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2016年6月26日日曜日

トム・プロジェクト・プロデュース『百枚めの写真~一銭五厘たちの横丁~』

神戸演劇鑑賞会7月例会



昭和四十八年の秋。フリーのルポライター児玉隆也が出合った九十九枚の写真。それは昭和十八年に、桑原甲子雄が撮ったもの。陸軍省からフィルムを支給され、戦地にいる父や子、夫たちの戦意高揚のために家族を映した写真でした。

敗戦から三十年経て、東京大空襲で焼け残った蔵から出てきたネガ。その袋の〝氏名不詳〟の四文字にひきつけられた児玉は、九十九枚の写真の家族探しの旅に出た。

舞台は、旅の途中で偶然立ち寄った、根本一家の歴史を軸に、一枚、一枚の写真が映しだされる。写真の説明のナレーションが入る、変わった構成の舞台になっている。

一枚めの写真。家族七人が格子戸の前に並んでいる。二枚め。どこかの校庭。いずれの写真も父親がいない。つづいて、蝋燭屋、靴屋さん、麩屋の長谷川さん、指物師の川口さん、皮の打ち抜き屋の大塚さん。そして、氏名不詳のまま残った五十七枚が映し出される。

これらの写真には、天皇から一番遠くにいた庶民の戦中・戦後が刻み込まれていた。

家族の結びつき。悲しみの底にある愛。これらが、舞台全体を包み込む。特に反戦を歌ってはいないが、十分にその声は聞こえる。

さて、百枚めの写真は。お父さん、お母さん、子どもたちの笑顔ですね。

(小谷博子)

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トム・プロジェクト・プロデュース公演『百枚めの写真~一銭五厘たちの横丁~』/原作=児玉隆也、写真=桑原甲子雄、作・演出=ふたくちつよし、出演=大西多摩恵、田中壮太郎ほか/①7月14日(木)19時00分②15日(金)13時30分③16日(土)13時30分/神戸文化ホール中ホール/会員制(入会時に入会金千円と月会費2カ月前納)、月会費3千5百円(大学生2千円、中高生千円)/☎078・222・8651、Fax078・222・8653

(2016年6月26日付「兵庫民報」掲載)

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