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2016年6月26日日曜日

ノーモアヒバクシャ近畿訴訟・傍聴記:2016-6-15

「放射線被ばくによる健康破壊」否認:国の異常な執念


副島圀義

六月十五日の大阪地裁では、Yさんの訴えに関して崔信義弁護士が国側の「論建て」をきびしく批判しました。

 爆心地近くを歩いたことを被爆者手帳の申請書に書いていない。爆心地には近づいていない。

 被爆者手帳は原爆投下時に長崎市区域内にいたことで取得できるので、その後の行動の詳細を書いていない場合は少なくない。肉親の証言も含め、二度、爆心地近くを歩いて多量の被ばくをしたことは明らかだ。

 食道がんの発病は喫煙・飲酒が原因で、被爆とは関係ない。

 放射線影響研究所の「寿命調査報告書」でも、放射線被ばくは食道がん死亡リスクを増大させる」としている。疫学上の研究成果として、禁煙して十年経てば発病リスクが四分の一まで低下する。Yさんは禁煙後二十年の発病なのでそれ以上のリスク低下といえる。



そもそも当時の被ばく線量は不明であり、七十一年前の行動の詳細を明らかにすることも困難です。日本被団協が「個別の認定制度をやめる。被爆者が、がん、心筋梗塞、甲状腺機能障害などの病気にかかった場合、その重篤度に応じた手当を支給する」との実際的な提言をしていますが、国は一向に受け止めようとしません。

残留放射線や内部被ばくを無視・軽視し、爆発時の直接被ばく線量推計値だけによる機械的な「放射線起因性」に執着し、原告一人一人に対する「放射線起因性の否定」にやっきです。この日の法廷にも、国側代理人は椅子が足りないほどの人数が並びました。傍聴者のいる前ではめったに発言もしないのに、国側が多人数で臨んでいることが分かります。

先日もビキニ水爆実験の被害漁船員の訴えに対して、厚生労働省は「内部被ばくは外部被ばくよりきわめて小さい」と切り捨てました。内部被ばくや低線量被ばくによる健康破壊を認めてしまったら「フクシマの被害者を切り捨てられない」「原発政策を維持できない」というのが国の本音なのでしょう。

こうした国の姿勢・政治のありかたを大きく変えないと大変だ、と実感しながらの傍聴でした。

(2016年6月26日付「兵庫民報」掲載)

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