スキップしてメイン コンテンツに移動

観感楽学

先日、テレビで『暮しの手帖』にまつわる花森安治氏の逸話が報道されていた時、妻が「お父さんこれ……」と言って本棚から古い雑誌を取り出してきた。見るとこれが『暮しの手帖』第九十六号「特集・戦争中の暮しの記録」であった▼この雑誌は、妻が、職場の先輩に勧められて買っていたもので、ずっと大事に保存してあった。改めて読み返してみると確かにすごい。戦争を体験した市井の人びとの声がこれほど豊富に、そのまま掲載された雑誌を私は見たことがない。この雑誌が発行されたのは一九六八年、すでに戦後二十三年を経ているとはいえ、様々な抵抗があったのではないかと推察される▼それでも勇気をもって国民を戦争に巻き込んだ為政者に対する怒りを「生の証言」として記録し、「できることなら、君もまた、君の後に生まれる者のために、そのまた後に生まれる者のために、この一冊を、たとえどんなにぼろぼろになっても、のこしておいてほしい。これが、この戦争を生きてきた者の一人としての、切なる願いである」とした編集者の思いは、伝承しなければならないと思う▼この雑誌は百十六万部の大ベストセラーになったが、あれからさらに五十年、今日、この雑誌がはたしてどれだけ残されているかわからない。しかし、たとえこの雑誌が残されていなくても、あなたの両親や祖父母、まわりの誰かの中に戦争の実態と愚かさを知る人たちはまだたくさん存在している。安倍政治の戦争への道を阻止するため、一人一人が知恵を絞って反撃しよう。 (D)

(2016年8月7日付「兵庫民報」掲載)