理事会は、五月二十五日採決という日程まで決めました。国民的議論もなく秘密裏に強行するという非民主的なやり方でした。
全国地域人権運動連合の反対運動と日本共産党による部落問題解決のこれまでの法律経過を踏まえた明確な質疑により、継続審議となりました。現在開会中の臨時国会で強行される危険な状況にあります。
本シリーズで、法案の全条文を批判します。国民の大きな声や運動で必ず廃案にしようではありませんか。

1 法律をつくる必然性がない


法律をつくる場合、憲法の原則・規定に従い「解決すべき課題が存在する」か、「一層充実させ前進させる」かという観点が必要です(これを「立法事実がある」と言います)。
部落(同和)問題で言えば、一九六九年制定の「同和対策事業特別措置法」(以下、「同特法」)から幾つかの名称や対象事業を限定し、期限を決めた「特別措置」法が続きましたが、それも二〇〇二年三月三十一日で終了しました。
「特別措置」法が終了する前年(二〇〇一年一月二十六日)に出された総務省大臣官房地域改善対策室の通達「今後の同和行政について」は、「特別対策を終了し、一般対策に移行する主な理由」として次の三点をあげました――①特別対策は本来時限的なもの②特別対策をなお続けていくことは、差別解消に必ずしも有効ではない③人口移動が激しい状況の中で、同和地区・同和関係者に対象を限定した施策を続けることは事実上困難――これは後述する国の「同和地区実態把握等調査」(一九九三年実施・一九九五年公表)に裏付けられた通達でした。
さて、わずか六条しかない「部落差別解消推進法案」には、いつまでに部落差別を解消するのか期間(時限)もなく〈これが「部落差別永久化」法案と呼ぶ理由です〉、「同特法」の第一条「歴史的社会的理由により生活環境等の安定向上が阻害されている地域」の規定のような、法律の対象範囲を明確にする規定となる「部落差別の定義」もありません。もちろん、「解消する」とうたう「部落差別」の実態分析もありません。それなのに、この法案の第一条(目的)では、「現在もなお部落差別が存在する」と言っています。法律案として成り立ちません。
よって「立法事実がない」と言えます。
(四回連載・次号に続く)

(2016年11月6日付「兵庫民報」掲載)

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