利用者の声をまず聴くことから
公共交通神戸電鉄粟生線/沿線住民の足を守る会 松本勝雄
国鉄分割民営化・ローカル線切り捨て、間違った規制緩和による地方鉄道の危機、生活に欠かせない路線バスの廃止などが公共交通の危機を作り出し、国民の交通を守れの声が大きくなっています。これに対し、国は交通政策基本法を制定、地域公共交通活性化・再生法を改定しました。
この流れの中、神戸でも「神戸市公共交通網形成計画」を作ることになり、三月の準備会を経て「第一回神戸市公共交通活性化協議会」が六月三日に開かれました。その会議を交通問題に取り組んでいる仲間と傍聴しましたが、いろいろな問題点を感じました。
活性化協議会に利用者側は二人だけ
まず、この「活性化協議会」の構成です。
学識経験者、市民、交通事業者、行政機関のメンバーでつくられていますが、市民としては住民団体の二人だけで少なすぎることです。
公共交通を守るためには市民の理解と「協働」が必要で、公共交通の問題に取り組んでいる方や障がい者団体の方などを加えるべきだと思います。会議でも「供給側のことばかり」との意見も出ていましたが、一番肝心な公共交通を利用する側からの声をまず聴くことをやるのが大事だと思います。
現状や課題などの検討が不十分
計画を作るためには現状をしっかりとつかみ、何が求められているのか、これまでのやり方に問題はなかったかを検討することが欠かせませんが、これが大変不十分と感じました。
公共交通の危機や、高齢化などの社会情勢の変化で市民生活はどうなっているのかの分析が必要です。
また、いくら市民が必要としても採算が取れなければ公共交通として整備しようとせず、民間任せとするばかりか、既存の公営交通もどんどん民間に移行させるやり方など、これまでの神戸市の公共交通政策を再検討し、市民の要求に応える政策への転換を明確にするべきだと思います。
取り組む問題を「公共交通とは」「公共交通空白・不便地とは」など、それぞれの言葉を「定義」していくことも必要です。
「公共交通網形成」の目的からも不十分
「神戸市公共交通網形成計画案」が提案されましたが、その目的からも不十分な点や目的にそぐわないことなどが混じっていると感じました。
①目的で一番大事なことは、市民の「移動する権利」をどうするか明確にすることだと思います。
交通政策基本法では、国民の「交通権」の明記が、「時期尚早」と自民党や国交省の一部から異論が出て見送られましたが、自治体の中には交通基本条例で「市民の移動する権利尊重」(熊本市など)と決めているところもあります。
神戸でも「市民の移動する権利」を認め、尊重すべきで、これは多くの市民が求めておられると思います。これを入れることで、この計画が市民の気持ちにぴったりくるものになると思います。
(次号に続く)
(2016年6月19日付「兵庫民報」掲載)