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2016年10月23日日曜日

劇団文化座『銀の滴 降る降る まわりに 首里1945』

神戸演劇鑑賞会2月例会



沖縄県糸満市に慰霊塔「南北之塔」がある。この塔に刻まれた「キムンウタリ」(山の同胞)のアイヌの言葉を見つけた、劇団代表・女優・の佐々木愛の「なぜ沖縄にアイヌの墓が」。この疑問から生まれたのが、今回の舞台です。
一九四四年~一九四五年。沖縄の首里郊外、運玉森(ウンタマムイ)にある与那城家。今は軍に接収され、炊事兵の調理場兼宿泊所になっている。兵士たちは個性が強く、些細なことで喧嘩をするし、いがみ合いが絶えない。
ある日、アイヌの冨田栄吉と、沖縄で現地徴用された中里幸吉が、食料調達係りでコンビを組むことに。まったく異質のふたりが、同じ仕事をする。事あるごとにぶつかり合い、罵りあう。だが、冨田が中里を、中里が冨田をかばうことがしばしば起こる。この事からふたりの距離は日を追う事に縮まってゆく。が、戦況はますます悪くなり、部隊に突撃命令が下る。炊事兵たちが最後につくったのは、沖縄のお菓子、サーターアンダギーだった…。
この舞台には、難しい哲学や、教訓めいたことが示されていない。人間の優しさや、人と人とが手を繋つなぐ事の大切さ、人はみな平等など。わたしたちが大切に思っていること、しかし、つい忘れがちなことごとを、思い出させてくれる。
題名の「銀の滴 降る降る まわりに」は、知里幸惠が採録したアイヌ神謡の一節ですが、この詩のように、舞台全体は、人間へのつきない〝愛〟に溢あふれている、と思うのです。(小谷博子)

劇団文化座公演『銀の滴 降る降る まわりに 首里1945』/作:杉浦久幸、演出:黒岩亮、出演:佐々木愛・阿部勉ほか/①11月18日(金)18時30分②19日(土)13時30分/神戸文化ホール中ホール/会員制(入会時に入会金1,000円と月会費2カ月前納)、月会費3,500円(大学生2,000円、中高生1,000円)/☎078‐222‐8651、Fax078‐222‐8653

(2016年10月23日付「兵庫民報」掲載)

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