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2016年5月19日木曜日

観感楽学

アメリカの水爆実験(一九五四年)のビキニ環礁周辺で操業していた元漁船員らが国を訴えた。千隻以上の漁船が被曝したのに米政府からの七億二千万円で政治決着された▼国は水爆実験直後にビキニ環礁周辺海域へ政府調査船を出した。水しぶきを浴びるだけでも危険という汚染状況という深刻な報告書は公表されなかった。漁船船体と魚介類は汚染検査されたが漁船員は除外された。船名さえも明らかにされなかった▼八六年に日本共産党の山原健二郎衆院議員(当時)が被曝調査結果の開示を迫ったが、国は「見つからない」と拒絶。第五福竜丸以外の被曝実態は、ようやく二〇一四年九月に五百五十六隻の被曝検査記録の存在を認めるまで明らかにされなかった。被曝実態が隠されたことで米国への賠償請求の機会が失われた▼政治決着で放射能検査は五四年末で打ち切られたが、魚介類の放射能汚染は食物連鎖もありそれからが危険度は増した。そして汚染魚は市場に出回った。調査対象でなかった多くの漁船員は健康被害の危険を知らされず命を失った▼原告団に加わった伊丹市在住の米田瑞穂さん(82)は、「一緒に被曝した仲間のためにも六十年以上放置してきた国の責任を追及したい」と語る。 (K)

(2016年5月22日付「兵庫民報」掲載)

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